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6話
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問題が解決したと思ったクリスタだったが、実はまだ解決していないのだと理解した。
バートラムからの慰謝料が支払われなかったのだ。
「どうしたのよ、いったい……」
こうなれば直接バートラムに訊くしかない。
クリスタは再びバートラムの家へと向かった。
「どういうことなの? 約束した慰謝料はどうなったの?」
「申し訳ないが今はその金額を支払う余裕がない」
バートラムは開き直っていた。
悪いとはまるで考えているようには思えず、クリスタはさらに詰める。
「余裕がない? それはあなたの都合であって慰謝料の支払いを免れる理由にはならないわ。そんなことして許されると思うの?」
「君の気持ちは理解しているが現実には色々な事情があるんだ。今はどうしても無理なんだ。どうか理解してほしい」
「無理だと言うけれど、あの時あなたが約束したことを忘れたの?」
「覚えているさ。だが状況が変わったんだ。どうか理解してほしい」
「状況が変わった? あなたの都合でしょ? そんな理由、認められるはずないわ!」
クリスタもいよいよ怒りを抑えきれなくなった。
「君が感情的になっているのは分かるが、そんなに責められても困る。無いものは無いんだ」
「責めるのは当然よ! あなたが私に与えた痛みを考えたら支払いを拒むなんて信じられない! 酷いわ!」
「だからといって無理なことを強要されても……」
「強要? あなたが自分の責任を果たさないことを正当化するなんて、あまりにも身勝手だわ!」
「……どうしても事情を理解してくれないようだな。残念だよ」
バートラムは心底落胆したように言った。
その態度がクリスタをますます怒らせる。
「傷つくのは私だけじゃない。あなたが私を捨てたことで私の人生がどれほど変わったか分かっているの? せめて慰謝料で責任を取りなさいよ!」
「……それは分かっている。しかし、今は本当に支払えない。どうにか理解してほしい」
「理解? そんなことはできないわ。あなたが約束を守らない限り、私の怒りは収まらないわ!」
クリスタも退けなかった。
約束を反故にされてしまえば屈辱であり、結局バートラムが自分の非を認めないことになってしまう。
だがバートラムとしても支払えないのだから支払うよう言われても困る。
そこで妥協案を出した。
「分かった、こうしよう。今すぐに全額を支払うことは無理だけれど、分割で支払うというのはどうだ?」
「分割? それでも、あなたが約束した金額には変わりないのよね?」
「もちろんだ。約束した金額は変わらない。ただ、今すぐには難しいんだ。月ごとに少しずつ支払う形にしよう」
妥協案だが妥当な案だとクリスタは考えた。
支払う意思があり分割でも支払われるならそれでいいと考えた。
「不本意だけれど、あなたの事情が事情なら仕方ないわね。いいわ、分割にしてあげる」
「ありがとう」
「でも、支払いが遅れたらどうするの?」
「必ず守る。どうか信じてほしい」
既にバートラムは信用できないが、ここまで口論し出した案なのだから、今度こそ必ず守るだろうと考えた。
「分かったわ。信じることにするわ」
「感謝するよ、クリスタ」
こうして話はやっとまとまった。
クリスタもバートラムも疲れ果てていた。
まさか婚約破棄の後にこれほど面倒なことが待っているとは夢にも思わなかった二人だった。
バートラムからの慰謝料が支払われなかったのだ。
「どうしたのよ、いったい……」
こうなれば直接バートラムに訊くしかない。
クリスタは再びバートラムの家へと向かった。
「どういうことなの? 約束した慰謝料はどうなったの?」
「申し訳ないが今はその金額を支払う余裕がない」
バートラムは開き直っていた。
悪いとはまるで考えているようには思えず、クリスタはさらに詰める。
「余裕がない? それはあなたの都合であって慰謝料の支払いを免れる理由にはならないわ。そんなことして許されると思うの?」
「君の気持ちは理解しているが現実には色々な事情があるんだ。今はどうしても無理なんだ。どうか理解してほしい」
「無理だと言うけれど、あの時あなたが約束したことを忘れたの?」
「覚えているさ。だが状況が変わったんだ。どうか理解してほしい」
「状況が変わった? あなたの都合でしょ? そんな理由、認められるはずないわ!」
クリスタもいよいよ怒りを抑えきれなくなった。
「君が感情的になっているのは分かるが、そんなに責められても困る。無いものは無いんだ」
「責めるのは当然よ! あなたが私に与えた痛みを考えたら支払いを拒むなんて信じられない! 酷いわ!」
「だからといって無理なことを強要されても……」
「強要? あなたが自分の責任を果たさないことを正当化するなんて、あまりにも身勝手だわ!」
「……どうしても事情を理解してくれないようだな。残念だよ」
バートラムは心底落胆したように言った。
その態度がクリスタをますます怒らせる。
「傷つくのは私だけじゃない。あなたが私を捨てたことで私の人生がどれほど変わったか分かっているの? せめて慰謝料で責任を取りなさいよ!」
「……それは分かっている。しかし、今は本当に支払えない。どうにか理解してほしい」
「理解? そんなことはできないわ。あなたが約束を守らない限り、私の怒りは収まらないわ!」
クリスタも退けなかった。
約束を反故にされてしまえば屈辱であり、結局バートラムが自分の非を認めないことになってしまう。
だがバートラムとしても支払えないのだから支払うよう言われても困る。
そこで妥協案を出した。
「分かった、こうしよう。今すぐに全額を支払うことは無理だけれど、分割で支払うというのはどうだ?」
「分割? それでも、あなたが約束した金額には変わりないのよね?」
「もちろんだ。約束した金額は変わらない。ただ、今すぐには難しいんだ。月ごとに少しずつ支払う形にしよう」
妥協案だが妥当な案だとクリスタは考えた。
支払う意思があり分割でも支払われるならそれでいいと考えた。
「不本意だけれど、あなたの事情が事情なら仕方ないわね。いいわ、分割にしてあげる」
「ありがとう」
「でも、支払いが遅れたらどうするの?」
「必ず守る。どうか信じてほしい」
既にバートラムは信用できないが、ここまで口論し出した案なのだから、今度こそ必ず守るだろうと考えた。
「分かったわ。信じることにするわ」
「感謝するよ、クリスタ」
こうして話はやっとまとまった。
クリスタもバートラムも疲れ果てていた。
まさか婚約破棄の後にこれほど面倒なことが待っているとは夢にも思わなかった二人だった。
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