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1 プロローグ ラナンの話

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『狼獣人』 ラナン

引き締まった体、高い鼻、彫りの深い目元。
ふわっふわな耳としっぽ。
ワイルド系なイケメンなのに、どこかかわいい。
罪づくりな人。
「女の子」の好みど真ん中。

しかし、この世界で
受け入れられることはなかった。
顔すらみたくない。
それが、彼に与えられた評価。
この世界でのイケメンは
一言で言うならば、肥満かガリガリ。
肥満は、富の証であり
痩せていればいるほど守ってあげたくなる。

そんなわけで、容姿以外で勝負しなければいけないのが、この狼獣人。
実際、獣人自体差別を受けているわけではないが
結婚するなら、
人間は人間同士が言いわけで。
獣人の隣に住みたいと思う人は
少しばかり少ないもので…。

…いや、この際はっきり言おう。
獣人は差別をうけている。と。
彼らは、王都の端の方に追いやられ、
獣人専用の居住区に住むことしか出来ずにいる。
仕事では、本社で働き人と変わらなく
評価されているように見える獣人もいるが、
彼らもまた、獣人族○○課のように
人間とは別の階もしくはフロアの端へ追いやられる形である。
営業職にも上層部にも獣人がほとんどいないことからも
この差別は伺えよう。

全ての差別的扱いにおいて
人間と結婚した獣人はこの限りではないことは述べておこう。
2人の間に出来た子供に対する対応に困るからだ。
だからその人間も獣人も、人としての扱い、つまりは差別を受けずに過ごすことができる。
ただ、人間と獣人の間にある高い壁が、破られ
結婚まで至ったカップルは、この国ができてから今まで、たった一組しかない。
その一組こそ、ラナンとその恋人キィラだった。
この物語は、そんな二人が出会ってから過ごした日々のお話だ。

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