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【第4話】秘められた感情

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両親を殺したと打ち明けられた零はその真意を確かめるため、理由を聞いた。
すると優希は表情を変えることなく、少し俯き
ぽつり、ぽつりと話し始めた。



「僕がまだ小学校低学年のとき、両親と旅行に行くことになったらしいんです……その時のことはよく覚えていなくて。

あとでおばさんからみんなすごく楽しそうに旅行に行ってた。って聞いて。
だから、多分すごく嬉しかったんだと思います。」


当時のことを覚えていないからなのか、それとも忘れたいほど悲痛な思い出になってしまったからなのか、どこか他人行儀な喋り方と相変わらずの無表情に零は心の中がギュッと締め付けられた。

そんな零の気持ちをよそに、優希は話を続けた。

「それで、家族で車に乗っている時、
ちょうどパトカーに追いかけられていた車が猛スピードで対向車線から走ってきてたらしくて、
父さんがその車から離れるために車線変更をしました。
そしたら、追いかけられていた車が焦ってハンドルを思い切りきってしまい、
それで、僕達が乗っていた車ごと衝突して…両親が死んで、僕だけが生き残ってしまった。

両親はとても優しい人達で、周りの人達から凄く好かれてたので、
親戚や他人からは"何故お前だけ''とか、
"お前が殺したようなものだ"って言われた時、納得したんです。

《あぁ…そっか、僕が殺したんだ》って。

あんな優しかった両親が死ぬ未来なんて無かった。
僕がそのきっかけを作ってしまった。
だから僕が両親を殺した。」


全てを話し終えた優希は再び姿勢を正し、前を見据えた。


優希の過去を聞いた零はとても悲しくなった。
優希の両親が理不尽な死を迎え、更には大人達にお前のせいだと責め立てられ、まだ幼子の優希にはその言葉を、


大人の言葉を信じるしかなかったのだ。


零は泣いていた。
とても、とても悲しかったから。
両親を亡くし、周りから責め立てられたこともそうだが、

失ってしまった両親を想い、泣くことすら出来ない優希がとても可哀想だった。

零は優希を優しく抱きしめた。


そして、こう言ったーーーーーー。


「可哀想に、そうやって君は育ってしまったんだね。
自分を責めて……そうやって……人生を歩んできてしまった。 
亡くなってしまった両親の為に涙も流せない。

でも俺はね、君にはまだ感情が残ってると思うんだ。
だってほらーーーーーー。」


涙ぐみながら零は優希の胸に手をあてる。


「だってほら、君の心臓、ドクドクしてる。

痛いって…………苦しいって
体は必死に訴えているんだよ。

それに気づけないのは君が心を閉ざしているから。自分を労わってあげられないから。

だから、もう一度、自分の心の声を聞いてあげて。お願い。」


優希は零に触れられた胸に自分の手をあてる。

そして戸惑った。

これが苦しいっていう感情、辛いという感情なのか。
優希は思った。

そうか……僕はずっとーーーーーーーー。



「苦しかったんだ」


ーーー苦しかったんだ。
そう声に出した優希を見て零は驚く。


優希の頬を伝って目から水が垂れている。

優希は泣いていたーーーーーーーーーー。
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