【完結】私を虐げた継母と義妹のために、素敵なドレスにして差し上げました

紫崎 藍華

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6話

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ウィラード王子は唐突に言った。

「実は君を一目見たときから気に入っていたんだ」

突然の告白にキャロラインは心臓が止まりそうな思いをした。
まさかこのような理由があったなんて、聞かされてもまだ信じられなかった。

「……そうだったのですね。初めてお会いしたのは先ほどですよね?」
「ああ、そうだとも」
「それで私を助けてくださったのですか?」
「それもあるかもしれないな。だが理不尽な仕打ちを見て見ぬ振りはできない。きっと他の人が同じような状況になっていても助けただろう」

ウィラード王子は飾らずに本心を語った。
それはキャロラインにも伝わり、王子が本気なのだと思った。

「私は男爵家の娘です。殿下の気持ちは嬉しいですが、釣り合いが取れません」
「問題があるとすれば釣り合いが取れないことくらいではないのか?」
「……そうかもしれません」

キャロラインにとって懸念していたことはウィラード王子にとっては取るに足らないことだった。
キャロラインは外堀を埋められるように思えた。

ウィラード王子の提案はまたしても唐突だった。

「そういえばメイドの仕事をしていたなら踊れなかっただろう? この場で音楽もないが踊らないか?」
「……はい」

夢にまで見た王宮の舞踏会でのダンスとは少し違うが、これもまた特別な経験だった。
キャロラインの手を取ったウィラードは踊りはじめ、キャロラインをリードした。

キャロラインは上手く踊れたとは思わなかった。
だが踊りながら見つめ合う二人の間には特別な感情が確かに芽生えていた。
このままずっと踊っていられたら幸せだと彼女は考えた。

踊り終わり、手を放すのを惜しむ気持ちを抱いたのは二人とも同じだった。

ウィラードはキャロラインを見つめ言う。

「君と出会えて本当に良かった」
「私もです、ウィラード殿下」

そう言われれば嬉しくないはずがない。
しかし、キャロラインはふと我に返った。

「私はここでメイドとして働いている身です。そろそろ仕事に戻らないと……」

申し訳なさそうに言ったキャロラインの気持ちをウィラード王子は尊重することにした。
焦らなくとも時間はあるのだ。
ここで束縛するような素振りを見せれば彼女は従うだろうが、それは後に悪い影響を及ぼすと考えた。

「君のその責任感、素晴らしいと思う。ますます君が好きになった」
「ありがとうございます、ウィラード殿下。では失礼いたします」

キャロラインはお辞儀をして部屋から出て行った。
ウィラードはその背中を見送りながら彼女への思いをさらに強くした。

「この出会いは運命かもしれない。彼女を虐げた者は許さない……」

ウィラード王子は敵に容赦するつもりはなかった。
キャロラインを虐げていたなら継母だろうが義妹だろうが敵だった。

「まずは事実を明らかにしないとな」

ウィラード王子は部下からの報告が待ち遠しく思った。
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