【完結】理不尽な婚約破棄に母親が激怒しました

紫崎 藍華

文字の大きさ
上 下
6 / 8

6話

しおりを挟む
問題が解決したと思ったクリスタだったが、実はまだ解決していないのだと理解した。

バートラムからの慰謝料が支払われなかったのだ。

「どうしたのよ、いったい……」

こうなれば直接バートラムに訊くしかない。
クリスタは再びバートラムの家へと向かった。



「どういうことなの? 約束した慰謝料はどうなったの?」
「申し訳ないが今はその金額を支払う余裕がない」

バートラムは開き直っていた。
悪いとはまるで考えているようには思えず、クリスタはさらに詰める。

「余裕がない? それはあなたの都合であって慰謝料の支払いを免れる理由にはならないわ。そんなことして許されると思うの?」
「君の気持ちは理解しているが現実には色々な事情があるんだ。今はどうしても無理なんだ。どうか理解してほしい」
「無理だと言うけれど、あの時あなたが約束したことを忘れたの?」
「覚えているさ。だが状況が変わったんだ。どうか理解してほしい」
「状況が変わった? あなたの都合でしょ? そんな理由、認められるはずないわ!」

クリスタもいよいよ怒りを抑えきれなくなった。

「君が感情的になっているのは分かるが、そんなに責められても困る。無いものは無いんだ」
「責めるのは当然よ! あなたが私に与えた痛みを考えたら支払いを拒むなんて信じられない! 酷いわ!」
「だからといって無理なことを強要されても……」
「強要? あなたが自分の責任を果たさないことを正当化するなんて、あまりにも身勝手だわ!」
「……どうしても事情を理解してくれないようだな。残念だよ」

バートラムは心底落胆したように言った。
その態度がクリスタをますます怒らせる。

「傷つくのは私だけじゃない。あなたが私を捨てたことで私の人生がどれほど変わったか分かっているの? せめて慰謝料で責任を取りなさいよ!」
「……それは分かっている。しかし、今は本当に支払えない。どうにか理解してほしい」
「理解? そんなことはできないわ。あなたが約束を守らない限り、私の怒りは収まらないわ!」

クリスタも退けなかった。
約束を反故にされてしまえば屈辱であり、結局バートラムが自分の非を認めないことになってしまう。

だがバートラムとしても支払えないのだから支払うよう言われても困る。
そこで妥協案を出した。

「分かった、こうしよう。今すぐに全額を支払うことは無理だけれど、分割で支払うというのはどうだ?」
「分割? それでも、あなたが約束した金額には変わりないのよね?」
「もちろんだ。約束した金額は変わらない。ただ、今すぐには難しいんだ。月ごとに少しずつ支払う形にしよう」

妥協案だが妥当な案だとクリスタは考えた。
支払う意思があり分割でも支払われるならそれでいいと考えた。

「不本意だけれど、あなたの事情が事情なら仕方ないわね。いいわ、分割にしてあげる」
「ありがとう」
「でも、支払いが遅れたらどうするの?」
「必ず守る。どうか信じてほしい」

既にバートラムは信用できないが、ここまで口論し出した案なのだから、今度こそ必ず守るだろうと考えた。

「分かったわ。信じることにするわ」
「感謝するよ、クリスタ」

こうして話はやっとまとまった。

クリスタもバートラムも疲れ果てていた。
まさか婚約破棄の後にこれほど面倒なことが待っているとは夢にも思わなかった二人だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

見えるものしか見ないから

mios
恋愛
公爵家で行われた茶会で、一人のご令嬢が倒れた。彼女は、主催者の公爵家の一人娘から婚約者を奪った令嬢として有名だった。一つわかっていることは、彼女の死因。 第二王子ミカエルは、彼女の無念を晴そうとするが……

悪役断罪?そもそも何かしましたか?

SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。 男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。 あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。 えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。 勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。

【完結】恨んではいませんけど、助ける義理もありませんので

白草まる
恋愛
ユーディトはヒュベルトゥスに負い目があるため、最低限の扱いを受けようとも文句が言えない。 婚約しているのに満たされない関係であり、幸せな未来が待っているとは思えない関係。 我慢を続けたユーディトだが、ある日、ヒュベルトゥスが他の女性と親密そうな場面に出くわしてしまい、しかもその場でヒュベルトゥスから婚約破棄されてしまう。 詳しい事情を知らない人たちにとってはユーディトの親に非がある婚約破棄のため、悪者扱いされるのはユーディトのほうだった。

ここへ何をしに来たの?

恋愛
フェルマ王立学園での卒業記念パーティ。 「クリストフ・グランジュ様!」 凛とした声が響き渡り……。 ※小説になろう、カクヨム、pixivにも同じものを投稿しています。

【完結】私の事は気にせずに、そのままイチャイチャお続け下さいませ ~私も婚約解消を目指して頑張りますから~

山葵
恋愛
ガルス侯爵家の令嬢である わたくしミモルザには、婚約者がいる。 この国の宰相である父を持つ、リブルート侯爵家嫡男レイライン様。 父同様、優秀…と期待されたが、顔は良いが頭はイマイチだった。 顔が良いから、女性にモテる。 わたくしはと言えば、頭は、まぁ優秀な方になるけれど、顔は中の上位!? 自分に釣り合わないと思っているレイラインは、ミモルザの見ているのを知っていて今日も美しい顔の令嬢とイチャイチャする。 *沢山の方に読んで頂き、ありがとうございます。m(_ _)m

(完結)私が貴方から卒業する時

青空一夏
恋愛
私はペシオ公爵家のソレンヌ。ランディ・ヴァレリアン第2王子は私の婚約者だ。彼に幼い頃慰めてもらった思い出がある私はずっと恋をしていたわ。 だから、ランディ様に相応しくなれるよう努力してきたの。でもね、彼は・・・・・・ ※なんちゃって西洋風異世界。現代的な表現や機器、お料理などでてくる可能性あり。史実には全く基づいておりません。

結婚式をボイコットした王女

椿森
恋愛
請われて隣国の王太子の元に嫁ぐこととなった、王女のナルシア。 しかし、婚姻の儀の直前に王太子が不貞とも言える行動をしたためにボイコットすることにした。もちろん、婚約は解消させていただきます。 ※初投稿のため生暖か目で見てくださると幸いです※ 1/9:一応、本編完結です。今後、このお話に至るまでを書いていこうと思います。 1/17:王太子の名前を修正しました!申し訳ございませんでした···( ´ཫ`)

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

処理中です...