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翌朝。
三年ぶりに晴臣の腕の中で目を覚ました。
以前よりも温かく感じるのは、直接素肌が触れ合っているからだろうか。
それとも、心も体も結ばれたという心理的なものからだろうか。
どちらにせよ、今ここに晴臣がいる。
そのことが、ただただ嬉しい。
いつまでもこうしていたい。
そんな願いは、晴臣のスマホが震え、一瞬で砕け散った。
「晴臣!スマホ鳴ってる。光城さんからだよ」
「んー…」
相変わらず寝起き悪いんだから。
心の中で笑っていると、晴臣の手が伸びてきて、私の胸を弄り出した。
「ぁっ、ちょ…やっ」
「柔らか…夢じゃない」
布団に潜り込んで、体に吸い付こうとする晴臣の頭を必死で押し返す。
「夢なわけないでしょ!昨夜散々…!」
「散々、何?」
意地悪な笑みを浮かべて見上げる晴臣に、言葉を失う。
「もう!そういうのいいから!!電話に出なさいよ!!」
スマホを押し付けると、晴臣は渋々通話ボタンをタップした。
「こんな朝っぱらから何の用だよ、宗一郎?…すっごい邪魔なんだけど」
「…ってことは、お前、千歳ちゃんと上手くいったんだな?」
「いったいった。そういうわけだから、本当邪魔。もう切るぞ」
スマホを耳から離し、そそくさと終了ボタンを押そうとする晴臣の手を、スピーカーから漏れ出た光城の言葉が止めた。
「じゃ、僕、お前に光越の社長の座、譲るから」
顔を見合わせてから、
「「えーーーーっ!?」」
と、見事に私と晴臣の声がシンクロした。
慌てて晴臣がスピーカーボタンを押す。
「千歳ちゃんもそこに居るんだよね?久しぶり。君が待っていることを長らく晴臣に伝えてなくて悪かったね」
「い、いえ…そんなことより」
『そんなこと…?』と言いたげに目を剥く晴臣を、敢えて無視して質問を続ける。
「晴臣に社長の座を譲るって…!?」
「実はずっと前から決めてたんだ。晴臣が君と上手く行ったら、全部捨てて志織を迎えに行こうって」
「そんな勝手な!!」
吐き捨てる晴臣の声に対して、いつもは晴臣以上にひねくれている光城の口調は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。
「最初は願掛けみたいなものだったんだけどね。畑は違えど蓮見社長に鍛え上げられた晴臣の経営者としてのセンスと、晴臣を健気に待ち続ける千歳ちゃん見てたら、いつの間にか気持ち固まっちゃってさ。でも、その前に、周りを納得させるために、晴臣にどうしても実績を作ってもらう必要があったから。そして、晴臣、お前は見事に僕の期待に答えてくれたというわけだ」
「知るか!人を人生ゲームのコマみたいに扱いやがって!!」
「晴臣…さっきから口が過ぎるな。僕、今はまだ社長だよ?いいの??折角昨日付けでシンガポール出向終わりにしてあげようと思ったのに。それとも、次はもっと遠いヨーロッパにでも行く?」
晴臣が、グッと悔しそうに下唇を噛んだ。
「……すんませんでした」
三年ぶりに晴臣の腕の中で目を覚ました。
以前よりも温かく感じるのは、直接素肌が触れ合っているからだろうか。
それとも、心も体も結ばれたという心理的なものからだろうか。
どちらにせよ、今ここに晴臣がいる。
そのことが、ただただ嬉しい。
いつまでもこうしていたい。
そんな願いは、晴臣のスマホが震え、一瞬で砕け散った。
「晴臣!スマホ鳴ってる。光城さんからだよ」
「んー…」
相変わらず寝起き悪いんだから。
心の中で笑っていると、晴臣の手が伸びてきて、私の胸を弄り出した。
「ぁっ、ちょ…やっ」
「柔らか…夢じゃない」
布団に潜り込んで、体に吸い付こうとする晴臣の頭を必死で押し返す。
「夢なわけないでしょ!昨夜散々…!」
「散々、何?」
意地悪な笑みを浮かべて見上げる晴臣に、言葉を失う。
「もう!そういうのいいから!!電話に出なさいよ!!」
スマホを押し付けると、晴臣は渋々通話ボタンをタップした。
「こんな朝っぱらから何の用だよ、宗一郎?…すっごい邪魔なんだけど」
「…ってことは、お前、千歳ちゃんと上手くいったんだな?」
「いったいった。そういうわけだから、本当邪魔。もう切るぞ」
スマホを耳から離し、そそくさと終了ボタンを押そうとする晴臣の手を、スピーカーから漏れ出た光城の言葉が止めた。
「じゃ、僕、お前に光越の社長の座、譲るから」
顔を見合わせてから、
「「えーーーーっ!?」」
と、見事に私と晴臣の声がシンクロした。
慌てて晴臣がスピーカーボタンを押す。
「千歳ちゃんもそこに居るんだよね?久しぶり。君が待っていることを長らく晴臣に伝えてなくて悪かったね」
「い、いえ…そんなことより」
『そんなこと…?』と言いたげに目を剥く晴臣を、敢えて無視して質問を続ける。
「晴臣に社長の座を譲るって…!?」
「実はずっと前から決めてたんだ。晴臣が君と上手く行ったら、全部捨てて志織を迎えに行こうって」
「そんな勝手な!!」
吐き捨てる晴臣の声に対して、いつもは晴臣以上にひねくれている光城の口調は、憑き物が落ちたように晴れやかだった。
「最初は願掛けみたいなものだったんだけどね。畑は違えど蓮見社長に鍛え上げられた晴臣の経営者としてのセンスと、晴臣を健気に待ち続ける千歳ちゃん見てたら、いつの間にか気持ち固まっちゃってさ。でも、その前に、周りを納得させるために、晴臣にどうしても実績を作ってもらう必要があったから。そして、晴臣、お前は見事に僕の期待に答えてくれたというわけだ」
「知るか!人を人生ゲームのコマみたいに扱いやがって!!」
「晴臣…さっきから口が過ぎるな。僕、今はまだ社長だよ?いいの??折角昨日付けでシンガポール出向終わりにしてあげようと思ったのに。それとも、次はもっと遠いヨーロッパにでも行く?」
晴臣が、グッと悔しそうに下唇を噛んだ。
「……すんませんでした」
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