5 / 8
5話
しおりを挟む
イルマは自室で窓から外を眺め、スティーヴンの馬車がいつ来るかと待っていた。
スティーヴンは両親にイルマとの結婚を許してもらうことになっていたのだ。
だが彼は歩いてやってきた。
イルマは気になったが良い知らせを信じた。
自室へと通されたスティーヴンをイルマは満足げな表情で迎えた。
だがスティーヴンの表情は暗かった。
「待っていたわ、スティーヴン。結婚の許可をもらえたのよね?」
「イルマ……結婚の許可は得られた。だが家からも追い出されることになってしまった……」
イルマは驚いた表情になり、スティーヴンの言葉に戸惑った。
追い出されるの意味によっては大問題になってしまう。
「何を言っているの?! 追い出されるってどういう意味なの?!」
「親子の縁を切られ家の一員とは認められなくなったということだ」
「どうしてそうなったのよ?!」
「父は俺の行為を許さなかった。ミシェルと離婚したことで激怒されたよ。俺がどれだけイルマへの愛を訴えようが無駄だった」
ヒステリックに叫んだイルマに対し、スティーヴンは淡々と説明した。
イルマはスティーヴンの利用価値がなくなったことだけは理解できた。
それで十分だった。
イルマの表情が冷たい笑みへと変わった。
「大変だったわね、スティーヴン。あなたの価値はもうなくなってしまったのね。もう終わりね、わたしたちの関係は」
それに驚いたのはスティーヴンだった。
イルマとの愛を感じ、愛を信じ、愛のためにミシェルを捨てたというのに今度は自分が捨てられてしまうのだ。
「待ってくれ! 俺はイルマを愛している! 信じてくれ!」
「その気持ちは嘘でないと信じているわ。でもね、スティーヴン。わたしは家から追い出されたあなたに価値を見出せないの」
「どうしてだ?! 俺の愛は何も変わってはいない! 俺の気持ちは今も、これからもイルマにある!」
イルマは面倒臭そうに溜め息は吐いた。
「気持ちの問題ではないの。あなたは立場を失った。それだけでわたしへの許せない裏切りよ」
「そんなことを言わないでくれ! 俺との愛は嘘だったのか?!」
「……裏切ったのはスティーヴンのほうじゃない。家から追い出されるなんて酷い裏切りよ。どうしてそうなったあなたと一緒にいないといけないの? あなたはもう価値がないの」
「そんな……」
スティーヴンは膝から崩れ落ちた。
イルマは彼をゴミでも見るかのような視線を向けた。
そのままでは邪魔なのでイルマは使用人を呼び、スティーヴンを外へ連れ出すように命令した。
「信じていたんだ、イルマ。俺は愛していた……」
「外へ放り出しておきなさい。抵抗するなら痛めつけても構わないわ」
「はっ」
命令に忠実に従う使用人によってスティーヴンは屋敷の敷地から外へ出され、迷惑にならないような距離まで連れていき蹴り飛ばされた。
「お嬢様に迷惑をかけるなよ」
「……これが俺への仕打ちなのか」
会話は成立していない。
スティーヴンはイルマへの愛を失っておらず、現状を受け入れられなかった。
スティーヴンは両親にイルマとの結婚を許してもらうことになっていたのだ。
だが彼は歩いてやってきた。
イルマは気になったが良い知らせを信じた。
自室へと通されたスティーヴンをイルマは満足げな表情で迎えた。
だがスティーヴンの表情は暗かった。
「待っていたわ、スティーヴン。結婚の許可をもらえたのよね?」
「イルマ……結婚の許可は得られた。だが家からも追い出されることになってしまった……」
イルマは驚いた表情になり、スティーヴンの言葉に戸惑った。
追い出されるの意味によっては大問題になってしまう。
「何を言っているの?! 追い出されるってどういう意味なの?!」
「親子の縁を切られ家の一員とは認められなくなったということだ」
「どうしてそうなったのよ?!」
「父は俺の行為を許さなかった。ミシェルと離婚したことで激怒されたよ。俺がどれだけイルマへの愛を訴えようが無駄だった」
ヒステリックに叫んだイルマに対し、スティーヴンは淡々と説明した。
イルマはスティーヴンの利用価値がなくなったことだけは理解できた。
それで十分だった。
イルマの表情が冷たい笑みへと変わった。
「大変だったわね、スティーヴン。あなたの価値はもうなくなってしまったのね。もう終わりね、わたしたちの関係は」
それに驚いたのはスティーヴンだった。
イルマとの愛を感じ、愛を信じ、愛のためにミシェルを捨てたというのに今度は自分が捨てられてしまうのだ。
