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ヴァレリーは契約に従ってルパートに莫大な慰謝料を請求した。
ルパートが否定しようが証言はいくらでもあったため、それらを否定すればルパートが証言者から恨みを買うことになり兼ねない。
嘘付き呼ばわりされれば平民だって気分を悪くするのは当然である。
相手が貴族であろうとも、何らかの形で報復することは不可能ではない。
ルパートは認めるしかなかった。
「この強欲め……!」
「浮気者が何を言うのですか? それにサインをしたのはルパート様自身の意思ですよね? 私の責任にしないでください」
ルパートは怒りで血管が切れそうになっていた。
何しろ全財産を失いそうなほどの金額なのだ。
踏み倒すなり支払いを拒否すれば信用を失い、貴族としては終わってしまうかもしれない。
選択肢はない。
こうしてルパートはほぼ全財産を失うことになった。
ヴァレリーが情報を集めるために懸けた賞金など得た財産からすればごくわずかでしかなかった。
それでいてヴァレリーは気前の良さから平民からの評判も良くなり、ルパートは浮気して大金を失ったことで笑い者になっていた。
多くを失ったルパートだが、まだメリンダが残されていた。
あるいは残された唯一の希望かもしれない。
だがメリンダは冷たい態度でルパートを出迎えたのだった。
「ルパートのせいで酷い目に遭ったわ。私の評判なんて最悪じゃない。婚約にも影響が出るわ」
「俺と結婚すればいいじゃないか。約束通りヴァレリーとの婚約は破棄した。もう邪魔なものはない。婚約しよう、メリンダ」
メリンダは怒りを爆発させた。
こうなった原因はルパートにもあり、全然反省していない態度が許せなかった。
「ふざけないで! あなたのせいで私はもう大変なのよ! それが婚約ですって? 冗談は顔だけにしてよ!」
「落ち着いてくれ、メリンダ。俺たちは愛し合ったじゃないか。今回だってきっと乗り越えられる。二人で乗り越えていこう」
「お金を失ったあなたに価値はないわ。もう終わりよ、私たちの関係は。これ以上しつこく付き纏うようなら考えがあるから」
そこまで言われてルパートはメリンダとの未来がないことを理解した。
「すまなかった……」
「謝罪するくらいなら私にも慰謝料を支払ってよ。私だって騙された被害者なのよ?」
メリンダは強気だったが、既に財産がほぼ全部失われたルパートから支払われることはなかった。
もしルパートがこの状況から逆転できる可能性があるとすれば、それはヴァレリーに謝罪し許されることだ。
何とか弁解することが唯一残された希望だった。
彼はヴァレリーに会うために連絡を取り、再びヴァレリーの前に立ったのだ。
「ヴァレリー、話を聞いてほしい。確かにメリンダと会っていたが、それは家の都合があったからだったんだ。浮気なんてしていないんだ」
「無駄な言い訳よね。証言はたくさんあるの。最初からそう言ってくれれば良かったのに、後から言われても信じられないわ」
「それはうっかりしていて……」
「そんなうっかりするような人と別れられて良かったわ。うっかり全財産を失うような人と結婚していたら大変なことになっていたわ」
それでもルパートは言い訳を続けようとしたが、ヴァレリーの冷たい視線に圧倒され言葉を失った。
「ルパート、もういいの。あなたの言い訳は聞き飽きたわ。事実は変わらないし、私はあなたを信じることができない。やり直す可能性なんて皆無よ」
ルパートは肩を落とし、諦めの表情を見せた。
「さようなら、ルパート。もう二度と顔を見せないで」
こうしてルパートは全ての希望を失った。
「まったく面倒なことをしてくれたわよね」
ヴァレリーは愚痴をこぼしながらメリンダへの慰謝料請求の準備をしていた。
浮気相手にも慰謝料を請求するのは当然のことだった。
メリンダにも制裁しなくてはヴァレリーにとっても問題は終わりを迎えない。
ヴァレリーから莫大な慰謝料の請求が届き、メリンダは絶叫し気絶した。
