【完結】裏切ったあなたを許さない

5話

ジョナスはその日、自宅の書斎でくつろぎ、一人で過ごす静かな時間を楽しんでいた。
そんな時、使用人が一通の手紙を持ってきた。

「ジョナス様、匿名の手紙が届きました」
「匿名だと？　誰が差出人なのかまったくわからないのか？」
「はい、受け取った使用人によると、相手は名乗らなかったようです。ですが雰囲気としては貴族の使いではなさそうとのことでした」
「使えない使用人だな……。まあいい。それよりも中身だ。開けて確認しろ」
「はい。では失礼します」

使用人は封筒を開け、中に手紙以外入っていないことを確認し、その他異常がないことを確認した。
使用人はジョナスに恭しく手紙を差し出した。

ジョナスは手紙を受け取り、中身を確認した。
手紙には簡潔な言葉で、セレナが他の男性とも関係を持っている可能性が示唆されていた。
彼は最初、その内容を怪しいと思ったが、もし本当だったら自分の立場や名誉にも関わる問題だと考え、心の中に不安が広がった。

ジョナスはすぐにセレナを問い詰める決意を固め、セレナの自宅へと向かった。



セレナの自宅へ着いたジョナスは使用人に出迎えられ、家の中へと案内された。
そしてセレナがやってきた。

「ジョナス？　急にどうしたの？　あ、もしかして私に会いたくなったの？」
「確かに会いたくなったな。ところで確認したいことがある。この手紙のことだ」

冗談めかしたセレナとは真逆の態度でジョナスは冷静に対応した。

ジョナスは手紙をセレナに差し出した。
手紙を受け取ったセレナは中身を読んだが、その顔に驚きの表情はなかった。
冷静さを保つセレナをジョナスは怪しみ、書かれていたことが事実なのではないかという疑念が強まる。

「こんな手紙、誰が書いたのかしらね」
「セレナ、本当に君は他の男性とも関係があるのか？」

ジョナスは問い詰めるように言った。
セレナは肩をすくめ、悪びれる様子もなかった。

「わたしのこと、信用できないっていうの？」
「いや、そういうわけではないが……」
「でも疑ったのは事実よね？　わたしのこと、信用してないからそうしたんでしょ？」
「違う、そうではない。ただ、このようなことを書いた人物に心当たりがないか知りたかったんだ」
「心当たりならジョナスのほうにはないの？　わたし、何も知らないとでも思ってるの？」

いつしか逆にセレナがジョナスを問い詰める形になっていた。
ジョナスだって他人の恨みを買っている可能性はあるので否定はできない。

「そんなこと今はどうでもいい。問題は誰がこの手紙を書いたかだ」
「ごまかすのね。いいわ、わかったから」
「その態度は何だ？　これは俺たちの問題だ。俺たちの将来にかかわる重大な問題だろう？」

セレナは冷静な表情を崩さずに答えた。

「ジョナス、あなたがどう思うかはあなたの自由よ。私のことを信用しないのはわかったから」
「セレナ！」
「帰って。冷静にならないと話もできないじゃない」

ジョナスはセレナの言葉と態度に深い失望を感じた。
だがどうしても訊かなくてはならない事がまだ残っていた。

「子供は本当に俺の子なのか？」