7 / 8
7話
しおりを挟む
ドワイトはキャロンを前に緊張していた。
「どうしたの? いつもとは雰囲気が違うみたいだけど?」
「実はブリジットと離婚が成立したんだ。それを伝えたかったんだ」
「そうだったの?! もう私と婚約できるのよね?!」
「ああ、もちろんだとも。だから俺と婚約してくれないか?」
「もちろんよ! 喜んで受けるわ!」
「ありがとう、キャロン。愛してるよ」
「私もよ、ドワイト」
二人の気持ちは燃え上がり、キスを何度も繰り返した。
ドワイトはこれこそが本物の愛だと思い、政略結婚なんてくだらないと考えた。
「俺の両親に報告へ行こう。婚約とはいえ喜んでくれるさ」
「そうね、早いうちに挨拶をしないと」
こうして両親に挨拶することも決まった。
そしてドワイトの両親に挨拶をしに行ったのだが、思いがけないことを知ることとなった。
「父上、紹介したい女性がいるのですが……」
「今はそれどころではない! ドワイト! お前は何も知らないのか?!」
父親はキャロンの存在を無視した。
今はそれどころではないのだ。
だが言われようがドワイトには心当たりがなかった。
「何があったのです?」
「ファインズ商会がトマス商会への優遇をやめたんだ。しかも別件でトマス商会が多額の負債を抱えそうだ。このままでは倒産する!」
「そんなことが……。ですがファインズ商会がどうしてそのようなことを?」
「分からん。お前がブリジットに何かしたのではないか?」
ドワイトには心当たりがあり過ぎた。
ファインズ商会はブリジットの実家が出資している商会だ。
政略結婚はお互いの家が出資している商会を介した利益を期待してのものだった。
だが実際にはファインズ商会からトマス商会に一方的な負担を強いるものだった。
それでも政略結婚だったから仕方なく優遇措置が続けられていたのだ。
離婚した今となれば優遇されなくなって当然だった。
ドワイトは嫌な汗が流れた。
「父上、実は……ブリジットと離婚しました」
ドワイトは勇気を振り絞って告白した。
「大馬鹿者が! 全て納得できたぞ! お前が、お前が全ての元凶だったのか! このままでは当家も危ういぞ!」
「申し訳ありません! ですがこれは仕方のないことだったのです。俺はキャロンに本物の愛を見つけたのです。紹介します、キャロンです」
「は、初めまして……。キャロンと申します」
キャロンは激怒した父親に委縮していた。
「そうか、キャロン、お前がドワイトの浮気相手なのだな?」
「違います、父上。彼女は俺が見出した本物の愛の相手です」
「本物の愛だ? そんなものどうでもいい。ドワイト、お前は政略結婚が何なのか理解していなかったようだな。このままでは当家は破産するかもしれん。どう責任を取ってくれるんだ?」
「それは……」
ドワイトには名案が思い付かなかった。
父親はその姿を見て深いため息をついた。
「こうなってしまったからには仕方ないな。後はなるようになるか……」
父親はもういいとばかりにドワイトに手を振った。
もう出ていけという意図だと解釈したドワイトはこのまま帰ることにした。
キャロンとの婚約を認めてもらうどころの話ではない。
親にキャロンを紹介し婚約を認めてもらう狙いは失敗に終わった。
「わたしたち、どうなるの?」
キャロンは心配そうにドワイトに尋ねた。
「父上が落ち着かなくてはどうにもならないな」
「でも実家も大変でしょう? 商会も危ういのでしょう? 大丈夫なの?」
「大丈夫だ、俺を信じろ。俺がキャロンの愛を信じているように俺を信じてくれ」
「うん、分かったわ」
キャロンはドワイトの根拠のない説得により目が覚めた。
今までは愛によって判断力が失われていたが、冷静な判断力を取り戻した今、ドワイトが破滅目前だと理解できた。
このままではキャロン自身も彼と一緒に破滅してしまう。
そのことを予想できた彼女はドワイトの前から姿を消すことを決断した。
「いつか無事に問題が解決するといいわね」
「そうだな。それまで待っていてくれ、キャロン」
「もちろんよ」
そしてキャロンは失踪した。
そのことに気付いたドワイトは絶望した。
「どうしたの? いつもとは雰囲気が違うみたいだけど?」
「実はブリジットと離婚が成立したんだ。それを伝えたかったんだ」
「そうだったの?! もう私と婚約できるのよね?!」
「ああ、もちろんだとも。だから俺と婚約してくれないか?」
「もちろんよ! 喜んで受けるわ!」
「ありがとう、キャロン。愛してるよ」
「私もよ、ドワイト」
二人の気持ちは燃え上がり、キスを何度も繰り返した。
ドワイトはこれこそが本物の愛だと思い、政略結婚なんてくだらないと考えた。
「俺の両親に報告へ行こう。婚約とはいえ喜んでくれるさ」
「そうね、早いうちに挨拶をしないと」
こうして両親に挨拶することも決まった。
そしてドワイトの両親に挨拶をしに行ったのだが、思いがけないことを知ることとなった。
「父上、紹介したい女性がいるのですが……」
「今はそれどころではない! ドワイト! お前は何も知らないのか?!」
父親はキャロンの存在を無視した。
今はそれどころではないのだ。
だが言われようがドワイトには心当たりがなかった。
「何があったのです?」
「ファインズ商会がトマス商会への優遇をやめたんだ。しかも別件でトマス商会が多額の負債を抱えそうだ。このままでは倒産する!」
「そんなことが……。ですがファインズ商会がどうしてそのようなことを?」
「分からん。お前がブリジットに何かしたのではないか?」
ドワイトには心当たりがあり過ぎた。
ファインズ商会はブリジットの実家が出資している商会だ。
政略結婚はお互いの家が出資している商会を介した利益を期待してのものだった。
だが実際にはファインズ商会からトマス商会に一方的な負担を強いるものだった。
それでも政略結婚だったから仕方なく優遇措置が続けられていたのだ。
離婚した今となれば優遇されなくなって当然だった。
ドワイトは嫌な汗が流れた。
「父上、実は……ブリジットと離婚しました」
ドワイトは勇気を振り絞って告白した。
「大馬鹿者が! 全て納得できたぞ! お前が、お前が全ての元凶だったのか! このままでは当家も危ういぞ!」
「申し訳ありません! ですがこれは仕方のないことだったのです。俺はキャロンに本物の愛を見つけたのです。紹介します、キャロンです」
「は、初めまして……。キャロンと申します」
キャロンは激怒した父親に委縮していた。
「そうか、キャロン、お前がドワイトの浮気相手なのだな?」
「違います、父上。彼女は俺が見出した本物の愛の相手です」
「本物の愛だ? そんなものどうでもいい。ドワイト、お前は政略結婚が何なのか理解していなかったようだな。このままでは当家は破産するかもしれん。どう責任を取ってくれるんだ?」
「それは……」
ドワイトには名案が思い付かなかった。
父親はその姿を見て深いため息をついた。
「こうなってしまったからには仕方ないな。後はなるようになるか……」
父親はもういいとばかりにドワイトに手を振った。
もう出ていけという意図だと解釈したドワイトはこのまま帰ることにした。
キャロンとの婚約を認めてもらうどころの話ではない。
親にキャロンを紹介し婚約を認めてもらう狙いは失敗に終わった。
「わたしたち、どうなるの?」
キャロンは心配そうにドワイトに尋ねた。
「父上が落ち着かなくてはどうにもならないな」
「でも実家も大変でしょう? 商会も危ういのでしょう? 大丈夫なの?」
「大丈夫だ、俺を信じろ。俺がキャロンの愛を信じているように俺を信じてくれ」
「うん、分かったわ」
キャロンはドワイトの根拠のない説得により目が覚めた。
今までは愛によって判断力が失われていたが、冷静な判断力を取り戻した今、ドワイトが破滅目前だと理解できた。
このままではキャロン自身も彼と一緒に破滅してしまう。
そのことを予想できた彼女はドワイトの前から姿を消すことを決断した。
「いつか無事に問題が解決するといいわね」
「そうだな。それまで待っていてくれ、キャロン」
「もちろんよ」
そしてキャロンは失踪した。
そのことに気付いたドワイトは絶望した。
238
お気に入りに追加
190
あなたにおすすめの小説


