ヤンキーくんが可愛くて辛い!

Jさん

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出会い

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「くぉら"ぁ"あ"!!一色ィ!」
うちの学校の名物鬼教師、碇田がこれまたうちの名物ヤンキー、一色瑞樹を追いかけ回している。一色はいつも髪を後ろに撫で付けてガチガチにしているから余計に威圧感のある奴だ。背がオレより高いのが悔しい。

「お前また隣の学校の奴と喧嘩しただろ!近隣の方から通報されてんだよ!!」
オレ、矢田蓮はこの間の日本史の小テストで2点を学年唯一取ったという事で放課後の和やかな社会科準備室でヤンキー達の追いかけっこをBGMに史料整理を【させて頂いている】のだった。

「はァ?!んな事してねぇし!せーとーぼーえーだよ!!」
「お前がそんな事出来るわけないだろう!」

あ、そういえば社会科室って人が少なくてカップルに人気のスポットだったなあ。
早く帰らないと出られなくなるかな、などと考えているとガラッと窓が勢いよく開かれた。
そちらに視線をやると、無造作に開かれた制服のボタンにビシィッと後ろに撫で付けた金髪が眩しい人物が窓から社会科室に侵入している。

「わ!え!お前、」
ヤンキーがオレを見て何やら驚いている。
わー…2階の社会科室の窓からさっきのヤンキー入ってきたー…史料整理とかもう知らん…帰る…

「もうオレ帰るから碇田行くまで暫くここ居たら?」
「あ!ありがとう…」
破茶滅茶にガンつけられたらどうしよう、と思いながら話しかけると案外としおらしい返事が返ってきた。
さ、かえろ…


「あんっ学校でなんて…」
突然女の嬌声が聞こえてきた。
社会科準備室前の机の陰で、あろう事か学生カップルが致していた。
「人に見られたらどうするの…」
「大丈夫…ここ人そうそう来ねえから」

ちょっと待てあほ、そうそう来ないは来る時もあるだろうが。ここに2人もおりますが。
2人は廊下から見られることには注意しているようだがオレとヤンキーがいる準備室からはそれはもうバッチリ見えていた。

「はっ……」

どうしようかなー…帰れねえなー…と考えていると隣から荒い息が聞こえてきた。
ヤンキーこと一色がカップルの行為を凝視しながら顔を真っ赤にしていた。ついでに言えばちょっと勃っている。
その様子はまるで初めてそういうコトを知った中学生みたいで思わず声をかけてしまった。

「な、一色ああいうのした事ないん?」
「はァっ?!なななんでそんな事聞くんだよ?」
「いや、なんか見た感じ」
「み、見た感じ童貞か…?」

まあ、言ってしまえばそうなるが顔を真っ赤にして自信なさげに話す一色にそんな事言っては可哀想だろうと曖昧に返事をした。

「あー…」
「あー…ってなんだよ!!」

一色はオレにツッコミをする際に大声と物音を立ててしまった。その物音で先程のカップルはオレ達に気付き「ヤバい誰かいるっ」と走って逃げていく。

「おー…ナイスナイスこれで帰れるじゃん」

オレは一色に声を掛けるが、返事は無く股間を抑えてもじもじしている。

「それトイレで抜いてきたら?」

オレには初対面のヤンキーに対するモラルはなかった。よくデリカシーのない奴だと妹にどやされるがこの時ばかりは全くそうだなと思った。

「立てないんだよ…」
(えっめっちゃ勃ってるじゃん)いくらオレでも流石にそんな事は言えず数分の沈黙が流れてしまった。

「な、なんか言えよ」
先に沈黙を破ったのは一色だった。顔を真っ赤にさせて涙で潤んだ目をオレに向ける。

「おー…じゃそれオレが手伝ったげようか?」

その目に、ついそう声を掛けてしまった。
一色は耳まで真っ赤にしてオレをじっと見ていたが少しするとこくんと頷いた。
そんな一色が可愛いな、なんて思ってしまったのがいけなかった。

一色がこくんと首を縦に振る。
ごくり、と生唾を呑んだ音はオレの物なのか一色の物なのかもう分からなかった。
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