セカンドエース

0章

伝説

「また抑えた湯浅！これで83回連続無失点だ！」
83回連続無失点、65ホールド、防御率0.19、シーズンでの失点は2。
中継ぎ10年目の35歳でキャリアハイを更新して鉄人、赤い悪魔などと呼ばれた湯浅新一ゆあさしんいち。彼は切れ味抜群の変化球、重たい球、ピンチになるほど強くなるメンタル、そして何より3連投、回またぎも平気な無尽蔵のスタミナを武器にチームを日本一に導いた。
しかし彼はシーズン終了後引退を宣言した。
「最後だから頑張れた。最後に優勝出来てよかった。」
まだやれるのではと誰もが言った。しかし引退会見で本人はシーズン序盤に球団とは話していたと説明した。球団も今年の成績を見て3年10億、単年3億など様々な条件で交渉したものの彼は首を縦に降らなかった。
「今度10歳になる息子は筋が良い。きっと俺を超える選手になる。楽しみにしていてください。」
日本中のファンに惜しまれながらの引退会見で最後に言った言葉。相変わらずの親バカに思わず笑ってしまう記者やファンに丁寧にお辞儀して引退会見は終わった。