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色んな表情を見せるようになったのは私だけじゃない。
遼平くんも今までは、「永美ちゃんを失った夫」、「叔父」、「eternoの社長」の三つの顔しか見せてくれていなかったのに、最近は37歳の素の手塚遼平の顔を見せてくれているような気がする。
やっとの思いで恋心を手放したのに、その顔は狡い。
そんなふうに心のなかで恨み言を唱えつつ、私も割り切って『役得』ということにしようと言い聞かせながらオフィスに戻るなり、どこか浮足立つような気分は一掃された。
色んな意味で今一番会いたくない人間と鉢合わせてしまったのだ。
その手にはコンビニのレジ袋がぶら下がっていて、中には栄養ゼリーと惣菜パンが入っている。
「は…晴、臣」
さっきSNSにアップされた数々の写真が頭の中に散乱する。
晴臣の質素なお昼とかけ離れた、可愛くディスプレイされた色とりどりの料理。
#いちゃいちゃ #あまあま なんてタグ付けされるほど仲睦まじく食事する私と遼平くん。
ああ、まずい。
絶対に怒られるーーー!!
と、思ったのに。
晴臣は噛み付いてくるどころか、遼平くんに『お疲れさまです』と礼儀正しく挨拶している。
え?
何で??
デコピンくらいされるかもしれないと思い、顔の前でクロスさせて身構えた両腕が虚しい。
もしかしてまだあの写真見てないの???
この間は私のSNSアカウントに投稿があったときの通知をオンにして、遼平くんと同じ、アップされたタイミングで写真を確認していたのに。
「じゃあ、俺、すぐ戻らないといけないんで。引き続き千歳のこと頼みます」
「うん、大丈夫。全部僕に任せといて」
どことなく挑発的な言い方だなと思っていたら、急に遼平くんが私の肩を抱いた。
驚いて遼平くんの顔を見上げれば、やはり得意げな顔で晴臣を見ている。
え!?
ヤキモチ焼きの晴臣の目の前で、さすがに肩抱きはマズいでしょ。
何考えてるの?遼平くん!!?
一人狼狽えていると、あろうことか、晴臣はそのまま特に何も言わず歩き出した。
あまりにもあっさり立ち去る晴臣を、呆然と見送るしかできないでいると、肩を抱いていた遼平くんの手がそっと腕を撫でるように下ろされた。
「…椎名くん、何か様子おかしくなかった?今日の写真のこと何も言わなかったし。僕がちーちゃんに触っても怒らなかったね」
ボソッと隣でつぶやかれてハッとさせられる。
遼平くんの不可解な行動の理由が、晴臣の様子を変だと思ってのことだったのだと分かり、少しだけ安心した。
「そう、ですね。いつもならー」
目を吊り上げて速攻で遼平くんの手を払い退けるのにー
言いかけたところで、大分離れたところでピタリと晴臣が足を止めて振り返った。
「千歳!!」
やっぱり来たー!
今回は、意表を突く時間差攻撃!?
「な、何よ!?」
身の潔白を証明するように、遼平くんから気持ち離れて問い返せば。
「…顔パンッパンだぞ。そんなので週末撮影なのに大丈夫なのかよ?」
ここは会社のロビー。
時は昼休み終わり直前。
おまけに図体の大きい晴臣の声は、無駄によく通る。
私と遼平くんと同じようにお昼を外で済ませて続々と戻ってきた社員達の視線が一気に私に集まるのが分かり、ブワッと赤面した。
「よ、余計なお世話よ!さっさと仕事に戻りなさいよ!!」
隣で遼平くんが、「やっぱりいつもの椎名くん…かな」と笑いを噛み殺している。
今度こそ私達の前から立ち去ろうとする晴臣の背中に、心の中で罵詈雑言を浴びせていると、それを遮るように晴臣の背後に一人の女子社員が駆け寄り、親しげに肩を叩いた。
遼平くんも今までは、「永美ちゃんを失った夫」、「叔父」、「eternoの社長」の三つの顔しか見せてくれていなかったのに、最近は37歳の素の手塚遼平の顔を見せてくれているような気がする。
やっとの思いで恋心を手放したのに、その顔は狡い。
そんなふうに心のなかで恨み言を唱えつつ、私も割り切って『役得』ということにしようと言い聞かせながらオフィスに戻るなり、どこか浮足立つような気分は一掃された。
色んな意味で今一番会いたくない人間と鉢合わせてしまったのだ。
その手にはコンビニのレジ袋がぶら下がっていて、中には栄養ゼリーと惣菜パンが入っている。
「は…晴、臣」
さっきSNSにアップされた数々の写真が頭の中に散乱する。
晴臣の質素なお昼とかけ離れた、可愛くディスプレイされた色とりどりの料理。
#いちゃいちゃ #あまあま なんてタグ付けされるほど仲睦まじく食事する私と遼平くん。
ああ、まずい。
絶対に怒られるーーー!!
と、思ったのに。
晴臣は噛み付いてくるどころか、遼平くんに『お疲れさまです』と礼儀正しく挨拶している。
え?
何で??
デコピンくらいされるかもしれないと思い、顔の前でクロスさせて身構えた両腕が虚しい。
もしかしてまだあの写真見てないの???
この間は私のSNSアカウントに投稿があったときの通知をオンにして、遼平くんと同じ、アップされたタイミングで写真を確認していたのに。
「じゃあ、俺、すぐ戻らないといけないんで。引き続き千歳のこと頼みます」
「うん、大丈夫。全部僕に任せといて」
どことなく挑発的な言い方だなと思っていたら、急に遼平くんが私の肩を抱いた。
驚いて遼平くんの顔を見上げれば、やはり得意げな顔で晴臣を見ている。
え!?
ヤキモチ焼きの晴臣の目の前で、さすがに肩抱きはマズいでしょ。
何考えてるの?遼平くん!!?
一人狼狽えていると、あろうことか、晴臣はそのまま特に何も言わず歩き出した。
あまりにもあっさり立ち去る晴臣を、呆然と見送るしかできないでいると、肩を抱いていた遼平くんの手がそっと腕を撫でるように下ろされた。
「…椎名くん、何か様子おかしくなかった?今日の写真のこと何も言わなかったし。僕がちーちゃんに触っても怒らなかったね」
ボソッと隣でつぶやかれてハッとさせられる。
遼平くんの不可解な行動の理由が、晴臣の様子を変だと思ってのことだったのだと分かり、少しだけ安心した。
「そう、ですね。いつもならー」
目を吊り上げて速攻で遼平くんの手を払い退けるのにー
言いかけたところで、大分離れたところでピタリと晴臣が足を止めて振り返った。
「千歳!!」
やっぱり来たー!
今回は、意表を突く時間差攻撃!?
「な、何よ!?」
身の潔白を証明するように、遼平くんから気持ち離れて問い返せば。
「…顔パンッパンだぞ。そんなので週末撮影なのに大丈夫なのかよ?」
ここは会社のロビー。
時は昼休み終わり直前。
おまけに図体の大きい晴臣の声は、無駄によく通る。
私と遼平くんと同じようにお昼を外で済ませて続々と戻ってきた社員達の視線が一気に私に集まるのが分かり、ブワッと赤面した。
「よ、余計なお世話よ!さっさと仕事に戻りなさいよ!!」
隣で遼平くんが、「やっぱりいつもの椎名くん…かな」と笑いを噛み殺している。
今度こそ私達の前から立ち去ろうとする晴臣の背中に、心の中で罵詈雑言を浴びせていると、それを遮るように晴臣の背後に一人の女子社員が駆け寄り、親しげに肩を叩いた。
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