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5話
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キャロラインはウィラードに連れられて別室に入った。
使用人たちは邪魔にならないよう気配を消しつつ壁際に控えている。
ウィラードはキャロラインに座るよう促した。
「さて、キャロライン。詳しく聞かせてくれ。悪いようにはしないから家でのことを聞かせてほしい」
ウィラードは安心させるように優しい声で尋ねた。
キャロラインも王子を前に全てを告げる覚悟を決め話し始めた。
「ウィラード殿下、私はずっと継母と義妹に虐げられてきました。使用人のように働かされ彼女たちからは嫌がらせを受けています。私のドレスなんてありませんし、舞踏会に参加できないことを嘲笑われました」
ウィラードは静かに頷きながら話を聞いていた。
「それでメイドとして働いたのは父の意向もあってのことです。私を虐げるためではなく、虐げられている私を継母と義妹から引き離すためです」
「そうだったのか……」
それからもキャロラインは自分の境遇を語り続けた。
ウィラードは時折相槌を打ちつつ彼女の話に耳を傾けた。
「なるほど、よくわかった。どうか俺を信じてほしい。君を救い出してみせる」
「ウィラード殿下、ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
「君を助けるために全力を尽くすよ」
ウィラードは微笑んでいる。
キャロラインは感謝の気持ちでいっぱいになり、このようなことになるとは夢のようだと思った。
王子という身分は権力も相当なものだ。
その彼が全力を約束したのだから、もう救われることが決まったようなものだ。
ウィラードは部下たちを呼び出し、的確な指示を出し始めた。
「まず、キャロラインを客として王宮に滞在させる。不自由がないように手配しろ」
「承知しました」
「次に、キャロラインの話が正しいのか事実確認を行う。彼女が述べた状況や継母と義妹の行動について調査を進めてくれ」
「はっ、直ちに」
「そして最後に、継母と義妹の評判や素行を徹底的に調べるように。過去の行動や他の証言者からも情報を集めてほしい」
「速やかに調べます!」
部下たち敬礼し部屋を出て行った。
キャロラインはウィラードの王子らしい姿に見惚れてしまった。
まさか自分のために権力を使い事実を確認するというのだから特別な扱いを受けていることは明らかだ。
それがどういった理由によるものなのか、彼女は淡い期待を抱いてしまった。
「ありがとうございます、ウィラード殿下。本当に感謝しています」
ウィラードはキャロラインの手を取った。
キャロラインの胸が高鳴る。
「もう大丈夫。君は一人じゃない。俺がいるから安心してくれ」
キャロラインはウィラードの言葉に勇気をもらい、新たな希望を胸に秘めた。
これでもう虐げられる日々と別れを告げられるのだと思った。
それに……真剣な眼差しは勘違いを引き起こしそうだった。
キャロラインは男爵家の令嬢。
とてもではないが王子とは釣り合いが取れない。
そのことを自覚しているからキャロラインはウィラード王子の真意が分からなかった。
使用人たちは邪魔にならないよう気配を消しつつ壁際に控えている。
ウィラードはキャロラインに座るよう促した。
「さて、キャロライン。詳しく聞かせてくれ。悪いようにはしないから家でのことを聞かせてほしい」
ウィラードは安心させるように優しい声で尋ねた。
キャロラインも王子を前に全てを告げる覚悟を決め話し始めた。
「ウィラード殿下、私はずっと継母と義妹に虐げられてきました。使用人のように働かされ彼女たちからは嫌がらせを受けています。私のドレスなんてありませんし、舞踏会に参加できないことを嘲笑われました」
ウィラードは静かに頷きながら話を聞いていた。
「それでメイドとして働いたのは父の意向もあってのことです。私を虐げるためではなく、虐げられている私を継母と義妹から引き離すためです」
「そうだったのか……」
それからもキャロラインは自分の境遇を語り続けた。
ウィラードは時折相槌を打ちつつ彼女の話に耳を傾けた。
「なるほど、よくわかった。どうか俺を信じてほしい。君を救い出してみせる」
「ウィラード殿下、ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
「君を助けるために全力を尽くすよ」
ウィラードは微笑んでいる。
キャロラインは感謝の気持ちでいっぱいになり、このようなことになるとは夢のようだと思った。
王子という身分は権力も相当なものだ。
その彼が全力を約束したのだから、もう救われることが決まったようなものだ。
ウィラードは部下たちを呼び出し、的確な指示を出し始めた。
「まず、キャロラインを客として王宮に滞在させる。不自由がないように手配しろ」
「承知しました」
「次に、キャロラインの話が正しいのか事実確認を行う。彼女が述べた状況や継母と義妹の行動について調査を進めてくれ」
「はっ、直ちに」
「そして最後に、継母と義妹の評判や素行を徹底的に調べるように。過去の行動や他の証言者からも情報を集めてほしい」
「速やかに調べます!」
部下たち敬礼し部屋を出て行った。
キャロラインはウィラードの王子らしい姿に見惚れてしまった。
まさか自分のために権力を使い事実を確認するというのだから特別な扱いを受けていることは明らかだ。
それがどういった理由によるものなのか、彼女は淡い期待を抱いてしまった。
「ありがとうございます、ウィラード殿下。本当に感謝しています」
ウィラードはキャロラインの手を取った。
キャロラインの胸が高鳴る。
「もう大丈夫。君は一人じゃない。俺がいるから安心してくれ」
キャロラインはウィラードの言葉に勇気をもらい、新たな希望を胸に秘めた。
これでもう虐げられる日々と別れを告げられるのだと思った。
それに……真剣な眼差しは勘違いを引き起こしそうだった。
キャロラインは男爵家の令嬢。
とてもではないが王子とは釣り合いが取れない。
そのことを自覚しているからキャロラインはウィラード王子の真意が分からなかった。
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