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社長の…愛人?2
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私がさっきまで在籍していた総務部は社屋の2階にある。
一方、秘書課のフロアは社長室に隣接しており、最上階にあるため、これまで私にとってほとんど縁のない場所だった。
ちょっと緊張して入ったそこには…誰もいなくて 拍子抜け。
「うちの課のメンバーは俺と真田さん含めて5人だけど、午後からは皆ほとんどいつも外部会議や打ち合わせに同行してるから。紹介は明日ね」
「5人?秘書がつく重役って今は社長含めて4人じゃありませんでしたっけ?私がこちらに異動ということは、役員の方が増えるんですか?」
率直な疑問をぶつけると、課長は
「さあ、どうだろう?」
と、意味あり気に微笑んだ。
…あ…。
垂れた目尻の延長線上にシワがクシャッと寄って…意外と可愛い…。
なんて、ちょっと笑顔見たくらいでドキッとするなんて我ながら単純過ぎる。
しかも相手は社長の男(かもしれない人)だ。
それに、何より私は浮気・不倫する男は絶対無理。
そんな風に、ときめきそうになった自分を心の中で諌めていた時だった。
「唯人ぉー?今日の産婦人科の検診って何時からだったっけー?」
秘書室の奥の扉から、うちの会社の社長 橘利加子が現れた。
彼女は、四年前40歳の若さで、ユニフォームや制服などの企画からその物流まで手がけるうちの会社『株式会社アクティブ』の代表取締役に抜擢され、その後も会社の業績を伸ばし続けている超ヤリ手の社長だ。
普段あまり見かけないけど、会社の行事のときは自社の特注スーツにハイヒールでキメているイメージしかない。
そんな彼女が、今日はゆったりとしたマキシ丈ワンピースにフラットシューズを身に付けていて、まるで別人のように見えた。
そして、驚いた顔をした私の存在に気づいた社長も明らかに動揺し、微妙過ぎる空気が流れる。
もしかして…と言うより、見るからに社長、妊娠してる…?
しかも課長のこと「唯人」って呼んでるってことは、やっぱり二人は特別な関係で、お腹の子供の父親は……やっぱり課長?
異動数分でとんでもないものを目の当たりにしてしまい、今すぐ総務部に逃げ帰りたい衝動に駆られた。
「社長」
私と社長の気まずい空気を破ったのは、落ち着き払った課長の声。
「ご予約は14時からです。車は手配してありますので私が付き添います」
「…あなたの付き添いは必要ないわ。彼の都合がついたから」
すぐにビジネスモードに切り替えた社長の口調。
それに合わせてなのか、会話の内容のせいなのか、課長の口調も堅くなったように感じる。
社長に付き添って産婦人科に行く「彼」と聞けば社長のご主人思い浮かばない。
もしかして、社長のご主人に二人の関係がバレて、近々天澤課長クビになっちゃうから、私はその補欠要員とかいう話なんだろうか。
昼ドラさながらのドロドロした関係(の妄想)に、寒気が止まらない。
「そうですか。では私は真田さんの指導に当たります」
「よろしく。真田さん、急な異動だなんてごめんなさいね」
突然二人に話を振られた私は飛び上がりそうになった。
「い、いえ!」
「分からないことがあったら何でも天澤課長に聞いてね」
「はいっ」
私が上擦った声で返事をすると、社長は寄るところがあるからと言って、課長が手配した車で予定より早く出掛けて行った。
一方、秘書課のフロアは社長室に隣接しており、最上階にあるため、これまで私にとってほとんど縁のない場所だった。
ちょっと緊張して入ったそこには…誰もいなくて 拍子抜け。
「うちの課のメンバーは俺と真田さん含めて5人だけど、午後からは皆ほとんどいつも外部会議や打ち合わせに同行してるから。紹介は明日ね」
「5人?秘書がつく重役って今は社長含めて4人じゃありませんでしたっけ?私がこちらに異動ということは、役員の方が増えるんですか?」
率直な疑問をぶつけると、課長は
「さあ、どうだろう?」
と、意味あり気に微笑んだ。
…あ…。
垂れた目尻の延長線上にシワがクシャッと寄って…意外と可愛い…。
なんて、ちょっと笑顔見たくらいでドキッとするなんて我ながら単純過ぎる。
しかも相手は社長の男(かもしれない人)だ。
それに、何より私は浮気・不倫する男は絶対無理。
そんな風に、ときめきそうになった自分を心の中で諌めていた時だった。
「唯人ぉー?今日の産婦人科の検診って何時からだったっけー?」
秘書室の奥の扉から、うちの会社の社長 橘利加子が現れた。
彼女は、四年前40歳の若さで、ユニフォームや制服などの企画からその物流まで手がけるうちの会社『株式会社アクティブ』の代表取締役に抜擢され、その後も会社の業績を伸ばし続けている超ヤリ手の社長だ。
普段あまり見かけないけど、会社の行事のときは自社の特注スーツにハイヒールでキメているイメージしかない。
そんな彼女が、今日はゆったりとしたマキシ丈ワンピースにフラットシューズを身に付けていて、まるで別人のように見えた。
そして、驚いた顔をした私の存在に気づいた社長も明らかに動揺し、微妙過ぎる空気が流れる。
もしかして…と言うより、見るからに社長、妊娠してる…?
しかも課長のこと「唯人」って呼んでるってことは、やっぱり二人は特別な関係で、お腹の子供の父親は……やっぱり課長?
異動数分でとんでもないものを目の当たりにしてしまい、今すぐ総務部に逃げ帰りたい衝動に駆られた。
「社長」
私と社長の気まずい空気を破ったのは、落ち着き払った課長の声。
「ご予約は14時からです。車は手配してありますので私が付き添います」
「…あなたの付き添いは必要ないわ。彼の都合がついたから」
すぐにビジネスモードに切り替えた社長の口調。
それに合わせてなのか、会話の内容のせいなのか、課長の口調も堅くなったように感じる。
社長に付き添って産婦人科に行く「彼」と聞けば社長のご主人思い浮かばない。
もしかして、社長のご主人に二人の関係がバレて、近々天澤課長クビになっちゃうから、私はその補欠要員とかいう話なんだろうか。
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「そうですか。では私は真田さんの指導に当たります」
「よろしく。真田さん、急な異動だなんてごめんなさいね」
突然二人に話を振られた私は飛び上がりそうになった。
「い、いえ!」
「分からないことがあったら何でも天澤課長に聞いてね」
「はいっ」
私が上擦った声で返事をすると、社長は寄るところがあるからと言って、課長が手配した車で予定より早く出掛けて行った。
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