【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

6話

ティルソンとヘレンのやり取りが続く中、カトリーナはその状況を見つめていた。
彼女は戸惑いつつも、自分はティルソンの婚約者なのだからと、彼を味方しなくてはならないと考えた。

カトリーナはティルソンの隣に歩み寄る。
周囲の視線が彼女に集まる。

「ティルソン、わたしがあなたを支えるわ。慰謝料を支払うならわたしも協力する。この試練を二人で乗り越えましょう」

カトリーナは微笑みながら告げた。
その言葉は会場にいる人々の心に響いた。
周囲の貴族たちはカトリーナの勇気と決意に感動し、彼女を称賛した。

「彼女は本当に素晴らしい女性だわ！　慰謝料を支払うようなことをしたティルソンを支えるなんて！」
「彼女のような人がティルソンを支えるなんて、彼も幸せ者よね。他の人だったら別れているわ」
「カトリーナの気持ちは見事だ。あれこそが真実の愛というものではないのか？」

人々の称賛は必ずしも称賛ではない。
褒めるように相手を貶すのも貴族なりの話術だ。
自分たちに害が及ばないのであれば、貴族たちは面白くなれば何でも良かった。

一方のヘレンは自分が不利な状況に追い込まれていくのを感じた。

「まさか、こんな形で逆転されるなんてね……。カトリーナは見事だわ。やはり彼女がティルソンの婚約者に相応しいのよ……」

ヘレンは負けを悟った。
これ以上パーティー会場にいられなかった。

ヘレンはそれ以上何も言わずに会場の出口へと向かった。
周囲の人たちはカトリーナに惜しみない賞賛の拍手を送った。
拍手を背に受けるヘレンの姿を憐れむ人も少なくなかった。



「これでいいわね」

会場の外に出たヘレンは、それまでの雰囲気を一変させた。
あえて負けを演じ、カトリーナに称賛が集まるように仕向けたのだ。
周囲からの過大な評価は必ず後で負担になる。

「ティルソンもカトリーナも後が楽しみよね。周囲の期待に応えようとするかしら？」

ヘレンは満足そうな表情だった。



その頃の会場は、人々がカトリーナの言葉に感動したままだった。
それにヘレンの哀れな姿を見て興奮していた。

その一方でティルソンとカトリーナは落ち着かない様子だった。

「カトリーナ、さっきのことは……」
「わたしはあなたのそばにいたいと思ったから。これからずっと一緒だもの。支えていく気持ちに嘘はないわ」

カトリーナは微笑みを浮かべ言った。

ティルソンは彼女の言葉に心を打たれた。
カトリーナを選んで良かったと心の奥底から思った。



カトリーナの素晴らしい愛は美談として驚くほどの広まりを見せた。
それが彼女を苦しめることになった。