「待ってくれ! 俺はイルマを愛している! 信じてくれ!」
「その気持ちは嘘でないと信じているわ。でもね、スティーヴン。わたしは家から追い出されたあなたに価値を見出せないの」
「どうしてだ?! 俺の愛は何も変わってはいない! 俺の気持ちは今も、これからもイルマにある!」
イルマは面倒臭そうに溜め息は吐いた。
「気持ちの問題ではないの。あなたは立場を失った。それだけでわたしへの許せない裏切りよ」
「そんなことを言わないでくれ! 俺との愛は嘘だったのか?!」
「……裏切ったのはスティーヴンのほうじゃない。家から追い出されるなんて酷い裏切りよ。どうしてそうなったあなたと一緒にいないといけないの? あなたはもう価値がないの」
「そんな……」
スティーヴンは膝から崩れ落ちた。
イルマは彼をゴミでも見るかのような視線を向けた。
そのままでは邪魔なのでイルマは使用人を呼び、スティーヴンを外へ連れ出すように命令した。
「信じていたんだ、イルマ。俺は愛していた……」
「外へ放り出しておきなさい。抵抗するなら痛めつけても構わないわ」
「はっ」
命令に忠実に従う使用人によってスティーヴンは屋敷の敷地から外へ出され、迷惑にならないような距離まで連れていき蹴り飛ばされた。
「お嬢様に迷惑をかけるなよ」
「……これが俺への仕打ちなのか」
会話は成立していない。
スティーヴンはイルマへの愛を失っておらず、現状を受け入れられなかった。
253
お気に入りに追加
264
あなたにおすすめの小説
婚約者が義妹を優先するので私も義兄を優先した結果
京佳
恋愛
私の婚約者は私よりも可愛い義妹を大事にする。いつも約束はドタキャンされパーティーのエスコートも義妹を優先する。私はブチ切れお前がその気ならコッチにも考えがある!と義兄にベッタリする事にした。「ずっとお前を愛してた!」義兄は大喜びして私を溺愛し始める。そして私は夜会で婚約者に婚約破棄を告げられたのだけど何故か彼の義妹が顔真っ赤にして怒り出す。
ちんちくりん婚約者&義妹。美形長身モデル体型の義兄。ざまぁ。溺愛ハピエン。ゆるゆる設定。
私が我慢する必要ありますか?【2024年12月25日電子書籍配信決定しました】
青太郎
恋愛
ある日前世の記憶が戻りました。
そして気付いてしまったのです。
私が我慢する必要ありますか?
※ 株式会社MARCOT様より電子書籍化決定!
コミックシーモア様にて12/25より配信されます。
コミックシーモア様限定の短編もありますので興味のある方はぜひお手に取って頂けると嬉しいです。
リンク先
https://www.cmoa.jp/title/1101438094/vol/1/
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
冷たかった夫が別人のように豹変した
京佳
恋愛
常に無表情で表情を崩さない事で有名な公爵子息ジョゼフと政略結婚で結ばれた妻ケイティ。義務的に初夜を終わらせたジョゼフはその後ケイティに触れる事は無くなった。自分に無関心なジョゼフとの結婚生活に寂しさと不満を感じながらも簡単に離縁出来ないしがらみにケイティは全てを諦めていた。そんなある時、公爵家の裏庭に弱った雄猫が迷い込みケイティはその猫を保護して飼うことにした。
ざまぁ。ゆるゆる設定
【完結】離縁されたので実家には戻らずに自由にさせて貰います!
山葵
恋愛
「キリア、俺と離縁してくれ。ライラの御腹には俺の子が居る。産まれてくる子を庶子としたくない。お前に子供が授からなかったのも悪いのだ。慰謝料は払うから、離婚届にサインをして出て行ってくれ!」
夫のカイロは、自分の横にライラさんを座らせ、向かいに座る私に離婚届を差し出した。
【完結】私の婚約者は、親友の婚約者に恋してる。
山葵
恋愛
私の婚約者のグリード様には好きな人がいる。
その方は、グリード様の親友、ギルス様の婚約者のナリーシャ様。
2人を見詰め辛そうな顔をするグリード様を私は見ていた。
愛してしまって、ごめんなさい
oro
恋愛
「貴様とは白い結婚を貫く。必要が無い限り、私の前に姿を現すな。」
初夜に言われたその言葉を、私は忠実に守っていました。
けれど私は赦されない人間です。
最期に貴方の視界に写ってしまうなんて。
※全9話。
毎朝7時に更新致します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる