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6話

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ダスティンは納得したわけではないが、エレナのためにも親に相談しなくてはならない
どうなるのか不安というよりも悪い結果が待っていると彼は予想し気が重かった。

父親の書斎に入ると父親は彼を見つめた。

「何か悩みがあるのか?」
「はい、父上」

ダスティンは心を見透かされたように感じた。
だがこれは好都合だ。
相談を切り出すきっかけをくれたのだから、このチャンスを逃すわけにはいかなかった。

「マリエルとの婚約について考えることが多くなりました。彼女を愛していると思っていましたが、彼女はどうにもエレナの存在が許せないようです」
「ほう?」
「マリエルとはそのことで関係が悪化しています。このままでは結婚したところで関係は悪化したままでしょう」
「なるほどな」

父親の反応はダスティンにとってやりにくいものだった。
肯定も否定もしないのだから自分の言っていることがどう判断されているのか分からなかった。

ダスティンは伝えなくてはならないのだから、とにかく伝えることにした。

「俺はエレナを愛しています。別れるつもりはありません。ですが、それではマリエルの機嫌を損ねたままになるでしょう」
「ふむ」
「……マリエルとの婚約関係を見直すことはできないでしょうか?」

ついにその言葉を口にしてしまった。
ダスティンは父親の反応を待った。

「エレナとは、どのような関係なのだ?」
「彼女は俺にとって特別な存在です。俺たちの間には本物の愛があると感じています」
「そうか。愛というものは時に複雑なものだ」

父は深いため息をつき目を細めた。

「だがダスティンよ、お前の判断次第でどうにでもなるだろう。私がどうこう言うことではない。お前が正しいと思う選択をすべきだ」

それは間接的にダスティンの考えを肯定していることになると彼は解釈した。
予想外の好感触にダスティンは心の中で喜んだ。

「……父上、マリエルと今後顔を会わせないようにするには婚約関係を解消するだけでは足りません。遠くへ追放することは可能でしょうか?」
「当家の当主としては賛成できない。だがダスティンよ、お前は次期当主なのだ。当主の判断は絶対なのだ」

無理なことだと考えていたダスティンにとって、父親の反応は意外なものでしかなかった。
今すぐにマリエルを追放できなくとも、自分が当主になれば追放しても構わないと認めたようなものだ。

ダスティンは素早く頭の中で計算する。
マリエルと結婚して当主を継いでから追放する可能性。
その場合のエレナの反応。
そもそも当主になれば誰も反対できないのだから、エレナを妻にすることだってできる。

ダスティンは全てが上手くいくように思え希望が見えてきた。

「ありがとうございます、父上。しっかり考えます」

ダスティンは父親に感謝の意を示し、書斎を後にした。



残された父親はダスティンの反応を残念に思っていた。

マリエルの父親を通じて婚約を解消したいという申し出が既にあったのだ。
ダスティンの考えを予想し、父親はため息をついた。

「婚約を軽んじ、ましてや愛人に入れ込み過ぎるとはな……。ダスティンを当主にはできないな……」

寂しそうにつぶやいた。
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