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いざ相談しようと考えると両親はリザの味方をするのではないかという不安がよぎった。
今までの両親の反応を考えれば当然のことだ。
だが相談しないわけにもいかず、サンドラは不安を通り越して絶望を感じながら両親に相談することを決心した。
相談したところで自分が望むような結果は得られないだろうと自覚しつつ。
「お父さま、お母さま、お話ししたいことがあります」
「どうかしたのかね?」
震える声で切り出したサンドラに父親は心配するような様子もなく、ただ尋ねた。
拒絶されなかっただけでも良かったとサンドラは思い、父親が親身になってくれるのではないかと少しだけ希望を抱いてしまった。
「実はリザのことでとても困っています。リザがコービーさんに興味を持っているようで、婚約者を譲るよう言ってきました」
「ふむ……」
父親は考え込んだが、そこに割って入ったのが母親だった。
「サンドラ、リザはまだ若いのよ。彼女の気持ちを優先してあげるべきじゃないかしら」
サンドラは絶句した。
若さを理由にするなら行き遅れと呼ばれる年齢に差し掛かったサンドラを優先すべきだ。
それがリザを優先しろというのだから、理由は何でもよく、結局はリザの望むままに両親はサンドラを犠牲にするのだと理解した。
だがサンドラもここで諦めるわけにはいかない。
無駄だとわかっていても言わずにはいられない。
情に訴えたところで意味はないかもしれないが、コービーとの未来のためにも言わずに諦めるわけにはいかなかった。
「お母様、私はコービーさんを愛しています。どうしてリザの気持ちばかりを優先するのですか?」
「サンドラ、家族の和を乱すようなことを言うな。お前は姉なのだから、リザのために譲るべきだろう」
父親は厳しい口調と表情で告げた。
それは決定事項だった。
サンドラは心が砕けるような思いに駆られ、涙が頬を伝った。
「どうして私の気持ちはいつも無視されるのですか? 私は家族ではないのですか?」
「サンドラ、あなたは強い子よ。リザのために少し我慢してくれないかしら。お姉ちゃんでしょう?」
いつかと同じ、サンドラに絶望を告げる言葉だった。
「……わかりました」
サンドラは告げ、その場から去った。
わかったのは婚約者を譲ることではない。
親も味方ではないということを理解したのだ。
自室に戻ったサンドラは涙が止まらなかった。
両親に相談することで何かが変わることを期待していたが、その期待は無残にも裏切られた。
今までの仕打ちを思い返せば自分の居場所はここではないと強く思えた。
頼れる人がいるとすれば婚約者のコービーしかいない。
コービーに相談することは確定として、家を出ることも考えたほうがいいかもしれない。
サンドラはコービーの存在と家を出ることに希望を見出した。
「相談しないと。コービーはきっと私を助けてくれるわ」
そう呟いただけで勇気が湧いてくるように思えた。
サンドラはコービーの存在が自分にとってどれだけ大きいかを改めて実感した。
それはコービーへの愛を実感することでもあった。
今までの両親の反応を考えれば当然のことだ。
だが相談しないわけにもいかず、サンドラは不安を通り越して絶望を感じながら両親に相談することを決心した。
相談したところで自分が望むような結果は得られないだろうと自覚しつつ。
「お父さま、お母さま、お話ししたいことがあります」
「どうかしたのかね?」
震える声で切り出したサンドラに父親は心配するような様子もなく、ただ尋ねた。
拒絶されなかっただけでも良かったとサンドラは思い、父親が親身になってくれるのではないかと少しだけ希望を抱いてしまった。
「実はリザのことでとても困っています。リザがコービーさんに興味を持っているようで、婚約者を譲るよう言ってきました」
「ふむ……」
父親は考え込んだが、そこに割って入ったのが母親だった。
「サンドラ、リザはまだ若いのよ。彼女の気持ちを優先してあげるべきじゃないかしら」
サンドラは絶句した。
若さを理由にするなら行き遅れと呼ばれる年齢に差し掛かったサンドラを優先すべきだ。
それがリザを優先しろというのだから、理由は何でもよく、結局はリザの望むままに両親はサンドラを犠牲にするのだと理解した。
だがサンドラもここで諦めるわけにはいかない。
無駄だとわかっていても言わずにはいられない。
情に訴えたところで意味はないかもしれないが、コービーとの未来のためにも言わずに諦めるわけにはいかなかった。
「お母様、私はコービーさんを愛しています。どうしてリザの気持ちばかりを優先するのですか?」
「サンドラ、家族の和を乱すようなことを言うな。お前は姉なのだから、リザのために譲るべきだろう」
父親は厳しい口調と表情で告げた。
それは決定事項だった。
サンドラは心が砕けるような思いに駆られ、涙が頬を伝った。
「どうして私の気持ちはいつも無視されるのですか? 私は家族ではないのですか?」
「サンドラ、あなたは強い子よ。リザのために少し我慢してくれないかしら。お姉ちゃんでしょう?」
いつかと同じ、サンドラに絶望を告げる言葉だった。
「……わかりました」
サンドラは告げ、その場から去った。
わかったのは婚約者を譲ることではない。
親も味方ではないということを理解したのだ。
自室に戻ったサンドラは涙が止まらなかった。
両親に相談することで何かが変わることを期待していたが、その期待は無残にも裏切られた。
今までの仕打ちを思い返せば自分の居場所はここではないと強く思えた。
頼れる人がいるとすれば婚約者のコービーしかいない。
コービーに相談することは確定として、家を出ることも考えたほうがいいかもしれない。
サンドラはコービーの存在と家を出ることに希望を見出した。
「相談しないと。コービーはきっと私を助けてくれるわ」
そう呟いただけで勇気が湧いてくるように思えた。
サンドラはコービーの存在が自分にとってどれだけ大きいかを改めて実感した。
それはコービーへの愛を実感することでもあった。
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