43 / 97
奇襲
3
しおりを挟む
そうだ。
そうだった。
どうして忘れていられたんだろう。
私が高校時代いじめられたのは、うちのお母さんと高嶺くんのお父さんがそういう関係だったことだったことがきっかけの一つだったのに。
直接確かめた訳じゃない。
でも、母が突然「もうこの町にはいたくない」と言い出し、母子二人だけで逃げるように引っ越した先で、母が泣きながら寝言で呟いた言葉は『高嶺さん…』だった。
森永さんの話が本当なら、高嶺くんは何で私なんかと付き合ってるの?
本当に私の事が好きなの??
急に足元がグラつき始める。
座っていても気持ちが悪い。
「そんなの…高嶺サンももういい年だし、親とか関係なくないですか?どっからどう見てもあの人、静花さんのことめちゃくちゃ好きそうでしたけど」
それまで黙って聞いていた東海林くんが見かねて助け舟を出してくれた。
少しだけ、呼吸が楽になる。
でも、それはほんの束の間。
火に油を注いでしまったらしい。
「そんなことあるはずない!!」
森永さんが立ち上がって叫んだ。
「あの母親の娘なのよ?景だって体目当てに決まってる!!」
今度は瑞希が立ち上がって、鬼の首を取ったように反論した。
「お生憎様!うちの静花はついこの間までキスもしたこともないほどウブだったのよ?それがどうやってあんな、いかにも経験豊富そうな男を体で落とすっていうのよ?」
まずい話の流れだ。
そう気付いたときには、森永さんはお腹を抱えて笑い始めていた。
「何がおかしいのよ?」
「だって!『ウブ』って。こんな、高校のころからビッチって噂のあった女を…アハハハッ!!」
ああ、やっぱり。
森永さんも『あの噂』を知っていたんだ。
高嶺くんの言っていたとおり、本当にそんな噂が流れていたんだ。
どうしよう。
まだ『噂』であって、真実ではないけれど。
森永さんが、当時の私と高嶺くんの関係に気付いていたら─
「は!?そんなの噂でしょ!いい加減黙デタラメ言うの止めなさいよ!!名誉毀損で訴えるわよ!!」
「み、瑞希、もういいから…」
辛うじて絞り出した言葉は、ヒートアップした瑞希の声に掻き消されてしまった。
「良くないわよ!静花も好き勝手言わせてないで、ちゃんと否定しなさいよ!!」
さっきまで高笑いをしていた森永さんの顔から、フッと笑みが消えた。
鬼気迫るという言葉そのものの表情に、彼女が何を言おうとしているかすぐに分かった。
でも、私にはどうすることもできなかった。
「否定できるわけないわよね?景とだって、学校でもシてたの、私知ってるんだから」
そうだった。
どうして忘れていられたんだろう。
私が高校時代いじめられたのは、うちのお母さんと高嶺くんのお父さんがそういう関係だったことだったことがきっかけの一つだったのに。
直接確かめた訳じゃない。
でも、母が突然「もうこの町にはいたくない」と言い出し、母子二人だけで逃げるように引っ越した先で、母が泣きながら寝言で呟いた言葉は『高嶺さん…』だった。
森永さんの話が本当なら、高嶺くんは何で私なんかと付き合ってるの?
本当に私の事が好きなの??
