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新たな不安

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「…は?何それ?お前、もしかして俺と結婚するの、イヤとか言う?」

タブレットをへし折りそうな顔で睨みつけられ、慌てて弁解をする。

「いっ、嫌なわけない!!で、でも、高嶺くんカッコいいし、弁護士さんだし、本当に私なんかでいいのかなって。信じられなくて…。それに…んっ」

高嶺くんが不意に肩を引き寄せ、唇で言葉を遮った。

「んぅ…」

ガッッッツリ舌入ってる。
このキスはまずい。

分かっていても上顎を舌で撫でられろくな抵抗もできないうちに、さっきへし折られそうになっていたタブレットはいつの間にか脇に置かれ、デスクに押し倒されてしまった。

「まだ足りない?」

「え?」

「他の誰でもない。俺は静花がいいって言ってるのに、それが分かってないってことは、抱かれ足りないのかって聞いてるんだけど」

そう尋ねる高嶺くんの顔は、心なしか少し赤いような。
最近忙しかったからまた風邪引いてたりする?

なんて考えていると、高嶺くんは「足りてないのか」呟き、ニットの裾から大きな手を滑り込ませてきた。

「たっ、足りてる!足りてます!!」

「…本当に?」

「本当っ!だからロールキャベツ食べよう。折角できたて一緒に食べられるのに、冷めちゃう!!」

そう叫ぶと、高嶺くんは手を止めてしばらく悩んだ末に言った。

「食べたら一緒に風呂入って、その後ベッドで嫌ってほど教えてやるから」

これ…。
絶対ロールキャベツでパワーチャージしてからシた方が愉しめるって算段だ。

夕飯時、高嶺くんは上機嫌でロールキャベツをお代わりしていたけれど、私は箸があまり進まなかった。

そして、予想どおり、その夜はいつもよりしつこく攻められてしまった。

翌日は土曜日で、今の生活を始めてから初めて二人で過ごす休日になった。
昨夜は(も)激しかったし、今日は家でゆっくり過ごすのかなと思っていたら、珍しく高嶺くんの方が私より先にベッドから起き上がった。

「じゃ、行くか」

「行くってどこに?」

あちこち痛む体を起こしながら尋ねると、高嶺くんが久々に八重歯を見せて笑った。

「ジュエリーショップ巡り」

なんて意気込む高嶺くんと出かけたまでは良かったけれど。

周りのカップルの甘っっ々な雰囲気。
ショーケースに並ぶ、目が潰れそうなほどの輝きを放つダイヤモンドリングのお値段。
忠犬のように後をついてくるショップ店員さん。

どの店でもその全てに私が完全に気後れしてしまい、三軒回っても目星すらつけられなかった。

「ま、別に今日決めなくてもいいから」

休憩するために入ったカフェで、ちょっと疲れた顔をした高嶺くんが、ブラックコーヒーを啜りながら言ってくれた。

高嶺くんにとっては二ヶ月ぶりの貴重なお休みなのに。

申し訳ない気持ちで消えたくなっていると─

「…それとも決められない理由が他にあるとか?」
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