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6話
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トマス商会を倒産に追い込む準備が整った。
既に指示は出したので、後はファインズ商会任せだ。
ブリジットは自分がすべきことをする。
「ドワイト様、離婚してください」
「急にどうした?!」
「ですから離婚してください。もしかして私が何も知らなかったとでも思っているのですか?」
「一体何の話だ?」
ドワイトは本気で心当たりがなかった。
自分が浮気していることをブリジットが知っているとは考えておらず、その可能性が排除された結果だ。
ブリジットは畳み掛ける。
「キャロンと随分良さそうな関係ですね。私よりもキャロンを愛していたのですね。そう考えれば私への態度も納得できます」
「待ってくれブリジット! 確かにキャロンとは親しい間柄だが、それは友人としてだ」
「そうですか。友人関係とは平気でキスするような関係だったのですね。知りませんでした。私は自分の無知が恥ずかしいです。これは皆様にも教えて差し上げたほうがいいでしょうね。きっと皆様もドワイト様に感謝するでしょうね」
「待ってくれ、ブリジット。それは困る」
ドワイトは必死に弁解する。
だがそれはブリジットに通用するはずがない。
「では離婚してください」
「わかった。すぐに離婚しよう。だからそれだけは止めてくれ」
「ありがとうございます」
ドワイトの返事にブリジットは満足して微笑んだ。
離婚してしまえば理由を知りたがるのが人というものだ。
その際に正直に話せばいいだけのこと。
もしドワイトに何か言われようものなら、言われて困るようなことをしたドワイトを責めればいいだけだった。
「では離婚届を用意しておいたのでサインをお願いします」
「……分かった」
ドワイトは離婚届にサインし、ブリジットに渡す。
これでドワイトはブリジットの夫ではなくなった。
「それでは失礼いたします」
ブリジットは一礼し去っていった。
ドワイトはブリジットの変化も離婚したことも信じられなかった。
つい先ほどまでとは全く異なっている状況を受け入れられなかった。
「大変なことになったな。まさか浮気を知られていたとはな……」
そのことはドワイトに驚きをもたらしたが、考えようによってはキャロンと結婚するための障害がなくなったということだ。
彼は前向きに捉えた。
「キャロンと結婚するか。政略結婚ではない本物の愛だ」
ドワイトはキャロンと結婚すると決めた。
ブリジットと離婚したことも、こうなれば感謝したいくらいだった。
「こうなったら早くキャロンに伝えないとな。きっと喜んでくれるぞ」
キャロンが喜ぶ姿を想像し、ドワイトも自然と微笑んでしまった。
「これが本物の愛ってやつだな。ブリジットには感じたことのない不思議な感覚だ……」
足元がおぼつかないような感覚に襲われたが、きっとそれも愛によるものだとドワイトは都合良く解釈した。
「おっと、こんなことをしている場合じゃなかった。キャロンに伝えないとな」
こうしてドワイトはキャロンのもとへ向かった。
愛を告げ、結婚を申し込むために。
既に指示は出したので、後はファインズ商会任せだ。
ブリジットは自分がすべきことをする。
「ドワイト様、離婚してください」
「急にどうした?!」
「ですから離婚してください。もしかして私が何も知らなかったとでも思っているのですか?」
「一体何の話だ?」
ドワイトは本気で心当たりがなかった。
自分が浮気していることをブリジットが知っているとは考えておらず、その可能性が排除された結果だ。
ブリジットは畳み掛ける。
「キャロンと随分良さそうな関係ですね。私よりもキャロンを愛していたのですね。そう考えれば私への態度も納得できます」
「待ってくれブリジット! 確かにキャロンとは親しい間柄だが、それは友人としてだ」
「そうですか。友人関係とは平気でキスするような関係だったのですね。知りませんでした。私は自分の無知が恥ずかしいです。これは皆様にも教えて差し上げたほうがいいでしょうね。きっと皆様もドワイト様に感謝するでしょうね」
「待ってくれ、ブリジット。それは困る」
ドワイトは必死に弁解する。
だがそれはブリジットに通用するはずがない。
「では離婚してください」
「わかった。すぐに離婚しよう。だからそれだけは止めてくれ」
「ありがとうございます」
ドワイトの返事にブリジットは満足して微笑んだ。
離婚してしまえば理由を知りたがるのが人というものだ。
その際に正直に話せばいいだけのこと。
もしドワイトに何か言われようものなら、言われて困るようなことをしたドワイトを責めればいいだけだった。
「では離婚届を用意しておいたのでサインをお願いします」
「……分かった」
ドワイトは離婚届にサインし、ブリジットに渡す。
これでドワイトはブリジットの夫ではなくなった。
「それでは失礼いたします」
ブリジットは一礼し去っていった。
ドワイトはブリジットの変化も離婚したことも信じられなかった。
つい先ほどまでとは全く異なっている状況を受け入れられなかった。
「大変なことになったな。まさか浮気を知られていたとはな……」
そのことはドワイトに驚きをもたらしたが、考えようによってはキャロンと結婚するための障害がなくなったということだ。
彼は前向きに捉えた。
「キャロンと結婚するか。政略結婚ではない本物の愛だ」
ドワイトはキャロンと結婚すると決めた。
ブリジットと離婚したことも、こうなれば感謝したいくらいだった。
「こうなったら早くキャロンに伝えないとな。きっと喜んでくれるぞ」
キャロンが喜ぶ姿を想像し、ドワイトも自然と微笑んでしまった。
「これが本物の愛ってやつだな。ブリジットには感じたことのない不思議な感覚だ……」
足元がおぼつかないような感覚に襲われたが、きっとそれも愛によるものだとドワイトは都合良く解釈した。
「おっと、こんなことをしている場合じゃなかった。キャロンに伝えないとな」
こうしてドワイトはキャロンのもとへ向かった。
愛を告げ、結婚を申し込むために。
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