ルパートが否定しようが証言はいくらでもあったため、それらを否定すればルパートが証言者から恨みを買うことになり兼ねない。
嘘付き呼ばわりされれば平民だって気分を悪くするのは当然である。
相手が貴族であろうとも、何らかの形で報復することは不可能ではない。
ルパートは認めるしかなかった。
「この強欲め……!」
「浮気者が何を言うのですか? それにサインをしたのはルパート様自身の意思ですよね? 私の責任にしないでください」
ルパートは怒りで血管が切れそうになっていた。
何しろ全財産を失いそうなほどの金額なのだ。
踏み倒すなり支払いを拒否すれば信用を失い、貴族としては終わってしまうかもしれない。
選択肢はない。
こうしてルパートはほぼ全財産を失うことになった。
ヴァレリーが情報を集めるために懸けた賞金など得た財産からすればごくわずかでしかなかった。
それでいてヴァレリーは気前の良さから平民からの評判も良くなり、ルパートは浮気して大金を失ったことで笑い者になっていた。
多くを失ったルパートだが、まだメリンダが残されていた。
あるいは残された唯一の希望かもしれない。
だがメリンダは冷たい態度でルパートを出迎えたのだった。
「ルパートのせいで酷い目に遭ったわ。私の評判なんて最悪じゃない。婚約にも影響が出るわ」
「俺と結婚すればいいじゃないか。約束通りヴァレリーとの婚約は破棄した。もう邪魔なものはない。婚約しよう、メリンダ」
メリンダは怒りを爆発させた。
こうなった原因はルパートにもあり、全然反省していない態度が許せなかった。
「ふざけないで! あなたのせいで私はもう大変なのよ! それが婚約ですって? 冗談は顔だけにしてよ!」
「落ち着いてくれ、メリンダ。俺たちは愛し合ったじゃないか。今回だってきっと乗り越えられる。二人で乗り越えていこう」
「お金を失ったあなたに価値はないわ。もう終わりよ、私たちの関係は。これ以上しつこく付き纏うようなら考えがあるから」
そこまで言われてルパートはメリンダとの未来がないことを理解した。
「すまなかった……」
「謝罪するくらいなら私にも慰謝料を支払ってよ。私だって騙された被害者なのよ?」
メリンダは強気だったが、既に財産がほぼ全部失われたルパートから支払われることはなかった。
もしルパートがこの状況から逆転できる可能性があるとすれば、それはヴァレリーに謝罪し許されることだ。
何とか弁解することが唯一残された希望だった。
彼はヴァレリーに会うために連絡を取り、再びヴァレリーの前に立ったのだ。
「ヴァレリー、話を聞いてほしい。確かにメリンダと会っていたが、それは家の都合があったからだったんだ。浮気なんてしていないんだ」
「無駄な言い訳よね。証言はたくさんあるの。最初からそう言ってくれれば良かったのに、後から言われても信じられないわ」
「それはうっかりしていて……」
「そんなうっかりするような人と別れられて良かったわ。うっかり全財産を失うような人と結婚していたら大変なことになっていたわ」
それでもルパートは言い訳を続けようとしたが、ヴァレリーの冷たい視線に圧倒され言葉を失った。
「ルパート、もういいの。あなたの言い訳は聞き飽きたわ。事実は変わらないし、私はあなたを信じることができない。やり直す可能性なんて皆無よ」
ルパートは肩を落とし、諦めの表情を見せた。
「さようなら、ルパート。もう二度と顔を見せないで」
こうしてルパートは全ての希望を失った。
「まったく面倒なことをしてくれたわよね」
ヴァレリーは愚痴をこぼしながらメリンダへの慰謝料請求の準備をしていた。
浮気相手にも慰謝料を請求するのは当然のことだった。
メリンダにも制裁しなくてはヴァレリーにとっても問題は終わりを迎えない。
ヴァレリーから莫大な慰謝料の請求が届き、メリンダは絶叫し気絶した。
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