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5話
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サンドラを追い出した満足感、貶す相手を失った喪失感。
それよりもコービーを独占でき将来が安泰になった満足感。
リザにとって幸せな日々が始まった。
ある日の午後、二人は庭でアフタヌーンティーを楽しんでいた。
「コービー、お姉さまがいなくなってから本当に平和な日々を過ごせるようになったわ」
「そうだね。諦めが悪くて大変だったけど、今はこうして幸せになれて良かったよ」
二人は協力してサンドラを排除した当時の苦労を思い返したが、それがあったから今の幸せがある。
協力して成し遂げたことで絆も深まり、二人は微笑み合った。
「お姉さまがあんなに察しが悪いなんて思わなかったわ。コービーの気なんて明らかだったし、もっと早く諦めれば良かったのに」
「それがサンドラなりのリザへの仕返しだったんじゃないのか?」
「そうかもね。そんなことくらいしかできないだろうし」
「でももうサンドラはいない。もう僕たちを邪魔する人はいない。これからもずっと一緒にいよう」
「ええ」
コービーはリザの手を取り告げた。
真剣な表情で言われ、リザも満更ではなかった。
プロポーズのようにも思えなくもないが、まだ両親は二人の結婚を認めていない。
リザを溺愛するばかりに手放したくないと考え、できるだけ結婚を遅らせようとしていた。
そのような両親にリザは不満を覚えつつも、コービーに説得され我慢した。
コービーは焦って両親の心証を悪くするほうを恐れていた。
焦らずともリザと結婚できるのだから両親との関係を円満にしたほうがいいという考えもあった。
「それで――」
次の話題に移ろうとした時、使用人が急ぎ足で庭に現れた。
彼の顔には明らかに緊張の色が浮かんでいた。
「お嬢様、急ぎお知らせがあります」
「何があったの?」
使用人は深く息を吸い込み、言葉を絞り出すようにして答えた。
「ご主人様と奥様が馬車の事故に遭われ、亡くなられました」
リザはショックのあまり言葉を失い、涙が頬を伝った。
コービーはリザを抱きしめた。
「大丈夫だ、僕がついている。君は一人じゃない」
「どうしてこんなことに……。お父さま、お母さま……」
リザはコービーの胸に顔を埋め涙を流した。
コービーは彼女の背中を優しく撫でながら言った。
「辛いだろうけど、僕がいる。一緒に乗り越えていこう」
「うん……」
数日後、両親の葬儀が行われ、リザは最後の別れを告げた。
その夜、コービーはリザの手を取り、真剣な表情で言った。
「僕はリザとずっと一緒にいることを誓う。結婚しよう。僕と一緒に新しい家族を作ろう」
「うん……。ずっと一緒にいてね? 約束よ?」
「もちろんだとも」
リザは涙を拭い笑顔を見せた。
コービーはリザを抱きしめた。
リザの両親の死はコービーにとって想定外の出来事だったが、リザが結婚を了承したのだから今後は自分が家を取り仕切れると考えた。
いつかはそうなると信じていたが、いざ現実味を帯びてくると苦労した甲斐があったと思えた。
コービーも笑っていた。
自分にとって都合の良い事態が転がり込んできたことに、込み上げてくる喜びを隠し切れなかった。
それよりもコービーを独占でき将来が安泰になった満足感。
リザにとって幸せな日々が始まった。
ある日の午後、二人は庭でアフタヌーンティーを楽しんでいた。
「コービー、お姉さまがいなくなってから本当に平和な日々を過ごせるようになったわ」
「そうだね。諦めが悪くて大変だったけど、今はこうして幸せになれて良かったよ」
二人は協力してサンドラを排除した当時の苦労を思い返したが、それがあったから今の幸せがある。
協力して成し遂げたことで絆も深まり、二人は微笑み合った。
「お姉さまがあんなに察しが悪いなんて思わなかったわ。コービーの気なんて明らかだったし、もっと早く諦めれば良かったのに」
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「そうかもね。そんなことくらいしかできないだろうし」
「でももうサンドラはいない。もう僕たちを邪魔する人はいない。これからもずっと一緒にいよう」
「ええ」
コービーはリザの手を取り告げた。
真剣な表情で言われ、リザも満更ではなかった。
プロポーズのようにも思えなくもないが、まだ両親は二人の結婚を認めていない。
リザを溺愛するばかりに手放したくないと考え、できるだけ結婚を遅らせようとしていた。
そのような両親にリザは不満を覚えつつも、コービーに説得され我慢した。
コービーは焦って両親の心証を悪くするほうを恐れていた。
焦らずともリザと結婚できるのだから両親との関係を円満にしたほうがいいという考えもあった。
「それで――」
次の話題に移ろうとした時、使用人が急ぎ足で庭に現れた。
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「お嬢様、急ぎお知らせがあります」
「何があったの?」
使用人は深く息を吸い込み、言葉を絞り出すようにして答えた。
「ご主人様と奥様が馬車の事故に遭われ、亡くなられました」
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コービーはリザを抱きしめた。
「大丈夫だ、僕がついている。君は一人じゃない」
「どうしてこんなことに……。お父さま、お母さま……」
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コービーは彼女の背中を優しく撫でながら言った。
「辛いだろうけど、僕がいる。一緒に乗り越えていこう」
「うん……」
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「僕はリザとずっと一緒にいることを誓う。結婚しよう。僕と一緒に新しい家族を作ろう」
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「もちろんだとも」
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コービーはリザを抱きしめた。
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いつかはそうなると信じていたが、いざ現実味を帯びてくると苦労した甲斐があったと思えた。
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