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「手塚社長は、好きになるだけ無駄って皆知ってるもの」
長い沈黙を破ったのは真由先輩。
「誰もあの女性以上の存在になんてなれっこないんだから」
吐き捨てるような言い方に、さっき押し込めたはずのモヤモヤが胸の奥でぶり返す。
「…あの女性って、永美ちゃんのことですか?」
私が言い当てたことに驚いたのか、真由先輩は丸く見開いた。
でも、それはほんの一瞬。
「ああ、そうよね。蓮見ちゃんはあの女性を知っているのね。姪っ子なんだから当然だわ」
私を捉える真由先輩の目は、大きく揺らいでいた。
「社長はね、永美さんが亡くなってからこれまで、社内の人間はもちろん、社外の人間とも一度も浮いた噂が流れたことがないの。きっと永美さんのこと、まだ愛してるのね」
やっぱりー
永美ちゃんが亡くなってからもう7年も経つのに。
遼平くんは、ずっと、ずっと、永美ちゃんだけをー
喜びと嫉妬で身震いしそうになるのを、そっと腕を組んで、二人にバレないように自分で自分を抱きしめるようにして堪える。
すると、真由先輩がぽん、と私の頭に手を置いた。
「…でも、ひょっとしたら、ひょっとしたりして。だって蓮見ちゃん…」
「千歳」
何かを懐かしむよう目をして私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる真由先輩の声を晴臣の声がかき消した。
振り返ると販売促進部のフロア入り口で、不機嫌そうな顔でこちらを睨み付けている。
「げっ。晴臣…!?何でここに!?」
「うわー、本物だ。近くで見ると迫力すごいね」
とか何とか言いつつ、飛鳥さんはスマホ片手に婚活組のグループLINEで『今椎名くん販促部。蓮見千歳とコンタクト中』などと打ち込んでいる。
「千歳、ちょっと顔貸せ」
「…イヤよ。もう就業時間始まるし」
晴臣の誘いを拒否する私をさり気なく促すように、真由先輩は「コーヒー淹れてくるね」と言い残して給湯室に消えてしまった。
「まだあと10分あるだろ」
「イヤだってば」
痺れを切らした晴臣は、ズカズカと販促部のフロアに入って来た。
「ちょっと、コレ借ります」
飛鳥先輩に向かって言うやいなや、私の腕をガッチリと掴んで歩き出した。
「えっ、ちょっ?晴臣!?助けてください飛鳥先輩!!」
「どうぞどうぞ、ごゆっくりー」
薄情にピラピラとスマホを持つ手を振る飛鳥さん。
画面には、「何か揉めてるっぽい。完全に痴話喧嘩」と打ち込まれているのがハッキリと見えた。
長い沈黙を破ったのは真由先輩。
「誰もあの女性以上の存在になんてなれっこないんだから」
吐き捨てるような言い方に、さっき押し込めたはずのモヤモヤが胸の奥でぶり返す。
「…あの女性って、永美ちゃんのことですか?」
私が言い当てたことに驚いたのか、真由先輩は丸く見開いた。
でも、それはほんの一瞬。
「ああ、そうよね。蓮見ちゃんはあの女性を知っているのね。姪っ子なんだから当然だわ」
私を捉える真由先輩の目は、大きく揺らいでいた。
「社長はね、永美さんが亡くなってからこれまで、社内の人間はもちろん、社外の人間とも一度も浮いた噂が流れたことがないの。きっと永美さんのこと、まだ愛してるのね」
やっぱりー
永美ちゃんが亡くなってからもう7年も経つのに。
遼平くんは、ずっと、ずっと、永美ちゃんだけをー
喜びと嫉妬で身震いしそうになるのを、そっと腕を組んで、二人にバレないように自分で自分を抱きしめるようにして堪える。
すると、真由先輩がぽん、と私の頭に手を置いた。
「…でも、ひょっとしたら、ひょっとしたりして。だって蓮見ちゃん…」
「千歳」
何かを懐かしむよう目をして私の頭をぐしゃぐしゃと撫でる真由先輩の声を晴臣の声がかき消した。
振り返ると販売促進部のフロア入り口で、不機嫌そうな顔でこちらを睨み付けている。
「げっ。晴臣…!?何でここに!?」
「うわー、本物だ。近くで見ると迫力すごいね」
とか何とか言いつつ、飛鳥さんはスマホ片手に婚活組のグループLINEで『今椎名くん販促部。蓮見千歳とコンタクト中』などと打ち込んでいる。
「千歳、ちょっと顔貸せ」
「…イヤよ。もう就業時間始まるし」
晴臣の誘いを拒否する私をさり気なく促すように、真由先輩は「コーヒー淹れてくるね」と言い残して給湯室に消えてしまった。
「まだあと10分あるだろ」
「イヤだってば」
痺れを切らした晴臣は、ズカズカと販促部のフロアに入って来た。
「ちょっと、コレ借ります」
飛鳥先輩に向かって言うやいなや、私の腕をガッチリと掴んで歩き出した。
「えっ、ちょっ?晴臣!?助けてください飛鳥先輩!!」
「どうぞどうぞ、ごゆっくりー」
薄情にピラピラとスマホを持つ手を振る飛鳥さん。
画面には、「何か揉めてるっぽい。完全に痴話喧嘩」と打ち込まれているのがハッキリと見えた。
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