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婚約者と一緒に過ごす幸せな日々。
二人は笑顔で見つめ合い、キスをする。
マリエルは幸せだった。
「夢だけど、夢ではないのね……」
マリエルは目を覚まし、夢での出来事だと理解しても胸の高鳴りが止まらなかった。
そのような夢を見てしまうのも当然だと、彼女は昨日の出来事を思い返す。
彼女はダスティンと婚約することになったと親から告げられたのだ。
ダスティンは裕福な貴族の嫡男だ。
将来的に爵位を継ぐことが決まっており、マリエルが婚約できたことは両親にとっても喜ぶべきことだった。
マリエルにとっても文句のない相手であり、そのような相手と婚約できたことは驚きであり信じられなかった。
彼女は寝て起きて昨日のことを思い出しても未だに戸惑ってしまう。
それほど信じられない出来事だったのだ。
しかし夢ではないことは確かだった。
その証拠に、部屋のテーブルにはダスティンからの贈り物が置かれている。
マリエルはそれを見ると喜びで胸が熱くなるのを感じた。
だが同時に不安にも襲われた。
自分が本当に彼に相応しいのかも分からないのだ。
それでも彼女は自分にできることをするだけだと思い直すことにした。
そう思おうとしても自信が持てなかった。
根拠もなく自分を偽ることはできなかった。
マリエルが食堂に向かうと、そこには両親が既に待っていた。
「おはようございます、お父様、お母様」
「おはよう、マリエル。よく眠れなかな?」
「おはよう、マリエル。いい朝ね」
両親は笑顔で挨拶した。
いつも通りの光景だが、今日は一段と笑顔だった。
「何か嬉しいことでもありましたか?」
「ダスティン様との婚約が決まったのだ。嬉しくて当然だろう」
「マリエルは嬉しくないの?」
「嬉しいです。でも……まだ現実感がありません」
「それも当然だな。だがこれからどんどん実感していくことになるぞ」
「ダスティン様がお優しい方なのは知っているでしょう? 安心しなさい」
父親も母親も微笑みながら言った。
「はい、お父様、お母様。私も頑張ってみます」
マリエルは不安よりも明るい未来のために努力しようと決意した。
マリエルとダスティンの関係は良好だった。
互いに遠慮があるせいで言葉数も少ないが、悪くない関係だ。
それが時間の経過で徐々に心の距離が縮まっていった。
ある日、ダスティンがマリエルを庭園の散歩に誘った。
ダスティンの家の庭園は立派であり、花々が咲き乱れていた。
美しい光景にマリエルも自然と笑みが溢れる。
そこにダスティンが話しかける。
「マリエル、俺との婚約、後悔していないか?」
「後悔なんてするはずがありません。ダスティン様、私は幸せです」
「そうか、それなら良かった」
ダスティンは安心した様子で微笑んだ。
「君が喜ぶことなら何でもしてやりたいと思っているんだ」
「ありがとうございます」
「……これからも一緒にいてくれないか?」
「はい、もちろんです」
「ありがとう。愛しているよ、マリエル」
「私もです、ダスティン様」
ダスティンの優しい眼差しと言葉にマリエルの心臓は高鳴った。
こうしてマリエルはダスティンをますます信用するようになり愛するようになった。
そのような日々の終わりは突然だった。
「マリエル、愛人を作ることにした。君の婚約者の立場は変わらないから安心してくれ」
二人は笑顔で見つめ合い、キスをする。
マリエルは幸せだった。
「夢だけど、夢ではないのね……」
マリエルは目を覚まし、夢での出来事だと理解しても胸の高鳴りが止まらなかった。
そのような夢を見てしまうのも当然だと、彼女は昨日の出来事を思い返す。
彼女はダスティンと婚約することになったと親から告げられたのだ。
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将来的に爵位を継ぐことが決まっており、マリエルが婚約できたことは両親にとっても喜ぶべきことだった。
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だが同時に不安にも襲われた。
自分が本当に彼に相応しいのかも分からないのだ。
それでも彼女は自分にできることをするだけだと思い直すことにした。
そう思おうとしても自信が持てなかった。
根拠もなく自分を偽ることはできなかった。
マリエルが食堂に向かうと、そこには両親が既に待っていた。
「おはようございます、お父様、お母様」
「おはよう、マリエル。よく眠れなかな?」
「おはよう、マリエル。いい朝ね」
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「ダスティン様との婚約が決まったのだ。嬉しくて当然だろう」
「マリエルは嬉しくないの?」
「嬉しいです。でも……まだ現実感がありません」
「それも当然だな。だがこれからどんどん実感していくことになるぞ」
「ダスティン様がお優しい方なのは知っているでしょう? 安心しなさい」
父親も母親も微笑みながら言った。
「はい、お父様、お母様。私も頑張ってみます」
マリエルは不安よりも明るい未来のために努力しようと決意した。
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互いに遠慮があるせいで言葉数も少ないが、悪くない関係だ。
それが時間の経過で徐々に心の距離が縮まっていった。
ある日、ダスティンがマリエルを庭園の散歩に誘った。
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美しい光景にマリエルも自然と笑みが溢れる。
そこにダスティンが話しかける。
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「そうか、それなら良かった」
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「ありがとうございます」
「……これからも一緒にいてくれないか?」
「はい、もちろんです」
「ありがとう。愛しているよ、マリエル」
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ダスティンの優しい眼差しと言葉にマリエルの心臓は高鳴った。
こうしてマリエルはダスティンをますます信用するようになり愛するようになった。
そのような日々の終わりは突然だった。
「マリエル、愛人を作ることにした。君の婚約者の立場は変わらないから安心してくれ」
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