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王立学園の庭園で男女が向かい合っていた。
無言だが空気が張り詰めていた。
婚約関係にある二人だが、とてもではないが愛を語り合うような雰囲気ではない。
「ブルックス様、あなたとの婚約を破棄します」
ステラは毅然と告げた。
ブルックスにとっては突然の出来事であり、どうして婚約破棄されなければならないのか納得できなかった。
「何が不満なんだ?」
「不満ですか? ただ信じられなくなっただけです」
「俺が信じられないのか?」
「はい」
ステラの言葉に迷いはない。
言われたブルックスのほうは彼女がどうしてそこまで毅然とした態度なのか疑問を抱いた。
「だがそれだけで婚約破棄というのは無理がないか?」
「私が知らないとでも思っているのですか?」
ブルックスには心当たりがあった。
まさかステラに知られていたとは思わず、ここは白を切って乗り切ることを選んだ。
「知らないこともあれば知っていることもある。誤解することだってあるだろう。きっと話し合えば理解できる」
「話し合いで済ませられるような問題ではありません。あなたが他の女性と一緒にいるところを見てしまいました。あれは何だったのですか?」
「ただ偶然一緒にいただけだろう? それを見ただけで浮気だと決めつけるのは良くないぞ?」
「私が見たのはベッドの上に二人がいたところです。もっと詳しく説明しましょうか?」
まさか浮気現場を目撃されていたとは夢にも思わなかったブルックスは言い逃れできないと理解した。
「ステラ、どうか話を聞いてくれ。俺は――」
「言い訳なんて聞きたくありません」
「俺が愚かだった。あれは一時の気の迷いだったんだ。本当に、心から反省している」
「ですから反省など聞きたくありません。私はもうあなたを信じることができないのです」
「……お願いだ、ステラ。もう一度だけチャンスをくれないか?」
「信じることができなくなってしまったので無理です。反省も更生も期待していません」
「……」
「ご理解いただけましたか?」
「……ああ」
「では婚約破棄により私たちはもう婚約者ではありません」
「……」
ブルックスは何も言えなかった。
これ以上言い訳してもステラの気持ちは変わらないと理解していた。
「さようなら、ブルックス様。慰謝料も請求するのでよろしくお願いするわ」
立ち去るステラをブルックスは見ているだけだった。
彼女は振り返らなかった。
もう未練も何もないのだから。
その様子を偶然目撃してしまった人物がいた。
その存在にステラもブルックスも気づいていなかった。
ブルックスも去り、ベリンダはつぶやく。
「本当にこのままでいいのかしら?」
ベリンダにはアーロンという婚約者がいたが、婚約は家同士の利害が絡んだものであり、愛情は感じられなかった。
ステラからブルックスへの婚約破棄を目撃したことでベリンダの心も揺れ動いていた。
婚約は絶対ではない。
相手に問題があれば破棄することもできる。
ベリンダはアーロンとの婚約をどうすべきか、自分の心に問いかけた。
無言だが空気が張り詰めていた。
婚約関係にある二人だが、とてもではないが愛を語り合うような雰囲気ではない。
「ブルックス様、あなたとの婚約を破棄します」
ステラは毅然と告げた。
ブルックスにとっては突然の出来事であり、どうして婚約破棄されなければならないのか納得できなかった。
「何が不満なんだ?」
「不満ですか? ただ信じられなくなっただけです」
「俺が信じられないのか?」
「はい」
ステラの言葉に迷いはない。
言われたブルックスのほうは彼女がどうしてそこまで毅然とした態度なのか疑問を抱いた。
「だがそれだけで婚約破棄というのは無理がないか?」
「私が知らないとでも思っているのですか?」
ブルックスには心当たりがあった。
まさかステラに知られていたとは思わず、ここは白を切って乗り切ることを選んだ。
「知らないこともあれば知っていることもある。誤解することだってあるだろう。きっと話し合えば理解できる」
「話し合いで済ませられるような問題ではありません。あなたが他の女性と一緒にいるところを見てしまいました。あれは何だったのですか?」
「ただ偶然一緒にいただけだろう? それを見ただけで浮気だと決めつけるのは良くないぞ?」
「私が見たのはベッドの上に二人がいたところです。もっと詳しく説明しましょうか?」
まさか浮気現場を目撃されていたとは夢にも思わなかったブルックスは言い逃れできないと理解した。
「ステラ、どうか話を聞いてくれ。俺は――」
「言い訳なんて聞きたくありません」
「俺が愚かだった。あれは一時の気の迷いだったんだ。本当に、心から反省している」
「ですから反省など聞きたくありません。私はもうあなたを信じることができないのです」
「……お願いだ、ステラ。もう一度だけチャンスをくれないか?」
「信じることができなくなってしまったので無理です。反省も更生も期待していません」
「……」
「ご理解いただけましたか?」
「……ああ」
「では婚約破棄により私たちはもう婚約者ではありません」
「……」
ブルックスは何も言えなかった。
これ以上言い訳してもステラの気持ちは変わらないと理解していた。
「さようなら、ブルックス様。慰謝料も請求するのでよろしくお願いするわ」
立ち去るステラをブルックスは見ているだけだった。
彼女は振り返らなかった。
もう未練も何もないのだから。
その様子を偶然目撃してしまった人物がいた。
その存在にステラもブルックスも気づいていなかった。
ブルックスも去り、ベリンダはつぶやく。
「本当にこのままでいいのかしら?」
ベリンダにはアーロンという婚約者がいたが、婚約は家同士の利害が絡んだものであり、愛情は感じられなかった。
ステラからブルックスへの婚約破棄を目撃したことでベリンダの心も揺れ動いていた。
婚約は絶対ではない。
相手に問題があれば破棄することもできる。
ベリンダはアーロンとの婚約をどうすべきか、自分の心に問いかけた。
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