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6話

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セレナはジョナスの問いに対して、冷ややかな笑みを浮かべた。

「ジョナス、実はあなたが知るべきことがあるの。子供の本当の父親はあなたではないわ」

その瞬間、ジョナスの顔から血の気が引いた。

「何だって? それはどういう意味だ?」
「あなたが思っているように、子供の父親はあなたではないの。別の男性なのよ。理解できる?」

ジョナスの顔は怒りで真っ赤になり、拳を強く握りしめた。

「そんなふざけたことを許せるわけがないだろう! お前は俺を騙していたんだ、ずっと! どうしてそんなことを隠していたんだ! 相手の男は誰なんだ!」
「あなたには関係ないことよ。わたしたちの関係はもう終わっているわ。子供の父親が誰であるかなんてあなたは知らないほうが幸せよ」
「ふざけるな! セレナ! 君は俺をずっと騙していたんだ! 俺の感情を弄んで、こんな真実を隠していたなんて許せない!!」
「裏切ったのはジョナスのほうが先でしょ? スザンナ姉さまと婚約しているときに浮気していたじゃない。知らなかったとでも思った?」
「その関係はもう終わっている。今になって過去を蒸し返すな!」
「でも浮気したのは事実でしょ? それなのにわたしの責めるの? 笑わせないで」

お互いに自分の非を認める気はなく、その場は修羅場となった。
二人は激しい言い争いを続け、家の中に罵声が響き渡った。

ジョナスは怒りに任せてテーブルを叩き叫ぶ。

「セレナも、子供の父親も、絶対に許さない!」
「許さない? あなたが何をしようとわたしにはもう関係ないわ。わたしは自分の道を歩むだけ。婚約関係も解消しましょう」
「君がどれだけ冷酷な人間か、これでよく分かったよ。セレナ、君もその男も絶対に許さない。全てを暴いてやる!」
「好きにすればいいわ。でも、あなたが騒げば騒ぐほど、自分が惨めになるだけよ。」

セレナは冷淡に言い放った。
それを挑発だと受け止めたジョナスの怒りが収まるはずがない。

そこにセレナの両親が部屋に入ってきた。
父親は険しい顔でジョナスを見据えた。

「何の騒ぎかな? 愛しい婚約者に対する態度として褒められたものではないぞ、ジョナス」
「聞いてください! セレナが俺を騙したのです! 子供の父親は俺ではなかったなんて酷い裏切りだ!」
「ジョナス、君の愛はその程度のものだったのか。失望したよ」
「失望? 冗談もいい加減にしてください。本気で怒りますよ?」

両親はセレナを溺愛しているため彼女を擁護するのは当然だった。
いくら貴族家としての格がジョナスのほうに分があろうとも、この場では彼のほうが不利だった。

「もう婚約破棄しかありません。彼女と結婚するつもりはありません。俺を裏切ったのだから当然です。異論はありませんよね?」
「セレナが構わないと言うならそれで構わん。どうする? セレナ」
「婚約破棄でいいわ」
「ならば婚約関係は白紙に戻すということで異論はないな? ジョナス」
「……いいでしょう。ですが忘れないでください。俺はセレナを許しません。子供の本当の父親もです。俺を馬鹿にした報いを受けさせて後悔させてやります」

ジョナスは神に誓うように言った。

「ジョナスの気持ちはよくわかった」

そう言ったのはセレナの父親ではない。
また別の男性が部屋に入ってくるなり、そう言ったのだ。
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