5 / 8
5話
しおりを挟む
キャロラインはウィラードに連れられて別室に入った。
使用人たちは邪魔にならないよう気配を消しつつ壁際に控えている。
ウィラードはキャロラインに座るよう促した。
「さて、キャロライン。詳しく聞かせてくれ。悪いようにはしないから家でのことを聞かせてほしい」
ウィラードは安心させるように優しい声で尋ねた。
キャロラインも王子を前に全てを告げる覚悟を決め話し始めた。
「ウィラード殿下、私はずっと継母と義妹に虐げられてきました。使用人のように働かされ彼女たちからは嫌がらせを受けています。私のドレスなんてありませんし、舞踏会に参加できないことを嘲笑われました」
ウィラードは静かに頷きながら話を聞いていた。
「それでメイドとして働いたのは父の意向もあってのことです。私を虐げるためではなく、虐げられている私を継母と義妹から引き離すためです」
「そうだったのか……」
それからもキャロラインは自分の境遇を語り続けた。
ウィラードは時折相槌を打ちつつ彼女の話に耳を傾けた。
「なるほど、よくわかった。どうか俺を信じてほしい。君を救い出してみせる」
「ウィラード殿下、ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
「君を助けるために全力を尽くすよ」
ウィラードは微笑んでいる。
キャロラインは感謝の気持ちでいっぱいになり、このようなことになるとは夢のようだと思った。
王子という身分は権力も相当なものだ。
その彼が全力を約束したのだから、もう救われることが決まったようなものだ。
ウィラードは部下たちを呼び出し、的確な指示を出し始めた。
「まず、キャロラインを客として王宮に滞在させる。不自由がないように手配しろ」
「承知しました」
「次に、キャロラインの話が正しいのか事実確認を行う。彼女が述べた状況や継母と義妹の行動について調査を進めてくれ」
「はっ、直ちに」
「そして最後に、継母と義妹の評判や素行を徹底的に調べるように。過去の行動や他の証言者からも情報を集めてほしい」
「速やかに調べます!」
部下たち敬礼し部屋を出て行った。
キャロラインはウィラードの王子らしい姿に見惚れてしまった。
まさか自分のために権力を使い事実を確認するというのだから特別な扱いを受けていることは明らかだ。
それがどういった理由によるものなのか、彼女は淡い期待を抱いてしまった。
「ありがとうございます、ウィラード殿下。本当に感謝しています」
ウィラードはキャロラインの手を取った。
キャロラインの胸が高鳴る。
「もう大丈夫。君は一人じゃない。俺がいるから安心してくれ」
キャロラインはウィラードの言葉に勇気をもらい、新たな希望を胸に秘めた。
これでもう虐げられる日々と別れを告げられるのだと思った。
それに……真剣な眼差しは勘違いを引き起こしそうだった。
キャロラインは男爵家の令嬢。
とてもではないが王子とは釣り合いが取れない。
そのことを自覚しているからキャロラインはウィラード王子の真意が分からなかった。
使用人たちは邪魔にならないよう気配を消しつつ壁際に控えている。
ウィラードはキャロラインに座るよう促した。
「さて、キャロライン。詳しく聞かせてくれ。悪いようにはしないから家でのことを聞かせてほしい」
ウィラードは安心させるように優しい声で尋ねた。
キャロラインも王子を前に全てを告げる覚悟を決め話し始めた。
「ウィラード殿下、私はずっと継母と義妹に虐げられてきました。使用人のように働かされ彼女たちからは嫌がらせを受けています。私のドレスなんてありませんし、舞踏会に参加できないことを嘲笑われました」
ウィラードは静かに頷きながら話を聞いていた。
「それでメイドとして働いたのは父の意向もあってのことです。私を虐げるためではなく、虐げられている私を継母と義妹から引き離すためです」
「そうだったのか……」
それからもキャロラインは自分の境遇を語り続けた。
ウィラードは時折相槌を打ちつつ彼女の話に耳を傾けた。
「なるほど、よくわかった。どうか俺を信じてほしい。君を救い出してみせる」
「ウィラード殿下、ありがとうございます。どうかよろしくお願いします」
「君を助けるために全力を尽くすよ」
ウィラードは微笑んでいる。
キャロラインは感謝の気持ちでいっぱいになり、このようなことになるとは夢のようだと思った。
王子という身分は権力も相当なものだ。
その彼が全力を約束したのだから、もう救われることが決まったようなものだ。
ウィラードは部下たちを呼び出し、的確な指示を出し始めた。
「まず、キャロラインを客として王宮に滞在させる。不自由がないように手配しろ」
「承知しました」
「次に、キャロラインの話が正しいのか事実確認を行う。彼女が述べた状況や継母と義妹の行動について調査を進めてくれ」
「はっ、直ちに」
「そして最後に、継母と義妹の評判や素行を徹底的に調べるように。過去の行動や他の証言者からも情報を集めてほしい」
「速やかに調べます!」
部下たち敬礼し部屋を出て行った。
キャロラインはウィラードの王子らしい姿に見惚れてしまった。
まさか自分のために権力を使い事実を確認するというのだから特別な扱いを受けていることは明らかだ。
それがどういった理由によるものなのか、彼女は淡い期待を抱いてしまった。
「ありがとうございます、ウィラード殿下。本当に感謝しています」
ウィラードはキャロラインの手を取った。
キャロラインの胸が高鳴る。
「もう大丈夫。君は一人じゃない。俺がいるから安心してくれ」
キャロラインはウィラードの言葉に勇気をもらい、新たな希望を胸に秘めた。
これでもう虐げられる日々と別れを告げられるのだと思った。
それに……真剣な眼差しは勘違いを引き起こしそうだった。
キャロラインは男爵家の令嬢。
とてもではないが王子とは釣り合いが取れない。
そのことを自覚しているからキャロラインはウィラード王子の真意が分からなかった。
201
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説

