【完結】愛に裏切られた私と、愛を諦めなかった元夫

4話

ミシェルは実家に戻り、両親に離婚の報告をした。

「お父様、お母様、私はスティーヴン様と離婚することになりました」

両親はミシェルの言葉に驚愕した表情になった。
何の前触れもなく、急に離婚と言われて驚かないはずがない。

「離婚だと？！　一体何があったというのだ！」

父親は憤りに満ちた声で尋ねた。
ミシェルは震える声で説明し始めた。

「スティーヴン様が……イルマという女性と浮気していたのです。私を裏切ったのです」

母親は両手で顔を覆い、嗚咽を漏らした。

「イルマだと？！　どこの女だ？！」
「調査報告書があります。後で渡します」
「そうか、頼んだぞ。相手のことが分かっているなら手間が省ける。それにしても……このようなことをしてただでは済まさんぞ！　それにスティーヴンもだ！　ミシェルを裏切り悲しませた責任は取ってもらう！」

父親の顔は真っ赤に染まり、怒りに満ちていた。

「政略結婚とは二つの家の絆を深めるものだ。スティーヴンは自分の欲望に溺れ、その大切な責務を果たせなかったのだ！」

父親の怒りは収まらない。



その頃、スティーヴンの家でも同じようなことが繰り広げられていた。

スティーヴンは父親の前に立ち、ためらいながら口を開いた。

「父上、俺はミシェルと離婚することになりました」

スティーヴンの言葉に、父親は驚きと怒りの表情を浮かべた。

「何を言っているのだ？！　スティーヴン、冗談はよせ」
「冗談ではありません。もう決まったことです」
「本当なのか？！　ミシェルは政略結婚で結ばれた大切な妻ではないか！　離婚してしまえば先方にも失礼なことになる！　関係が悪化してしまうではないか！」

父親は両手を握り締め、憤りに満ちた声で叫んだ。

「俺はイルマを選んだのです。そこに愛があると気付きました」

スティーヴンの言葉に、父親の表情はさらに険しくなった。

「イルマだと？！　まさか浮気して離婚になったのか？！　お前は一体何を考えているのだ！」

父親は激怒し、スティーヴンに向かって詰め寄った。
まだまだ言い足りない父親はスティーヴンを責める。

「政略結婚の意義を理解していなかったのか！　ミシェルは私たち家族の絆を深める大切な相手なのに、お前はそれを裏切ったのだ！　許される行為ではない！」

スティーヴンは頭を垂れ、懺悔するように語った。

「父上、本当に申し訳ありません。ですが俺は自分の心に正直でありたかったのです。イルマにはミシェルには感じられなかった感情、愛情を感じられたのです」
「そのような言い訳が認められるか！」
「ミシェルを裏切ったことを深く悔いていますが、もはや取り返しがつきません。俺はイルマを選んだのです」

父親はますます憤った。

「取り返しがつかないだと？！　そんな他人事のように言うな！　 お前は私の期待に背いたのだ！　この家の恥だ！」

スティーヴンは身を震わせ、父親の激しい怒りに押し潰されそうになった。
怒られるとは思っていたが、まさかここまでとは思っていなかったのだ。

「父上、本当に申し訳ありませんでした」
「謝罪程度で許せるか！　お前のような男が、この家の一員であることは認められない！　もうお前は当家の者ではない！　二度と私の前に現れるな！」
「父上！」
「黙れ！　お前にはイルマとやらがいるではないか。後は好きに生きろ」
「……はい」

スティーヴンは頭を垂れ立ち去った。

父親は憤りに震える表情のまま、息子の背中を見つめていた。