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4話
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コービーはサンドラとの婚約を解消し、新たにリザと婚約した。
そうすると事前に聞かされていたとはいえサンドラの胸に痛みが走った。
「ねえ、コービー。このドレス、どう思う? お姉さまには似合わないけど、私には似合っていると思わない?」
「ああ、確かに。君にはとても似合うよ。リザは本当に美しいな。惚れ直してしまうよ」
リザはコービーと婚約者らしく親しくする姿をサンドラに見せつけ、同時にサンドラのことを貶した。
それはまるでサンドラを苦しめるために、わざとそうしているようにサンドラは感じた。
いくらコービーがリザに仕返しするためとはいえ、このような二人を見せつけられるのはサンドラにとって耐えがたい苦痛だった。
彼女の胸中はコービーへの不信感が募っていった。
彼の本心を知れば安心できるのかもしれないが、不用意に接触すれば全てが台無しになってしまう。
せっかくコービーが提案してくれたことなのに自分のせいで失敗してしまうのは心苦しく、サンドラは耐えることしかできなかった。
両親もコービーのことを歓迎し、彼のことを好意的に受け入れていた。
ある日の夕食での出来事。
コービーも当然のように一緒になって食事を取っていた。
その場でコービーが告げた。
「リザと婚約できて本当に幸せです。彼女と一緒に幸せな未来を築くことが楽しみです」
「コービー君、君が家族の一員になることを本当に楽しみにしてるよ。リザもとても幸せそうだ。二人が婚約して良かったと思う」
「ええ、本当に。良かったわね、リザ」
「はい! コービーさんが婚約者で嬉しいです! わたしを選んでくれてありがとう」
サンドラ以外は楽しそうに笑っていた。
サンドラは笑えるはずがなかったが、リザが追い討ちをかける。
「お姉さまも私たちを祝福してくれるわよね?」
リザは笑みを浮かべ挑発的に言った。
ハンナはその言葉に耐えられず席を立った。
彼女は自分の部屋に駆け込み、ベッドに倒れ込んで泣いた。
心の中では、コービーが本当にリザ妹を裏切るのか、それとも彼の言動は実は全て本物で自分が騙されたのではないかと疑念が渦巻いていた。
翌日、サンドラはコービーに本当にリザを裏切るつもりなのか問い詰めることを決意した。
サンドラはコービーを呼び出し、二人きりで話をする機会を作った。
「コービー、計画はどうなっているの? 本当にリザを裏切るつもりなの?」
「そうか、そうだよな。心配させてすまなかった」
コービーの言葉に計画を忘れていなかったのだと理解しサンドラの心に希望が生じた。
だが次の瞬間、コービーは冷ややかな表情でサンドラを見つめ告げた。
「僕はリザとの婚約を破棄するつもりはない。サンドラ、君はもう邪魔になったんだ。悲しい思いをしたくないなら家から出て行くことをお勧めする」
サンドラはコービーに裏切られたことを理解した。
こうなってしまっては何を言っても無駄だと理解し、何も訊かず責めもせず、事態を受け入れた。
サンドラには家の中に居場所はなく、最後の希望だった婚約者にも裏切られた。
彼女は家を出ていくことしか選択肢が残されていなかった。
サンドラはその日のうちに最低限の身の回りの物だけを持ち出し、姿を消した。
リザの意思により両親はサンドラを探そうともしなかった。
そうすると事前に聞かされていたとはいえサンドラの胸に痛みが走った。
「ねえ、コービー。このドレス、どう思う? お姉さまには似合わないけど、私には似合っていると思わない?」
「ああ、確かに。君にはとても似合うよ。リザは本当に美しいな。惚れ直してしまうよ」
リザはコービーと婚約者らしく親しくする姿をサンドラに見せつけ、同時にサンドラのことを貶した。
それはまるでサンドラを苦しめるために、わざとそうしているようにサンドラは感じた。
いくらコービーがリザに仕返しするためとはいえ、このような二人を見せつけられるのはサンドラにとって耐えがたい苦痛だった。
彼女の胸中はコービーへの不信感が募っていった。
彼の本心を知れば安心できるのかもしれないが、不用意に接触すれば全てが台無しになってしまう。
せっかくコービーが提案してくれたことなのに自分のせいで失敗してしまうのは心苦しく、サンドラは耐えることしかできなかった。
両親もコービーのことを歓迎し、彼のことを好意的に受け入れていた。
ある日の夕食での出来事。
コービーも当然のように一緒になって食事を取っていた。
その場でコービーが告げた。
「リザと婚約できて本当に幸せです。彼女と一緒に幸せな未来を築くことが楽しみです」
「コービー君、君が家族の一員になることを本当に楽しみにしてるよ。リザもとても幸せそうだ。二人が婚約して良かったと思う」
「ええ、本当に。良かったわね、リザ」
「はい! コービーさんが婚約者で嬉しいです! わたしを選んでくれてありがとう」
サンドラ以外は楽しそうに笑っていた。
サンドラは笑えるはずがなかったが、リザが追い討ちをかける。
「お姉さまも私たちを祝福してくれるわよね?」
リザは笑みを浮かべ挑発的に言った。
ハンナはその言葉に耐えられず席を立った。
彼女は自分の部屋に駆け込み、ベッドに倒れ込んで泣いた。
心の中では、コービーが本当にリザ妹を裏切るのか、それとも彼の言動は実は全て本物で自分が騙されたのではないかと疑念が渦巻いていた。
翌日、サンドラはコービーに本当にリザを裏切るつもりなのか問い詰めることを決意した。
サンドラはコービーを呼び出し、二人きりで話をする機会を作った。
「コービー、計画はどうなっているの? 本当にリザを裏切るつもりなの?」
「そうか、そうだよな。心配させてすまなかった」
コービーの言葉に計画を忘れていなかったのだと理解しサンドラの心に希望が生じた。
だが次の瞬間、コービーは冷ややかな表情でサンドラを見つめ告げた。
「僕はリザとの婚約を破棄するつもりはない。サンドラ、君はもう邪魔になったんだ。悲しい思いをしたくないなら家から出て行くことをお勧めする」
サンドラはコービーに裏切られたことを理解した。
こうなってしまっては何を言っても無駄だと理解し、何も訊かず責めもせず、事態を受け入れた。
サンドラには家の中に居場所はなく、最後の希望だった婚約者にも裏切られた。
彼女は家を出ていくことしか選択肢が残されていなかった。
サンドラはその日のうちに最低限の身の回りの物だけを持ち出し、姿を消した。
リザの意思により両親はサンドラを探そうともしなかった。
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