冷徹公に嫁いだ可哀想なお姫様
さくたろう
恋愛
役立たずだと家族から虐げられている半身不随の姫アンジェリカ。味方になってくれるのは従兄弟のノースだけだった。
ある日、姉のジュリエッタの代わりに大陸の覇者、冷徹公の異名を持つ王マイロ・カースに嫁ぐことになる。
恐ろしくて震えるアンジェリカだが、マイロは想像よりもはるかに優しい人だった。アンジェリカはマイロに心を開いていき、マイロもまた、心が美しいアンジェリカに癒されていく。
※小説家になろう様にも掲載しています
いつか設定を少し変えて、長編にしたいなぁと思っているお話ですが、ひとまず短編のまま投稿しました。

愛する彼には美しい愛人が居た…私と我が家を侮辱したからには、無事では済みませんよ?
coco
恋愛
私たちは仲の良い恋人同士。
そう思っていたのに、愛する彼には美しい愛人が…。
私と我が家を侮辱したからには、あなたは無事では済みませんよ─?

誰の代わりに愛されているのか知った私は優しい嘘に溺れていく
矢野りと
恋愛
彼がかつて愛した人は私の知っている人だった。
髪色、瞳の色、そして後ろ姿は私にとても似ている。
いいえ違う…、似ているのは彼女ではなく私だ。望まれて嫁いだから愛されているのかと思っていたけれども、それは間違いだと知ってしまった。
『私はただの身代わりだったのね…』
彼は変わらない。
いつも優しい言葉を紡いでくれる。
でも真実を知ってしまった私にはそれが嘘だと分かっているから…。

(完)イケメン侯爵嫡男様は、妹と間違えて私に告白したらしいー婚約解消ですか?嬉しいです!
青空一夏
恋愛
私は学園でも女生徒に憧れられているアール・シュトン候爵嫡男様に告白されました。
図書館でいきなり『愛している』と言われた私ですが、妹と勘違いされたようです?
全5話。ゆるふわ。

【完結】私の小さな復讐~愛し合う幼馴染みを婚約させてあげましょう~
山葵
恋愛
突然、幼馴染みのハリーとシルビアが屋敷を訪ねて来た。
2人とは距離を取っていたから、こうして会うのは久し振りだ。
「先触れも無く、突然訪問してくるなんて、そんなに急用なの?」
相変わらずベッタリとくっ付きソファに座る2人を見ても早急な用事が有るとは思えない。
「キャロル。俺達、良い事を思い付いたんだよ!お前にも悪い話ではない事だ」
ハリーの思い付いた事で私に良かった事なんて合ったかしら?
もう悪い話にしか思えないけれど、取り合えずハリーの話を聞いてみる事にした。

【完結】私は駄目な姉なので、可愛い妹に全てあげることにします
リオール
恋愛
私には妹が一人いる。
みんなに可愛いとチヤホヤされる妹が。
それに対して私は顔も性格も地味。暗いと陰で笑われている駄目な姉だ。
妹はそんな私の物を、あれもこれもと欲しがってくる。
いいよ、私の物でいいのならあげる、全部あげる。
──ついでにアレもあげるわね。
=====
※ギャグはありません
※全6話

【完結】愛されないと知った時、私は
yanako
恋愛
私は聞いてしまった。
彼の本心を。
私は小さな、けれど豊かな領地を持つ、男爵家の娘。
父が私の結婚相手を見つけてきた。
隣の領地の次男の彼。
幼馴染というほど親しくは無いけれど、素敵な人だと思っていた。
そう、思っていたのだ。

婚約者を追いかけるのはやめました
カレイ
恋愛
公爵令嬢クレアは婚約者に振り向いて欲しかった。だから頑張って可愛くなれるように努力した。
しかし、きつい縦巻きロール、ゴリゴリに巻いた髪、匂いの強い香水、婚約者に愛されたいがためにやったことは、全て侍女たちが嘘をついてクロアにやらせていることだった。
でも前世の記憶を取り戻した今は違う。髪もメイクもそのままで十分。今さら手のひら返しをしてきた婚約者にももう興味ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる