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奇襲
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「うわ!静花まだその眼鏡持ってたの!?」
翌日出勤するなり瑞希にツッコまれた。
あの後一人でコンタクトを作りに行ったものの、その時の眼科検診で角膜に少し傷がついていると判明し、一週間程眼鏡で過ごすように言われたのだ。
「ソレで外歩いて来たんですか!?さすがにヤバ過ぎません??」
東海林くんにまでディスられる始末。
─なんだけど。
心の中で、密かに安堵のため息をつく。
眼鏡に注目が集まったのは、ある意味作戦どおり。
今日の私の服装は、ハイネック。
もちろん、昨日高嶺くんがつけた歯型やキスマークを隠すためだ。
まだ日中は温かい今の時期には早すぎるから、人一倍目敏い瑞希の目を誤魔化すために、この超絶ダサい年季の入った瓶底眼鏡が役に立った。
私の悪口で盛り上がる二人を尻目に、そっと自席についてPCを立ち上げた。
その瞬間。
「で?静香はそのハイネックの下に何を隠してるのかしら?」
急に真顔になった瑞希に問いかけられた。
「かっ、隠してるなんて何も!!」
「しらばっくれないで!東海林くんから聞いてネタは上がってんのよ?」
ギョッとして東海林くんの顔を見れば、悪びれる様子もなく言い放つ。
「あんな状態の静香さんを送りに行った俺がとんぼ返りしたら、社長に理由聞かれて当然ですよね?だからありのままを伝えたんです」
「…ありの、まま?」
「彼氏が迎えに来たから任せて帰りましたって」
しまった!
ちゃんと口止め料払っておくんだった!!
と思ってももう遅い。
「詳しく聞かせてもらうから。来て」
顎で社長室を指し示す瑞希に、逆らえるはずもなかった。
社長室は、壁紙も家具も瑞希の好きな白一色で統一されている。
もちろん、私も一応副社長なので、何度も足を踏み入れている。
でも、応接用のソファに座るのは初めてだ。
「相手は本当にあの高嶺さんなの?」
昨夜の余韻のせいか、高嶺くんの名前が出ただけで、顔が火を吹いた。
瑞希に話す方が、東海林くんに話したときより気恥ずかしさが大きいのは何故なんだろう?
「わ、私もまだ信じられないくらいなんだけど…」
「…いつから付き合ってるの?」
「に、二週間くらい前…かな」
項をポリポリと掻いていると、瑞希の手がテーブル越しにニュッと伸びてきて、首元を隠していたハイネックをずり下げた。
「…こんっな痕つけられてるってことは…もうキスくらいしてるのよね?」
顔も声も、怖すぎる。
でも、瑞希に嘘は吐けない。
恐る恐る頷けば、瑞希のこめかみの辺りから「プチン」と何かが切れる音がした。
「はい、死刑確定!!あの男、客として上玉だと思ってたら私の大事な大っっ事な静花を、付き合ってたった二週間で汚してくれちゃったわけね?もしかして、最初から静花狙いだったとか!?Love Birdsに大金積んだのは、静花をカネで買ったつもりだったとか??弁護士のくせに人身売買だよね、これ??大問題じゃない!!?」
ああ、どうしよう。
少しだけ予想はしてたけど、ここまで激昂するなんて。
もう、こうなったら本当のことを言うしかない。
『待って!』と叫ぼうとしたとき─
「お待ち下さい!!」
私の声ではない別の社員の叫び声が、社長室の外から聞こえた。
瑞希と顔を見合わせ、大急ぎで接客スペースへと走る。
制止しようとする東海林くんを振り切ろうとしていたのは、見覚えのある女性だった。
翌日出勤するなり瑞希にツッコまれた。
あの後一人でコンタクトを作りに行ったものの、その時の眼科検診で角膜に少し傷がついていると判明し、一週間程眼鏡で過ごすように言われたのだ。
「ソレで外歩いて来たんですか!?さすがにヤバ過ぎません??」
東海林くんにまでディスられる始末。
─なんだけど。
心の中で、密かに安堵のため息をつく。
眼鏡に注目が集まったのは、ある意味作戦どおり。
今日の私の服装は、ハイネック。
もちろん、昨日高嶺くんがつけた歯型やキスマークを隠すためだ。
まだ日中は温かい今の時期には早すぎるから、人一倍目敏い瑞希の目を誤魔化すために、この超絶ダサい年季の入った瓶底眼鏡が役に立った。
私の悪口で盛り上がる二人を尻目に、そっと自席についてPCを立ち上げた。
その瞬間。
「で?静香はそのハイネックの下に何を隠してるのかしら?」
急に真顔になった瑞希に問いかけられた。
「かっ、隠してるなんて何も!!」
「しらばっくれないで!東海林くんから聞いてネタは上がってんのよ?」
ギョッとして東海林くんの顔を見れば、悪びれる様子もなく言い放つ。
「あんな状態の静香さんを送りに行った俺がとんぼ返りしたら、社長に理由聞かれて当然ですよね?だからありのままを伝えたんです」
「…ありの、まま?」
「彼氏が迎えに来たから任せて帰りましたって」
しまった!
ちゃんと口止め料払っておくんだった!!
と思ってももう遅い。
「詳しく聞かせてもらうから。来て」
顎で社長室を指し示す瑞希に、逆らえるはずもなかった。
社長室は、壁紙も家具も瑞希の好きな白一色で統一されている。
もちろん、私も一応副社長なので、何度も足を踏み入れている。
でも、応接用のソファに座るのは初めてだ。
「相手は本当にあの高嶺さんなの?」
昨夜の余韻のせいか、高嶺くんの名前が出ただけで、顔が火を吹いた。
瑞希に話す方が、東海林くんに話したときより気恥ずかしさが大きいのは何故なんだろう?
「わ、私もまだ信じられないくらいなんだけど…」
「…いつから付き合ってるの?」
「に、二週間くらい前…かな」
項をポリポリと掻いていると、瑞希の手がテーブル越しにニュッと伸びてきて、首元を隠していたハイネックをずり下げた。
「…こんっな痕つけられてるってことは…もうキスくらいしてるのよね?」
顔も声も、怖すぎる。
でも、瑞希に嘘は吐けない。
恐る恐る頷けば、瑞希のこめかみの辺りから「プチン」と何かが切れる音がした。
「はい、死刑確定!!あの男、客として上玉だと思ってたら私の大事な大っっ事な静花を、付き合ってたった二週間で汚してくれちゃったわけね?もしかして、最初から静花狙いだったとか!?Love Birdsに大金積んだのは、静花をカネで買ったつもりだったとか??弁護士のくせに人身売買だよね、これ??大問題じゃない!!?」
ああ、どうしよう。
少しだけ予想はしてたけど、ここまで激昂するなんて。
もう、こうなったら本当のことを言うしかない。
『待って!』と叫ぼうとしたとき─
「お待ち下さい!!」
私の声ではない別の社員の叫び声が、社長室の外から聞こえた。
瑞希と顔を見合わせ、大急ぎで接客スペースへと走る。
制止しようとする東海林くんを振り切ろうとしていたのは、見覚えのある女性だった。
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