私の療養中に、婚約者と幼馴染が駆け落ちしました──。
Nao*
恋愛
素適な婚約者と近く結婚する私を病魔が襲った。
彼の為にも早く元気になろうと療養する私だったが、一通の手紙を残し彼と私の幼馴染が揃って姿を消してしまう。
どうやら私、彼と幼馴染に裏切られて居たようです──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。最終回の一部、改正してあります。)

婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました
Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。
月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。
ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。
けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。
ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。
愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。
オスカー様の幸せが私の幸せですもの。
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

夫のかつての婚約者が現れて、離縁を求めて来ました──。
Nao*
恋愛
結婚し一年が経った頃……私、エリザベスの元を一人の女性が訪ねて来る。
彼女は夫ダミアンの元婚約者で、ミラージュと名乗った。
そして彼女は戸惑う私に対し、夫と別れるよう要求する。
この事を夫に話せば、彼女とはもう終わって居る……俺の妻はこの先もお前だけだと言ってくれるが、私の心は大きく乱れたままだった。
その後、この件で自身の身を案じた私は護衛を付ける事にするが……これによって夫と彼女、それぞれの思いを知る事となり──?
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります)

もう、愛はいりませんから
さくたろう
恋愛
ローザリア王国公爵令嬢ルクレティア・フォルセティに、ある日突然、未来の記憶が蘇った。
王子リーヴァイの愛する人を殺害しようとした罪により投獄され、兄に差し出された毒を煽り死んだ記憶だ。それが未来の出来事だと確信したルクレティアは、そんな未来に怯えるが、その記憶のおかしさに気がつき、謎を探ることにする。そうしてやがて、ある人のひたむきな愛を知ることになる。

婚約破棄のお返しはお礼の手紙で
ルー
恋愛
十五歳の時から婚約していた婚約者の隣国の王子パトリクスに謂れのない罪で突然婚約破棄されてしまったレイナ(侯爵令嬢)は後日国に戻った後パトリクスにあててえ手紙を書く。
その手紙を読んだ王子は酷く後悔することになる。

不憫な妹が可哀想だからと婚約破棄されましたが、私のことは可哀想だと思われなかったのですか?
木山楽斗
恋愛
子爵令嬢であるイルリアは、婚約者から婚約破棄された。
彼は、イルリアの妹が婚約破棄されたことに対してひどく心を痛めており、そんな彼女を救いたいと言っているのだ。
混乱するイルリアだったが、婚約者は妹と仲良くしている。
そんな二人に押し切られて、イルリアは引き下がらざるを得なかった。
当然イルリアは、婚約者と妹に対して腹を立てていた。
そんな彼女に声をかけてきたのは、公爵令息であるマグナードだった。
彼の助力を得ながら、イルリアは婚約者と妹に対する抗議を始めるのだった。
※誤字脱字などの報告、本当にありがとうございます。いつも助かっています。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる