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タバサは父親の書斎の扉の前で足を止めた。
これから先のことを考えると改めて覚悟を決めなくては扉を開けそうになかった。
彼女は深呼吸をし、そっと扉をノックした。
「入りたまえ」
父の声が聞こえ、彼女は扉を開け書斎へと足を踏み入れた。
タバサは父親のいる机の前まで歩んだ。
すると父親が作業を中断し、彼女に視線を向けた。
「どうしたのだ?」
「お父様、大事なお話があります」
「わかった、聞こう」
タバサは意を決し、話し始める。
「ネヴィル様のことです。ネヴィル様が見知らぬ女性と浮気していました」
「間違いないのか?」
「はい、私が直接見ましたから」
「……そうか」
父親は重々しくため息をついた。
タバサが現場を目撃したのだから嘘ではないことは明らかだ。
まさかネヴィルがそのようなことをするとは考えていなかったため、どうしたものかと頭が痛くなる思いだった。
「それにずっと私には冷たい態度を取っていました。私を愛していないことは明らかです」
「それでタバサはどうしたいのだ?」
「婚約解消を望みます。もうネヴィル様のことは信用できません」
「そうだな、もっともだ。よろしい、婚約は解消する方向で話を進めよう」
父親が理解を示したことでタバサも安堵した。
そしてもう一歩踏み込んだことを相談する。
「ネヴィル様に慰謝料を請求したほうがいいのではありませんか?」
「本来ならそうすべきだ。だが今回はタバサが目撃したという証言だけであろう? ネヴィル殿が認めなければ不当に慰謝料を請求したと言い出すことも考えられる」
「そんな……」
本当にそのようなことをするのかとタバサは思ったが、もし万が一ネヴィルがそのようなことを言い出せば自分のほうが不利になると理解できた。
「ではどうすればいいのですか?」
「慰謝料を請求しない代わりに浮気を認めさせ婚約解消することだろうか。相手の有責にできるから慰謝料以上に相手に痛い目に遭わせられるかもしれないな。それにタバサに非がないと証明もできる。それが一番の理由だな」
「お父様……」
タバサは自分に非がないとは思っていたが、それを他人に対して証明することが頭から抜け落ちていた。
父親の指摘によりタバサは自分にとって何が大切なのか考え、自分の名誉が一番大切だと結論が出た。
「わかりました、慰謝料を請求しない代わりに浮気を認めさせましょう」
「いいだろう。ではそのための具体的な行動についてだが――」
こうして今後のことについて話し合いが始まった。
そして話し合いが終わった。
「これは家の名誉にも関わることだ。慎重に進めねばならん。だが何よりもタバサが大切だからな」
「お父様、本当にありがとうございます」
タバサは父親に心からの感謝の言葉を告げ、書斎を後にした。
これから先のことを考えると改めて覚悟を決めなくては扉を開けそうになかった。
彼女は深呼吸をし、そっと扉をノックした。
「入りたまえ」
父の声が聞こえ、彼女は扉を開け書斎へと足を踏み入れた。
タバサは父親のいる机の前まで歩んだ。
すると父親が作業を中断し、彼女に視線を向けた。
「どうしたのだ?」
「お父様、大事なお話があります」
「わかった、聞こう」
タバサは意を決し、話し始める。
「ネヴィル様のことです。ネヴィル様が見知らぬ女性と浮気していました」
「間違いないのか?」
「はい、私が直接見ましたから」
「……そうか」
父親は重々しくため息をついた。
タバサが現場を目撃したのだから嘘ではないことは明らかだ。
まさかネヴィルがそのようなことをするとは考えていなかったため、どうしたものかと頭が痛くなる思いだった。
「それにずっと私には冷たい態度を取っていました。私を愛していないことは明らかです」
「それでタバサはどうしたいのだ?」
「婚約解消を望みます。もうネヴィル様のことは信用できません」
「そうだな、もっともだ。よろしい、婚約は解消する方向で話を進めよう」
父親が理解を示したことでタバサも安堵した。
そしてもう一歩踏み込んだことを相談する。
「ネヴィル様に慰謝料を請求したほうがいいのではありませんか?」
「本来ならそうすべきだ。だが今回はタバサが目撃したという証言だけであろう? ネヴィル殿が認めなければ不当に慰謝料を請求したと言い出すことも考えられる」
「そんな……」
本当にそのようなことをするのかとタバサは思ったが、もし万が一ネヴィルがそのようなことを言い出せば自分のほうが不利になると理解できた。
「ではどうすればいいのですか?」
「慰謝料を請求しない代わりに浮気を認めさせ婚約解消することだろうか。相手の有責にできるから慰謝料以上に相手に痛い目に遭わせられるかもしれないな。それにタバサに非がないと証明もできる。それが一番の理由だな」
「お父様……」
タバサは自分に非がないとは思っていたが、それを他人に対して証明することが頭から抜け落ちていた。
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「わかりました、慰謝料を請求しない代わりに浮気を認めさせましょう」
「いいだろう。ではそのための具体的な行動についてだが――」
こうして今後のことについて話し合いが始まった。
そして話し合いが終わった。
「これは家の名誉にも関わることだ。慎重に進めねばならん。だが何よりもタバサが大切だからな」
「お父様、本当にありがとうございます」
タバサは父親に心からの感謝の言葉を告げ、書斎を後にした。
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