悪役令嬢の罠にかかって、ただの穴だと思い込んで告白もできず逃げ出したのに、元ヤンから弁護士に変身した彼に溺愛されてます

恩田璃星

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本当の嘘

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「痛…っ」

そのまま高嶺くんの腕に捕獲されると思いきや、東海林くんが私の腰に回していた手に力を入れて、それを阻んだ。

「…何のつもりだ?」

「煽っといていて何だけどさ、理由も聞かずに乱暴はダメでしょ」

東海林くんの顔からはすっかり笑顔が消えている。

「アンタ静花さんがそんな女だって思ってるんですか?」

「……」

え?
ちょっと待って。
何この間!?

もしかして、高嶺くん、本当に私がそういう・・・・女だと思ってる!?

この微妙な空気を知ってか知らずか、東海林くんが続ける。

「いつもアンタから連絡来るの、椅子の上に正座して待機するような人が、浮気なんてするわけないだろ?コンタクトだよ」

「…コンタクト?」

「そ。コンタクトが割れて、全然目ぇ見えなくて危なっかしいから、俺につかまらせて家まで送ろうとしてただけ。大体、自分は他の女に合鍵渡して静花さんのこと散々不安にさせといて。ちょっと他の男と腕組んで歩いてたくらいで怒ってんじゃねーよ」

高嶺くんは、仏頂面のままだけど、事情は分かってくれたらしい。
何も言わずに私の腕を掴んでいた手を離し、東海林くんの代わりに掴まるようにと腕を差し出してくれた。

─だけど。

東海林くんの腕には何も考えずに掴まれたのに、高嶺くんの腕に掴まるのはハードルが高くて。

まごまごしていたら、結局「ふざけんな!!」と怒られてしまった。

すったもんだの末、私が掴んだのは高嶺くんのスーツの端っこで。
これにはやっぱり高嶺くんは不満気で、東海林くんにも呆れられてしまった。

「今どき小学生だって手ぇくらい繋ぐでしょ。静花さんピュア過ぎ…」

それを聞いた高嶺くんがすかさず反応した。
まるで反撃の機会を待っていたかのように。

高嶺くんの性格上、黙ってやられっぱなしなんてあり得ないのに、油断していた。

「もしかして、お前もあの・・設定信じてるの?」

「…え?」

「静花が『キスもしたことない』とかいう、アレ」

見えないけど、分かる。
東海林くん、目が点になってる。
まずい!!

さっきまでの恥らいなんて何処やら。
高嶺くんの腕にしがみつき、方向もわからないまま力任せに引っ張る。

「高嶺くん、もう行こう!そうだ、私、お弁当作って来てるから!!東海林くん、また明日ね。今日は本当にありがとう!!」

逃げるようにその場を離れてしばらく経った後、絡めていた腕を解いてスーツの端っこを握り直した私を、高嶺くんはちゃんと玄関前まで送ってくれた。。

「あの、ありがとう。もうここで大丈夫だから。気をつけて帰ってね」

そう言って家の中に入ろうとしたら、ドアに何かが支えて最後まで閉まらない。
目を凝らして見ると、それは高級そうな靴で、顔を上げればドアの隙間には高嶺くんの顔。
やっぱりちゃんとは見えないけど、不機嫌そうなのだけは確かだ。

「弁当あるって言ってただろう。まさか、茶も出さずに追い返すつもりじゃないよな?」

…そりゃそうだよね。

でも、できれば今日は遠慮して欲しかった。

だって。
ほら。
絶対こうなるって分かってたもん。

「あー…マジで最高」
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