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衝撃の一言に胸を抉られ、呼吸が上手くできない。
乱れた息づかいでここに居ることを遼平くんに悟られないよう、口元を手で覆うと、同時に目から涙が溢れた。
「彼女は…永美に似ているのは外見だけで、単純で、無邪気で…呆気ないほど簡単に僕に落ちた。彼女を手に入れ、彼がeternoを去り、これでeternoの未来は安泰だと思ったのに…まさか…まさか彼が光越家の人間だったなんて!!」
突然向こう側からダンッ!と拳を叩きつける音が響いた。
不幸中の幸いで、口元は嗚咽をこらえるために手で覆ったままなので、悲鳴は漏れなかった。
「光越の担当者として彼が交渉の場に現れたとき、僕には彼が死神に見えた。でも、僕は死神の弱点を知っていた。誰に卑怯者と罵られてもいい。eternoを守るためなら何だってする。そう思って、一か八か、『eternoとの契約を切るなら、これまでのことを洗いざらい彼女に話してeternoを去る』そう言って、彼を脅したんだ」
次々と明かされる真実に、ちょっとでも気を抜くと、すぐに頭も心も追いつけなくなりそう。
eternoを守るためだけに、私だけじゃなく、晴臣まで利用したっていうこと?
信じられない。
こんな恐ろしいことを語っているのが、大人で…真面目で、優しいあの遼平くんと本当に同じ人なの!?
「物分りの良すぎる彼は、僕の期待通り…いや、それ以上の働きをしてくれた。僕の代わりに光越側から現状維持の契約を取り付けただけでなく、今回の件は彼が僕を脅した体にするとまで言ってきた。いくら彼女を傷つけたくないからと言って、そこまでする理由が、僕には分かっていなかった。彼女に別れを告げたときまではー」
晴臣が光城の人間だったことを語った時以来、遼平くんの声が感情を顕にして震えた。
「夢にも思わなかったんだ!僕は彼女の叔父で…一回り以上も年上で…だから、そんな…彼女が八年もの間僕を思ってくれていたなんて…!てっきり弱さを晒した僕に同情しただけと思っていたのに…。神様とやらがいるならどうにかしてくれ!!罪悪感で押しつぶされそうだ!!」
板一枚隔てた向こう側で、泣き出しそうな声で懺悔をしているのは、完全な悪役になりきれない優しい人。
間違いなく、私のよく知る遼平くんだった。
乱れた息づかいでここに居ることを遼平くんに悟られないよう、口元を手で覆うと、同時に目から涙が溢れた。
「彼女は…永美に似ているのは外見だけで、単純で、無邪気で…呆気ないほど簡単に僕に落ちた。彼女を手に入れ、彼がeternoを去り、これでeternoの未来は安泰だと思ったのに…まさか…まさか彼が光越家の人間だったなんて!!」
突然向こう側からダンッ!と拳を叩きつける音が響いた。
不幸中の幸いで、口元は嗚咽をこらえるために手で覆ったままなので、悲鳴は漏れなかった。
「光越の担当者として彼が交渉の場に現れたとき、僕には彼が死神に見えた。でも、僕は死神の弱点を知っていた。誰に卑怯者と罵られてもいい。eternoを守るためなら何だってする。そう思って、一か八か、『eternoとの契約を切るなら、これまでのことを洗いざらい彼女に話してeternoを去る』そう言って、彼を脅したんだ」
次々と明かされる真実に、ちょっとでも気を抜くと、すぐに頭も心も追いつけなくなりそう。
eternoを守るためだけに、私だけじゃなく、晴臣まで利用したっていうこと?
信じられない。
こんな恐ろしいことを語っているのが、大人で…真面目で、優しいあの遼平くんと本当に同じ人なの!?
「物分りの良すぎる彼は、僕の期待通り…いや、それ以上の働きをしてくれた。僕の代わりに光越側から現状維持の契約を取り付けただけでなく、今回の件は彼が僕を脅した体にするとまで言ってきた。いくら彼女を傷つけたくないからと言って、そこまでする理由が、僕には分かっていなかった。彼女に別れを告げたときまではー」
晴臣が光城の人間だったことを語った時以来、遼平くんの声が感情を顕にして震えた。
「夢にも思わなかったんだ!僕は彼女の叔父で…一回り以上も年上で…だから、そんな…彼女が八年もの間僕を思ってくれていたなんて…!てっきり弱さを晒した僕に同情しただけと思っていたのに…。神様とやらがいるならどうにかしてくれ!!罪悪感で押しつぶされそうだ!!」
板一枚隔てた向こう側で、泣き出しそうな声で懺悔をしているのは、完全な悪役になりきれない優しい人。
間違いなく、私のよく知る遼平くんだった。
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