【完結】愛することはないと告げられ、最悪の新婚生活が始まりました

紫崎 藍華

文字の大きさ
上 下
6 / 8

6話

しおりを挟む
イザベラはハンナから真実を聞いた後、心を決めてアンダースに会いに行くことにした。

イザベラは別宅の前に立ち、深呼吸をしてからドアをノックした。
その手には離婚届が用意されており、あとはアンダースのサインさえあれば離婚が成立する。

しばし待ち、アンダースが出迎え、イザベラの顔を見て驚いた表情を浮かべた。

「イザベラ、何の用だ?」
「アンダース、話があるの。中に入れてくれる?」
「ここでは言えない用件なのか?」
「離婚の話よ。離婚届けにサインしてほしいの。私の用件はそれだけ」
「いいだろう、入れ」

アンダースは不安そうに尋ねた。
イザベラは冷静な表情を保ちながら、まっすぐに彼を見つめた。



二人は応接室に座り、イザベラは静かに話を切り出した。

「アンダース、私はもうあなたとの結婚生活を続けることはできないわ。離婚を申し出ます」
「それは好都合だ。やはりこうなる運命だったんだ。最初から結婚なんてしなければ良かったんだ」
「そうね、そうだったのかもしれないわね。私たちの結婚は失敗だった。だから離婚は当然よね。これ、離婚届けだから。サインをお願いできる?」
「ああ」

イザベラはアンダースが無駄な抵抗をすると考えていたが、実際にはあっさりと応じてくれたことで内心ほっとした。

「これでいいな?」
「ええ。提出は私がしておくわ」

サインを確認したイザベラは離婚届をバッグへと丁寧にしまった。

「ありがとう、アンダース。それで、ロレッタとのことはどうするつもりなの?」

アンダースは首を振った。

「ロレッタとは結婚しないよ。結婚するのはハンナだ」
「本気なの? ロレッタのことはどうするの?」
「ロレッタ? そんなの関係ないな。ハンナこそ俺の運命の相手だったんだ。ロレッタなんて構っていられない」

あれだけ執着していたはずのロレッタをあっさりと見捨てるアンダースにイザベラは驚いた。
やはり理解できないと思い、離婚できて良かったと思った。

「用は済んだのだから私は失礼するわ」
「離婚届の提出を忘れるなよ?」
「わかってるわよ」

イザベラの去り際にアンダースが声をかけた。

「イザベラ、君が幸せになることを祈っているよ」

社交辞令の言葉なのでイザベラは無視した。
そのまま振り返らずにドアを開け、家を後にした。
外に出た瞬間、彼女は深呼吸をし、心の中で新たな決意を固めた。

「これでよかったのよ。これからは自分のために生きるわ。私の人生はまだこれからなのよ」

イザベラは自分に言い聞かせながら、ハンナの元へと向かった。



ハンナはイザベラが戻ってくると、心配そうに駆け寄った。

「イザベラ、大丈夫?」

イザベラは微笑みを浮かべながら、書類を見せた。

「大丈夫よ、ハンナ。これで全てが終わったわ。これからは新しい人生を歩んでいくわ」
「よかった、本当に」
「そうでもないのよ。ハンナ、アンダースは貴女に執着しているの。どうにかしないと」

ハンナの喜びの表情が消えた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

結婚なんてしなければよかった。

haruno
恋愛
夫が選んだのは私ではない女性。 蔑ろにされたことを抗議するも、夫から返ってきたのは冷たい言葉。 結婚なんてしなければよかった。

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

【完結】さよなら私の初恋

山葵
恋愛
私の婚約者が妹に見せる笑顔は私に向けられる事はない。 初恋の貴方が妹を望むなら、私は貴方の幸せを願って身を引きましょう。 さようなら私の初恋。

結婚式後に「爵位を継いだら直ぐに離婚する。お前とは寝室は共にしない!」と宣言されました

山葵
恋愛
結婚式が終わり、披露宴が始まる前に夫になったブランドから「これで父上の命令は守った。だが、これからは俺の好きにさせて貰う。お前とは寝室を共にする事はない。俺には愛する女がいるんだ。父上から早く爵位を譲って貰い、お前とは離婚する。お前もそのつもりでいてくれ」 確かに私達の結婚は政略結婚。 2人の間に恋愛感情は無いけれど、ブランド様に嫁ぐいじょう夫婦として寄り添い共に頑張って行ければと思っていたが…その必要も無い様だ。 ならば私も好きにさせて貰おう!!

【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪

山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。 「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」 そうですか…。 私は離婚届にサインをする。 私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。 使用人が出掛けるのを確認してから 「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」

手放したくない理由

ねむたん
恋愛
公爵令嬢エリスと王太子アドリアンの婚約は、互いに「務め」として受け入れたものだった。貴族として、国のために結ばれる。 しかし、王太子が何かと幼馴染のレイナを優先し、社交界でも「王太子妃にふさわしいのは彼女では?」と囁かれる中、エリスは淡々と「それならば、私は不要では?」と考える。そして、自ら婚約解消を申し出る。 話し合いの場で、王妃が「辛い思いをさせてしまってごめんなさいね」と声をかけるが、エリスは本当にまったく辛くなかったため、きょとんとする。その様子を見た周囲は困惑し、 「……王太子への愛は芽生えていなかったのですか?」 と問うが、エリスは「愛?」と首を傾げる。 同時に、婚約解消に動揺したアドリアンにも、側近たちが「殿下はレイナ嬢に恋をしていたのでは?」と問いかける。しかし、彼もまた「恋……?」と首を傾げる。 大人たちは、その光景を見て、教育の偏りを大いに後悔することになる。

愛せないですか。それなら別れましょう

黒木 楓
恋愛
「俺はお前を愛せないが、王妃にはしてやろう」  婚約者バラド王子の発言に、 侯爵令嬢フロンは唖然としてしまう。  バラド王子は、フロンよりも平民のラミカを愛している。  そしてフロンはこれから王妃となり、側妃となるラミカに従わなければならない。  王子の命令を聞き、フロンは我慢の限界がきた。 「愛せないですか。それなら別れましょう」  この時バラド王子は、ラミカの本性を知らなかった。

【完結】最後に微笑むのは…。

山葵
恋愛
義妹から、結婚式の招待状が届く。 結婚相手は、私の元婚約者。 結婚式は、私の18歳の誕生日の次の日。 家族を断罪する為に私は久し振りに王都へと向かう♪

処理中です...