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誰よりも大切な存在 6
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ドサッと音がしたのは自分がソファーに押し倒されたせいだと気付いたのは、律の唇が私の首筋を這い始めた時だった。
「ちょ、りっちゃんっ」
私に覆い被さる律の肩を押してもびくともしない。
薄い首の皮を舐められると、擽ったくてたまらず声が漏れた。
「ひゃっ、ぁっ」
「葵、感じてるんだ?」
「...っ、感じ!?ぃっ」
話してる途中に律が軽く歯を立てて来て、チクリと痛みが走った。
「こんなんで痛がってたら挿れるときどうすんだよ」
「い、いれるっ!?」
「経験なくてもやり方くらい知ってるだろ」
気付いたらパジャマのボタンが外されていて、律の唇は鎖骨をなぞってはだけた胸元に向かってゆっくりと下りていく。
「りっちゃん!」
背中に回された律の手が簡単にブラのホックを外した。
さっきから律が本気なのは分かっていたけど、さすがにここまでするとは思っていなかった。
「りっちゃん!!」
キャミソールを乱暴にずらそうとされた瞬間
「律っ!!」
と叫んで律の綺麗な顔を思い切り叩いた。
「…分かった?アオ」
「…え?」
「アオは好きでもない男に触らせるなんて無理だろ?」
律は叩かれた自分の頬ではなく、涙に濡れた私の頬を優しく拭った。
「バカなこと考えないで、明日さっさと退職届出して来い」
びっくりし過ぎてまだ震えが止まらない。
「ごめん、ちょっとやり過ぎた」
ポンポンと頭を撫でると、律は私のパジャマの一番上のボタンまできっちり留めてくれた。
「ホットミルク淹れて来てやる」
私はグッと律のパジャマの端を引っ張って引き止める。
「待ってりっちゃん」
「ん?」
私は足を止めた律の鳩尾に渾身の一撃を喰らわせた。
「…っ!!!」
「バカアホ変態っ!!いくらなんでもやり過ぎっ!!!」
「アオがキスの段階で殴らないからだろ!でも言っとくけど中年の不倫オヤジは絶対途中で止めてくれねーからな」
「そ、そんなこと、ちゃんと分かってるもん!!」
「…ならいいけど」
律は鳩尾をさすりながら静かに部屋を出て言った。
わざとらしい。
痛そうなフリして。
律は小さい頃から空手を習っていたから、私のパンチなんて全然効いてないはずだ。
拳を当てた瞬間、腹筋硬かったし。
そんなことよりあんな…あんなキスするなんて!
…させるなんて!!
キスだけじゃなくてあんなことまでしたり言ったり!!
怒りと恥ずかしさをクッションに込めて、律が閉じた部屋のドアに向かって投げつけた。
それでも収まりきらず、律に支配された頭を抱えて一人部屋を転がり回った。
1秒でも早く記憶から抹殺したい。
そう強く思えば思うほど、脳が勝手にさっきこの部屋で起きた出来事や、律のセリフをプレイバックしてしまう。
バタついていた手足がやっと止まったのは、律が部屋を出ていく間際に言った台詞を思い出した時だった。
...『中年の不倫オヤジ』...
