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ヘミングス公爵は芸術や文化を愛する人として有名だ。
その一方で変わり者と呼ばれることもある。
しかしながら公爵家としての権力も財力も確かなものであり、貴族としては間違いなく実力者だった。
そのような公爵が主催するのだからパーティーも派手なものになっていた。
「すごいわね……」
「ああ……」
ブリトニーもネヴィルも華やかさに圧倒されていた。
二人とも貴族なのでパーティーには慣れている。
だがそれでもこれほどのパーティーを経験したことはなかった。
二人は飲み物を手に取り、会場を見渡した。
「いろいろな人たちがいるな」
「そうね。貴族だけでなく芸術関係の人も多いみたい。さすがヘミングス公爵主催ね」
「そうだな」
ネヴィルはそう言うと飲み物を口に含んだ。
「ネヴィル、わたしたちも誰かと話さないと。わたしたちの関係、教えてあげないとね」
「そうだな」
この際だから誰でもいいと、二人は手頃な人たちの会話に入った。
二人は婚約したことを伝え、社交辞令として祝福の言葉を受けた。
ネヴィルにしろブリトニーにしろ貴族としての力は弱く、積極的に交流を深めるべき相手ではなかった。
だがパーティーの参加者は多く、中には平民だって混ざっている。
平民からすれば貴族である二人に下手なことが言えるはずもなく、大げさに婚約を祝う言葉を贈った。
そのようなことを繰り返していたときのことだった。
「あれは……まさか……」
「どうしたの?」
ネヴィルの視線の先にいたメイドはタバサだった。
「タバサがメイドとして働いているようだ。そうか、そこまで落ちぶれてしまったのか……」
罪悪感はないが、そこまで酷い現状になっているとは思っておらず、ついネヴィルはつぶやいてしまった。
だがブリトニーからすれば彼がまだタバサに未練があるように感じられてしまった。
「ネヴィル、わたしたちの関係を教えてあげるのはどう?」
「……そうするか」
ブリトニーが不機嫌そうに言ったことで、ネヴィルは彼女の意見に従うことにした。
二人はタバサに近づくと、彼女もまた二人のことを見つけた。
「久しぶりだな、タバサ。こんなところで会うとは思わなかった」
「お久しぶりです、ネヴィル様」
タバサはメイドらしく恭しく振る舞った。
「あなたがタバサ? 私はブリトニー。ネヴィルの婚約者なの」
「そうでしたか。婚約、おめでとうございます」
「それで、あなたは何をしているの?」
「見ての通りです」
「ふーん、今はメイドなのね。大変そうね」
「それなりには」
既にブリトニーはタバサへの恨みを晴らすことで頭の中がいっぱいになっていた。
ブリトニーにとってはタバサのせいでネヴィルとの婚約が遅くなってしまったという考えだ。
自分が浮気相手で奪ったことなんて考えておらず、当然自分が悪いことをしたとは考えていなかった。
ブリトニーの頭の中にあったのはタバサに屈辱を味わわせて自分たちの幸せな姿を見せつけてやることだった。
その一方で変わり者と呼ばれることもある。
しかしながら公爵家としての権力も財力も確かなものであり、貴族としては間違いなく実力者だった。
そのような公爵が主催するのだからパーティーも派手なものになっていた。
「すごいわね……」
「ああ……」
ブリトニーもネヴィルも華やかさに圧倒されていた。
二人とも貴族なのでパーティーには慣れている。
だがそれでもこれほどのパーティーを経験したことはなかった。
二人は飲み物を手に取り、会場を見渡した。
「いろいろな人たちがいるな」
「そうね。貴族だけでなく芸術関係の人も多いみたい。さすがヘミングス公爵主催ね」
「そうだな」
ネヴィルはそう言うと飲み物を口に含んだ。
「ネヴィル、わたしたちも誰かと話さないと。わたしたちの関係、教えてあげないとね」
「そうだな」
この際だから誰でもいいと、二人は手頃な人たちの会話に入った。
二人は婚約したことを伝え、社交辞令として祝福の言葉を受けた。
ネヴィルにしろブリトニーにしろ貴族としての力は弱く、積極的に交流を深めるべき相手ではなかった。
だがパーティーの参加者は多く、中には平民だって混ざっている。
平民からすれば貴族である二人に下手なことが言えるはずもなく、大げさに婚約を祝う言葉を贈った。
そのようなことを繰り返していたときのことだった。
「あれは……まさか……」
「どうしたの?」
ネヴィルの視線の先にいたメイドはタバサだった。
「タバサがメイドとして働いているようだ。そうか、そこまで落ちぶれてしまったのか……」
罪悪感はないが、そこまで酷い現状になっているとは思っておらず、ついネヴィルはつぶやいてしまった。
だがブリトニーからすれば彼がまだタバサに未練があるように感じられてしまった。
「ネヴィル、わたしたちの関係を教えてあげるのはどう?」
「……そうするか」
ブリトニーが不機嫌そうに言ったことで、ネヴィルは彼女の意見に従うことにした。
二人はタバサに近づくと、彼女もまた二人のことを見つけた。
「久しぶりだな、タバサ。こんなところで会うとは思わなかった」
「お久しぶりです、ネヴィル様」
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「あなたがタバサ? 私はブリトニー。ネヴィルの婚約者なの」
「そうでしたか。婚約、おめでとうございます」
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「見ての通りです」
「ふーん、今はメイドなのね。大変そうね」
「それなりには」
既にブリトニーはタバサへの恨みを晴らすことで頭の中がいっぱいになっていた。
ブリトニーにとってはタバサのせいでネヴィルとの婚約が遅くなってしまったという考えだ。
自分が浮気相手で奪ったことなんて考えておらず、当然自分が悪いことをしたとは考えていなかった。
ブリトニーの頭の中にあったのはタバサに屈辱を味わわせて自分たちの幸せな姿を見せつけてやることだった。
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