【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました

紫崎 藍華

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2話

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このような状況で真実を確認しないわけにはいかない。
タバサは静かに扉を開け、隙間から中の様子を窺う。

そこには間違いなくネヴィルがいた。
それと見知らぬ女性も。
二人がベッドの上で裸で交わっていた。

タバサはそのまま扉を閉めた。
あまりの出来事に信じられなかった。

二人は行為に夢中でタバサの存在に気付いていなかった。

「そうだったのね……」

タバサは察してしまった。
ネヴィルの態度が冷たい理由も、使用人が通さないようにしていた理由も。

このまま問い質すことも考えたが、あのような行為をしている二人の前に出ることが嫌だった。
彼女はこの場から去ることを選択した。



帰宅したタバサは自室のベッドに横たわった。

頭に浮かぶのはネヴィルと見知らぬ女性。
二人は行為に夢中であり、タバサの存在に気付かなかった。
だが、もしネヴィルが気付いていたらどうだろうか?

気づいたらそれで酷いことを言われたかもしれない。
むしろ気付かれなくて良かったのではないかとタバサは考えた。

そんなことを考えていると、自然と涙が零れてきた。
ネヴィルは自分を愛していないことが理解できてしまった。
そのことが悲しくて仕方がなかった。

婚約が決まったときはあれだけ幸せだったはずなのに、今はこんなにも苦しんでいる。
ネヴィルの誓いは嘘だった。
冷たい態度を取るようになったのも、結婚式の打ち合わせにも乗り気でないのも、全部浮気が原因だった。

「全部夢だったら良かったのに……」

受け入れがたい現実を前に、無駄だと理解しつつタバサはつぶやいた。
つぶやきは虚しく部屋に響く。

「こうなったら婚約を解消するしかないわよね……」

婚約の解消は容易ではないが、今回はネヴィルに明らかな非があるため難しくはない。
タバサに唯一救われることがあるとすれば、婚約解消が容易ということだけだ。

「でも……」

まだ心のどこかでネヴィルを信じたい気持ちが彼女には残っていた。
あれだけ酷い裏切りを目の当たりにしたというのに、それでもあの日誓ってくれた言葉が決断を鈍らせていた。

タバサが考えるべきことは多く、悩もうが答えは出ない。

考えつかれた彼女は、いつしか眠りについていた。
眠っている時だけは嫌な現実を忘れることができる。



目を覚ましたタバサは婚約を解消すると決めた。
そうするならば、まずは親を説得しなくてはならない。

「迷っていても解決しないわ。私がしっかりしないと。もう終わってしまったのよ、私たちは」

自分に言い聞かせるように彼女は言った。
彼女の目には強い光が宿っていた。
もう決めたのだ。
ネヴィルとの婚約関係を終わらせると。

タバサは父親に相談すべく、彼のいるであろう書斎へと向かった。
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