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「…!怖いって何がだよ?俺は何も怖がってなんかない!!」

ああ。
やっぱり意地っ張り。

でもここで引き下がるわけにはいかない。
さっさとベッドから出て行こうとする晴臣の手を掴む。

「晴臣が寝てるかどうか心配で私が眠れそうにないの。お願いだから一緒に寝て」

晴臣は、前を向いたまま盛大なため息を吐くと、ベッドを軋ませながら元の場所に戻った。

「……お前、最悪だな」

「ごめん。でもこうでも言わないと、晴臣、倒れるまで頑張っちゃうでしょ?」

「俺のことはいいって言ってるだろ?」

「良くない。晴臣が私を大事に思ってくれてるように、私にとっても晴臣は大事だから」

「バカッ!この状況でそういう事言うな!!大体こんなんで寝れるか!!」

とか何とか言いながら、晴臣は間もなくスウスウと穏やかな寝息をたて始めた。

良かった。
ちゃんと眠れたみたいで。

「ごめんね、怖い思いさせて。こんなになるまで頑張ってくれてありがとう」

晴臣の寝顔を見るのなんて、何年ぶりだろうか。

硬い髪をそっと撫でていると、長い旅を終え、懐かしい我が家に帰ってきたときのような、不思議な疲労感に襲われ、私もいつの間にか深い眠りの底に落ちていった。



翌朝、目が覚めると私達はぴたりと寄り添い合っていた。
身を縮めた私の体は晴臣の懐にすっぽり収まり、パジャマにしがみついていて、晴臣の方は私の背中に腕を回し、しっかりと抱き寄せている。
それも、リハビリ中の肩に負担が掛からないような形で。

徐々に頭がはっきりしてくると、緊急事態だったとは言え自分の大胆さが急に恥ずかしくなり、心臓がバクバク言い始めた。
でも、晴臣の温もりを手放すのは名残惜しい。

頭上からは、まだ規則正しい寝息が聞こえる。

もう少しだけー

そう思っていたら、つい晴臣のパジャマを掴んでいた手に力が入ってしまった。

しまった。
晴臣が目を覚ましたとき、流石にこの状態は恥ずかしい。

慌てて晴臣の懐から抜け出そうと身じろぎをすると、背中に回されていた腕が、きつく締められた。

「ん…もうちょい、このまま」

目の前にある喉仏から少し掠れた声が、この上なく甘く響き、鼻先でスリスリと頭を撫でられた。

ちょっ。
待って。
何これ!?

晴臣が甘えてる!!?

かつてない現象に、ただでさえバクバクしていた心臓が一層激しく鳴り始めた。
もう、色々限界―!!

と、いうところで突如私の体は晴臣から引き剥がされた。

「…悪い、今のなし」
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