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7話

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後日、ティルソンのもとへヘレンから慰謝料の請求書が届いた。
その金額を確認したティルソンはカトリーナに相談することにした。

「ティルソン、どうしたの?」

カトリーナは彼の表情を見て、何か重い悩みを抱えているのだろうと察した。
それもそのはずだ。
ヘレンが請求してきた金額が金額だったのだから。

「ヘレンが慰謝料を請求してきたんだ。問題はその額だ。とてもではないが払えるような額ではなかった……」
「どれくらいの金額なの?」
「ほぼ全財産だ。支払ってしまったら家も失ってしまう……。常識外れの金額だ。俺にはそんな額、到底支払えない」

ティルソンは声を震わせながら言った。
カトリーナは驚き言葉を失った。

「非常識よ、そんなの」
「だが支払うと言ってしまったから支払わなければならない。もし支払いから逃げるようなことがあれば信用を失う」
「信用と財産、どっちが大切なの?」

カトリーナの問いにティルソンは頭を悩ませた。
信用を失っても生きることはできる。
財産を失ってしまえば生きることすら苦労するだろう。
だが信用を失えば貴族としては終わりだ。

そこでティルソンは今日の目的でもあり秘策でもあることを提案する。

「カトリーナ、どうにかしてくれないか? 支えてくれるって言ったよな? 今こそ支えてほしい」

カトリーナは言葉を失った。
彼がこんなにも頼りなく恥ずかしい提案をするような人だとは思わなかった。
彼女は自分の発言を後悔した。

「支えると言ったけれど、これは無理があるわ。それにわたしから一方的にお金を出すのは支えることにはならないわよ」
「だが、俺はカトリーナしか頼れないんだ。君の助けがなければ、この状況を乗り越えられない。どうか……頼む……」

ティルソンは縋るように頼み込んだ。

「ティルソン、あなたがそんな人だとは思わなかったわ。ヘレンとの関係を終わらせたのはあなた自身の決断でしょう? その後始末を私に押し付けるなんて無責任じゃない?」
「そう言われても、どうすることもできないんだ! 今必要なものは正論じゃない! 金なんだ! カトリーナは俺がどれほど苦しんでいるか分からないだろう?!」

カトリーナはティルソンの言葉に胸が締め付けられる思いだった。
そこには愛を感じられず、ただ八つ当たりされているようにしか思えなかった。
これがティルソンの本性なのかとカトリーナは落胆した。

「わたしはあなたを支えたいと思っていた。でも、あなたがそんな人だとは思わなかったわ。今のティルソンを支えたいとは思えないの」
「そんな……」
「でも勘違いしないで。あなたとは別れるつもりはないの。これで反省し心を入れ替えて」

ヘレンは真実の愛だとか他人が言い出したことでティルソンとの婚約を解消できなくなっていた。
ならばせめて彼が真っ当な心を取り戻すよう促すだけだ。

その結果はというと。

「俺を支えてくれるんだろう? カトリーナも誠意を見せてくれよ。そうすれば俺だって努力するさ」

カトリーナは反省する素振りもないティルソンに幻滅した。
婚約してしまったことを後悔した。
それでもティルソンは以前のようには戻らない。
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