上 下
6 / 8

6話

しおりを挟む
コービーとリザの結婚は二人が両親の事故死を乗り越えるための希望となった。
しかし両親の葬儀から間もないのに結婚するのは憚られ、今は結婚に向けて準備をすることで二人は納得していた。
こうして結婚に向けて準備する日常が始まった。

その日常を打ち砕いた訪問者たちがいた。

ある日の午後、屋敷の門前に騎士団が現れた。
彼らは厳格な表情で屋敷の中へと足を踏み入れた。
使用人が慌ててリザに知らせに走った。

「お嬢様、騎士団が来られました。お嬢様とコービー様にお話があるとのことです」
「騎士団だと?! どうして急に?!」
「もしかしたら事故死に関係しているのかも……」

リザの意見は妥当だった。
そうでもなければ調べにやってくるはずがないのだから。

コービーとリザは玄関ホールへ急いだ。



玄関ホールには騎士が数名いて、二人の姿を確認しリーダーが前に進み出てた。
その視線の先にはコービーがいた。

「コービー、お前を事故を仕組んだ容疑者として身柄を拘束する」
「何の証拠があってそんなことを?」
「誰の利益になったのか考えれば容疑者として考えられる。調べて無実であれば釈放する。自由にすると証拠隠滅の可能性もあるから身柄は拘束させてもらう」
「そんな! 横暴だ!」

騎士は困った表情になった。
リザの前で、できれば言いたくなかったことを言うことを決断させた。

「……コービー、お前は財産の名義を変えていたな?」
「っ……!」

コービーはリザにも秘密で財産の名義を変えていたのだ。
万が一にもリザと結婚できなかった場合に備えてのことで、無事に結婚できればリザをどうとでも言いくるめられると考えていた結果だ。

「コービー、それは本当なの? 当家の財産を勝手に移していたの?」
「違う、誤解だ。僕は何もしていない」
「それならどうして騎士団が来たの? 怪しいからでしょ? コービー、どうして……お父さまとお母さまを殺したの? あんなに良くしてくれたじゃない!」
「違うんだ! そんなことしていない! 俺は無実だ!」

リザの問いかけにコービーは全力で否定した。
だがもうリザはコービーを信じられなくなっていた。

「詳しくは詰所で聞かせてもらおう。連れていけ」
「はっ」

騎士がコービーの手に手錠をかけた。
コービーは絶望的な表情でリザに救いを求めるよう見つめたが、返ってきたのは冷たい目だった。

「コービー、あなたを信じていたのに……」

リザは涙を流しながら呟いた。

コービーは連行されながらも、リザに向かって叫ぶ。

「君を愛している。これは全て誤解だ。信じてくれ」

その声はリザの心には届かなかった。



数週間後、騎士団の調査が進み、コービーの財産移動の証拠が次々と明らかになった。
リザは心の中でコービーへの不信感が募り、両親の死も彼の陰謀だと確信するようになった。

「コービーがわたしたち家族を裏切ったのなら、彼には相応の罰を受けさせてください」

リザは騎士団に対して厳罰を求める意志を明確に伝えたことで騎士団もコービーを有罪にした。
事故死の直接の証拠がなかろうが財産を移動していたことで、発覚を恐れて殺害したのだろうと結論付けられた。

コービーは全ての財産を没収され、厳しい罰を受けることとなった。

コービーの罪が確定し、リザは心に穴が空いたように感じた。

「わたしは一人になったのね……」

家から追い出したサンドラの消息は不明だ。
仮に消息を掴めたとしても今さら関係改善は望めない。

「お父さま……お母さま……」

リザは一人で生きることになった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

役立たずの私はいなくなります。どうぞお幸せに

Na20
恋愛
夫にも息子にも義母にも役立たずと言われる私。 それなら私はいなくなってもいいですよね? どうぞみなさんお幸せに。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)

青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。 だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。 けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。 「なぜですか?」 「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」 イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの? これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない) 因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。

女性として見れない私は、もう不要な様です〜俺の事は忘れて幸せになって欲しい。と言われたのでそうする事にした結果〜

流雲青人
恋愛
子爵令嬢のプレセアは目の前に広がる光景に静かに涙を零した。 偶然にも居合わせてしまったのだ。 学園の裏庭で、婚約者がプレセアの友人へと告白している場面に。 そして後日、婚約者に呼び出され告げられた。 「君を女性として見ることが出来ない」 幼馴染であり、共に過ごして来た時間はとても長い。 その中でどうやら彼はプレセアを友人以上として見れなくなってしまったらしい。 「俺の事は忘れて幸せになって欲しい。君は幸せになるべき人だから」 大切な二人だからこそ、清く身を引いて、大好きな人と友人の恋を応援したい。 そう思っている筈なのに、恋心がその気持ちを邪魔してきて...。 ※ ゆるふわ設定です。 完結しました。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

私のことを愛していなかった貴方へ

矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。 でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。 でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。 だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。 夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。 *設定はゆるいです。

完結 婚約破棄は都合が良すぎる戯言

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子の心が離れたと気づいたのはいつだったか。 婚姻直前にも拘わらず、すっかり冷えた関係。いまでは王太子は堂々と愛人を侍らせていた。 愛人を側妃として置きたいと切望する、だがそれは継承権に抵触する事だと王に叱責され叶わない。 絶望した彼は「いっそのこと市井に下ってしまおうか」と思い悩む……

処理中です...