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5話

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イルマは自室で窓から外を眺め、スティーヴンの馬車がいつ来るかと待っていた。
スティーヴンは両親にイルマとの結婚を許してもらうことになっていたのだ。
だが彼は歩いてやってきた。
イルマは気になったが良い知らせを信じた。

自室へと通されたスティーヴンをイルマは満足げな表情で迎えた。
だがスティーヴンの表情は暗かった。

「待っていたわ、スティーヴン。結婚の許可をもらえたのよね?」
「イルマ……結婚の許可は得られた。だが家からも追い出されることになってしまった……」

イルマは驚いた表情になり、スティーヴンの言葉に戸惑った。
追い出されるの意味によっては大問題になってしまう。

「何を言っているの?! 追い出されるってどういう意味なの?!」
「親子の縁を切られ家の一員とは認められなくなったということだ」
「どうしてそうなったのよ?!」
「父は俺の行為を許さなかった。ミシェルと離婚したことで激怒されたよ。俺がどれだけイルマへの愛を訴えようが無駄だった」

ヒステリックに叫んだイルマに対し、スティーヴンは淡々と説明した。

イルマはスティーヴンの利用価値がなくなったことだけは理解できた。
それで十分だった。
イルマの表情が冷たい笑みへと変わった。

「大変だったわね、スティーヴン。あなたの価値はもうなくなってしまったのね。もう終わりね、わたしたちの関係は」

それに驚いたのはスティーヴンだった。
イルマとの愛を感じ、愛を信じ、愛のためにミシェルを捨てたというのに今度は自分が捨てられてしまうのだ。

「待ってくれ! 俺はイルマを愛している! 信じてくれ!」
「その気持ちは嘘でないと信じているわ。でもね、スティーヴン。わたしは家から追い出されたあなたに価値を見出せないの」
「どうしてだ?! 俺の愛は何も変わってはいない! 俺の気持ちは今も、これからもイルマにある!」

イルマは面倒臭そうに溜め息は吐いた。

「気持ちの問題ではないの。あなたは立場を失った。それだけでわたしへの許せない裏切りよ」
「そんなことを言わないでくれ! 俺との愛は嘘だったのか?!」
「……裏切ったのはスティーヴンのほうじゃない。家から追い出されるなんて酷い裏切りよ。どうしてそうなったあなたと一緒にいないといけないの? あなたはもう価値がないの」
「そんな……」

スティーヴンは膝から崩れ落ちた。
イルマは彼をゴミでも見るかのような視線を向けた。

そのままでは邪魔なのでイルマは使用人を呼び、スティーヴンを外へ連れ出すように命令した。

「信じていたんだ、イルマ。俺は愛していた……」
「外へ放り出しておきなさい。抵抗するなら痛めつけても構わないわ」
「はっ」

命令に忠実に従う使用人によってスティーヴンは屋敷の敷地から外へ出され、迷惑にならないような距離まで連れていき蹴り飛ばされた。

「お嬢様に迷惑をかけるなよ」
「……これが俺への仕打ちなのか」

会話は成立していない。
スティーヴンはイルマへの愛を失っておらず、現状を受け入れられなかった。
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