俺の彼女記録

黒沢ハコ

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俺の彼女のなれないこと

こんなんでも、喜んでくれるから

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甘い......
どこからともなく、甘い砂糖のような匂いが
ただよってくる。
なんていったって、今日は二月十四日。
あっちもこっちも、浮かれている。
まぁ、俺もだけど。
毎年、俺の彼女は手作りでくれるが、
今年はなんだろうとそわそわしてしまう。
なんていったって、
彼女か作るものはとても美味しい。
しかも、俺好み。
そわそわしない方が、おかしい。
だけど......
いつも朝は、途中まで一緒だけれど、
今日はバラバラ。
彼女が委員会で、早くに呼ばれているからだ。
「あーあ」
「ため息つきたいのはこっちだよ」
後ろから、友達がやって来た。
「なんだ、まだもらってないのかよ」
その友達は、俺の鞄を勝手にあさって、
ガッカリする。
毎年、俺から彼女のチョコを奪おうとしてくる。
独り身の嫉妬だ。
「なに?
彼女に降られたわけー?」
近くの席の女子が、からかいに来た。
「ちげーし」
「ふーん、でも、愛想つかれそー。
海外だと、男の人から女の人に贈るんだって」
「へぇー」
その女子は、俺の机の上に雑誌を投げてくる。
鼻の高い男が、女に花束を送っていた。
たしか、あいつも花好きだったなぁ......
そんなことを考える。
俺がその雑誌をまじまじと見てると、
周りはクスクスと笑った。

学校終了のチャイムと同時に、
俺は外に駆け出した。
彼女と会えるのは、夜だ。
俺は、とりあえず商店街まで走って、
辺りを見回す。
普段行ったことのない店だから、
どこにあるかわからない。
「あった......」
とりあてず、店にはいる。
だけど...... 
何を選べばいいんだろう。
おれの小遣いでたりるかなぁ。
そんな心配をしていると、定員がちかづいてきた。
「彼女さんにですか?」
俺はおどろいて、とっさに首を横に降ったが、
ひとりじゃなんもできなくて、うなずいた。
「そうですか、なら、こちらはどうですか?」
定員は、さっとカラフルな花を取り、俺に見せた。
「んじゃ、それで......」
俺はそれを受け取って、家に走って帰った。

「ただいま!」
「あ、おかえりー」
家に帰ると、彼女がいた。
食卓には、晩御飯が並んでいた。
彼女が作ったのだろう。
「あれ、それどうしたの?」
彼女は、俺の手に握られている花束を見て、
首をかしげる。
「えっと......」
俺は、息を吸った。
「いつも、ありがとうそれと......」

愛してるよ

「えっ......」
彼女は、ピタリと止まり、顔を真っ赤にした。
「え、なん、いま......」
俺が花束を渡すと、
小さく「ありがとう」といった。
どうやら、喜んでいるらしい。
「あ、そうだ、本当はクッキー作ったんだけど、
友達にとられちゃって。
だから、代わりにご飯作ったの。
それと......」

私も好きだよ

本当に、本当に消え入りそうな声で君は呟いた。
こんなものでも喜んでくれるから、
もっと喜んでほしくなる。
また、なにかプレゼント買ってこよう。
今はただ......
君のとなりでご飯が食べたい。
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