思わず小さく吹き出し、昼間見たタレ目の笑顔がふと浮かんだ。
律に説明したのは誘惑ネタがメインで課長の外見は伝えなかったから、律の中で課長は中年のおじさんにイメージになったらしい。
本当は課長、私や律とそんなに変わらないくらいの年だと思うんだけど。
なんて少し落ち着きを取り戻して課長について考えていたら、部屋のドアをノックする音がした。
「アオ?」
ドアの向こうから律の声。
せっかく落ち着きかけた心がまたザワザワと騒ぎ出す。
「まだ怒ってんの?」
今は律の顔見たくない。見られない。
「ホットミルク、ここに置いとくから。冷めないうちに飲めよ」
カタンとお盆を置く音がした後、律の足音が遠ざかっていった。
ドアの隙間から律が本当に居ないか確認し、ホットミルクの入ったカップをお盆ごと部屋に持って入ると、ふわりと柔らかな牛乳の香りが立ち込めた。
ゆっくりと口をつけるといつもと変わらない、温かくて優しい味。
じんわりとお腹も暖かくなる。
机に向かって退職届を書き上げた頃には、心地よい眠気が全身を包み始めた。
「ちょ、りっちゃんっ」
私に覆い被さる律の肩を押してもびくともしない。
薄い首の皮を舐められると、擽ったくてたまらず声が漏れた。
「ひゃっ、ぁっ」
「葵、感じてるんだ?」
「...っ、感じ!?ぃっ」
話してる途中に律が軽く歯を立てて来て、チクリと痛みが走った。
「こんなんで痛がってたら挿れるときどうすんだよ」
「い、いれるっ!?」
「経験なくてもやり方くらい知ってるだろ」
気付いたらパジャマのボタンが外されていて、律の唇は鎖骨をなぞってはだけた胸元に向かってゆっくりと下りていく。
「りっちゃん!」
背中に回された律の手が簡単にブラのホックを外した。
さっきから律が本気なのは分かっていたけど、さすがにここまでするとは思っていなかった。
「りっちゃん!!」
キャミソールを乱暴にずらそうとされた瞬間
「律っ!!」
と叫んで律の綺麗な顔を思い切り叩いた。
「…分かった?アオ」
「…え?」
「アオは好きでもない男に触らせるなんて無理だろ?」
律は叩かれた自分の頬ではなく、涙に濡れた私の頬を優しく拭った。
「バカなこと考えないで、明日さっさと退職届出して来い」
びっくりし過ぎてまだ震えが止まらない。
「ごめん、ちょっとやり過ぎた」
ポンポンと頭を撫でると、律は私のパジャマの一番上のボタンまできっちり留めてくれた。
「ホットミルク淹れて来てやる」
私はグッと律のパジャマの端を引っ張って引き止める。
「待ってりっちゃん」
「ん?」
私は足を止めた律の鳩尾に渾身の一撃を喰らわせた。
「…っ!!!」
「バカアホ変態っ!!いくらなんでもやり過ぎっ!!!」
「アオがキスの段階で殴らないからだろ!でも言っとくけど中年の不倫オヤジは絶対途中で止めてくれねーからな」
「そ、そんなこと、ちゃんと分かってるもん!!」
「…ならいいけど」
律は鳩尾をさすりながら静かに部屋を出て言った。
わざとらしい。
痛そうなフリして。
律は小さい頃から空手を習っていたから、私のパンチなんて全然効いてないはずだ。
拳を当てた瞬間、腹筋硬かったし。
そんなことよりあんな…あんなキスするなんて!
…させるなんて!!
キスだけじゃなくてあんなことまでしたり言ったり!!
怒りと恥ずかしさをクッションに込めて、律が閉じた部屋のドアに向かって投げつけた。
それでも収まりきらず、律に支配された頭を抱えて一人部屋を転がり回った。
1秒でも早く記憶から抹殺したい。
そう強く思えば思うほど、脳が勝手にさっきこの部屋で起きた出来事や、律のセリフをプレイバックしてしまう。
バタついていた手足がやっと止まったのは、律が部屋を出ていく間際に言った台詞を思い出した時だった。
...『中年の不倫オヤジ』...
思わず小さく吹き出し、昼間見たタレ目の笑顔がふと浮かんだ。
律に説明したのは誘惑ネタがメインで課長の外見は伝えなかったから、律の中で課長は中年のおじさんにイメージになったらしい。
本当は課長、私や律とそんなに変わらないくらいの年だと思うんだけど。
なんて少し落ち着きを取り戻して課長について考えていたら、部屋のドアをノックする音がした。
「アオ?」
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せっかく落ち着きかけた心がまたザワザワと騒ぎ出す。
「まだ怒ってんの?」
今は律の顔見たくない。見られない。
「ホットミルク、ここに置いとくから。冷めないうちに飲めよ」
カタンとお盆を置く音がした後、律の足音が遠ざかっていった。
ドアの隙間から律が本当に居ないか確認し、ホットミルクの入ったカップをお盆ごと部屋に持って入ると、ふわりと柔らかな牛乳の香りが立ち込めた。
ゆっくりと口をつけるといつもと変わらない、温かくて優しい味。
じんわりとお腹も暖かくなる。
机に向かって退職届を書き上げた頃には、心地よい眠気が全身を包み始めた。
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