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マリエルは自分で考えても苦しみから解放されないと結論を出した。
婚約は両家の契約であるため、両親に相談することにした。
婚約を解消するにせよ解消が無理だと言われるにせよ、答えが出ることでまた次の段階へと進める。
彼女は大きな不安と小さな期待を抱き、両親に相談を持ち掛けた。
「お父様、お母様、ダスティン様との関係で話さなければならないことがあります」
マリエルは声を震わせながら言った。
両親は無言で彼女に本題を促した。
「ダスティン様がエレナという女性を愛人にしています。その一方で私への愛情は失せてしまったようです。ダスティン様は私のことを邪魔に思っているようです……」
両親は驚愕の表情を浮かべた。
父は眉をひそめ、母は手を口に当てて驚きを隠せなかった。
「マリエル、それは本当なのか?」
「はい、確かです。ダスティン様はエレナに夢中で、私を放っておいて平然と彼女のことを優先します。今に始まったことではなくて、ずっとそのような調子です」
「それは酷いな」
「私たちの婚約はどうすべきなのでしょうか? 私は現状が辛いです。でもダスティン様が謝罪しても信じられません。私の我儘なのでしょうか?」
マリエルの涙ながらの訴えに両親も心を痛めた。
「マリエル、私たちはあなたの味方よ。あなたをそんなに悲しませるようなダスティン様なんていらないわ。ね? そうでしょう? あなた」
「うむ、その通りだ。今のままは良くないな。それでマリエルは婚約解消を望むのだな?」
「はい。でもよろしいのですか? 婚約には苦労したと思うのですが……」
婚約解消が現実味を帯びたことで、マリエルは家の利益にならないのではないかという不安に駆られた。
「そのようなことはどうでもいい。私たちはマリエルが大切なのだ。マリエルの幸せがなくてどうして嫁がせられるというのか」
「そうよ、マリエルは気にしないで。他に良い縁だってきっとあるわ」
「お父様……お母様……」
マリエルは感謝の思いで胸がいっぱいになった。
「ダスティンがそのような行動を取ったことは許されることではない。彼には責任がある。その辺を上手く利用すれば婚約解消に持ち込めるだろう」
「大丈夫ですか? 無理はなさらないでください」
「大丈夫だ。それに根回しの段階だから大事にはならないだろう。無理そうならまた別の手段を考えるさ。だからマリエルは安心してくれ」
父親の言葉にマリエルの胸がいっぱいになった。
「ありがとうございます、お父様、お母様」
彼女は、愛する者に裏切られた悲しみを抱えながらも、家族の支えがあることで希望を見出した。
「さて、すぐにでも対処しないとな。後は私に任せなさい。マリエルはもうダスティンと会う必要もない。もし必要となったら会ってもらうこともあるだろう。どうなるかは結果を待ちなさい」
「はい、分かりました」
父親にとってもダスティンの仕打ちは許せないものだった。
愛人を持つ貴族は珍しくないが、せめて結婚後にすればまだ許せたかもしれない。
これは貴族の常識や慣習によるものだ。
それを破ったダスティンに非があるのだから、きっと交渉は上手くいくだろうと考えた。
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