急に足元がグラつき始める。
座っていても気持ちが悪い。
「そんなの…高嶺サンももういい年だし、親とか関係なくないですか?どっからどう見てもあの人、静花さんのことめちゃくちゃ好きそうでしたけど」
それまで黙って聞いていた東海林くんが見かねて助け舟を出してくれた。
少しだけ、呼吸が楽になる。
でも、それはほんの束の間。
火に油を注いでしまったらしい。
「そんなことあるはずない!!」
森永さんが立ち上がって叫んだ。
「あの母親の娘なのよ?景だって体目当てに決まってる!!」
今度は瑞希が立ち上がって、鬼の首を取ったように反論した。
「お生憎様!うちの静花はついこの間までキスもしたこともないほどウブだったのよ?それがどうやってあんな、いかにも経験豊富そうな男を体で落とすっていうのよ?」
まずい話の流れだ。
そう気付いたときには、森永さんはお腹を抱えて笑い始めていた。
「何がおかしいのよ?」
「だって!『ウブ』って。こんな、高校のころからビッチって噂のあった女を…アハハハッ!!」
ああ、やっぱり。
森永さんも『あの噂』を知っていたんだ。
高嶺くんの言っていたとおり、本当にそんな噂が流れていたんだ。
どうしよう。
まだ『噂』であって、真実ではないけれど。
森永さんが、当時の私と高嶺くんの関係に気付いていたら─
「は!?そんなの噂でしょ!いい加減黙デタラメ言うの止めなさいよ!!名誉毀損で訴えるわよ!!」
「み、瑞希、もういいから…」
辛うじて絞り出した言葉は、ヒートアップした瑞希の声に掻き消されてしまった。
「良くないわよ!静花も好き勝手言わせてないで、ちゃんと否定しなさいよ!!」
さっきまで高笑いをしていた森永さんの顔から、フッと笑みが消えた。
鬼気迫るという言葉そのものの表情に、彼女が何を言おうとしているかすぐに分かった。
でも、私にはどうすることもできなかった。
「否定できるわけないわよね?景とだって、学校でもシてたの、私知ってるんだから」
7
あなたにおすすめの小説
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
4番目の許婚候補
富樫 聖夜
恋愛
愛美は家出をした従姉妹の舞の代わりに結婚することになるかも、と突然告げられた。どうも昔からの約束で従姉妹の中から誰かが嫁に行かないといけないらしい。順番からいえば4番目の許婚候補なので、よもや自分に回ってくることはないと安堵した愛美だったが、偶然にも就職先は例の許婚がいる会社。所属部署も同じになってしまい、何だかいろいろバレないようにヒヤヒヤする日々を送るハメになる。おまけに関わらないように距離を置いて接していたのに例の許婚――佐伯彰人――がどういうわけか愛美に大接近。4番目の許婚候補だってバレた!? それとも――? ラブコメです。――――アルファポリス様より書籍化されました。本編削除済みです。
包んで、重ねて ~歳の差夫婦の極甘新婚生活~
吉沢 月見
恋愛
ひたすら妻を溺愛する夫は50歳の仕事人間の服飾デザイナー、新妻は23歳元モデル。
結婚をして、毎日一緒にいるから、君を愛して君に愛されることが本当に嬉しい。
何もできない妻に料理を教え、君からは愛を教わる。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
あなたがいなくなった後 〜シングルマザーになった途端、義弟から愛され始めました〜
瀬崎由美
恋愛
石橋優香は夫大輝との子供を出産したばかりの二十七歳の専業主婦。三歳歳上の大輝とは大学時代のサークルの先輩後輩で、卒業後に再会したのがキッカケで付き合い始めて結婚した。
まだ生後一か月の息子を手探りで育てて、寝不足の日々。朝、いつもと同じように仕事へと送り出した夫は職場での事故で帰らぬ人となる。乳児を抱えシングルマザーとなってしまった優香のことを支えてくれたのは、夫の弟である宏樹だった。二歳年上で公認会計士である宏樹は優香に変わって葬儀やその他を取り仕切ってくれ、事あるごとに家の様子を見にきて、二人のことを気に掛けてくれていた。
息子の為にと自立を考えた優香は、働きに出ることを考える。それを知った宏樹は自分の経営する会計事務所に勤めることを勧めてくれる。陽太が保育園に入れることができる月齢になって義弟のオフィスで働き始めてしばらく、宏樹の不在時に彼の元カノだと名乗る女性が訪れて来、宏樹へと復縁を迫ってくる。宏樹から断られて逆切れした元カノによって、彼が優香のことをずっと想い続けていたことを暴露されてしまう。
あっさりと認めた宏樹は、「今は兄貴の代役でもいい」そういって、優香の傍にいたいと願った。
夫とは真逆のタイプの宏樹だったが、優しく支えてくれるところは同じで……
夫のことを想い続けるも、義弟のことも完全には拒絶することができない優香。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる