16 / 20
俺の彼女の弱いとこ
そういうとこも含めて全部だろ?
しおりを挟む
彼女が風邪を引いた。
最近、ボーッとしていたり、
くしゃみをよくしていたが、
まさか風邪だったとは......
インフルじゃなかっただけ幸運だ。
「大丈夫か?」
「ん......」
モゾモゾと布団が動き、彼女が顔を出す。
熱が高く、食べたものは食べ分だけ
戻してしまうらしい。
弟は部活で、お母さんは仕事。
俺は、そんなお母さんに彼女のことを
まかせられた。
信頼されていて、とても嬉しい。
「りんごすったやつ、食べる?」
青白い顔の彼女は、うんともすんともいわない。
なるべくためてもらわないと、
治るものも治らないなぁ。
「ほら、たべて?」
リンゴを刺して彼女の口許に運ぶと、
パクリとかぶりついた。
モソモソと口を動かして、飲み込む。
それをひときれ分繰り返し、
彼女は口を閉じた。
そのまま、寝てしまった。
俺の時よりつらそうだ......
そっと、頭を撫でる。
少しだけ汗ばんでいた。
俺は、下からタオルと飲み物を取りに行くために
部屋を出る。
タオル数枚と、水分が多目の果物をいくつか切って、
また、彼女の部屋に向かう。
「ヒュ......」
ドア越しから、苦しそうな声が聞こえた。
驚きと戸惑いで、
ドアの前に立ち尽くしてしまったが、
俺は慌ててドアを開ける。
「大丈夫か?!」
俺は素早く、彼女に近寄った。
彼女は、すぐ近くのバケツの中に、
さっき食べたものを吐き出していた。
あまり食べなかったから、ほぼ胃液だが、
吐き気が収まらないのか、とても苦しそうだ。
俺は、彼女の髪を結んで、
そっと背中をさすった。
どれくらいたっただろう。
彼女は疲れきっていた。
すっかり吐き気は収まり、
倒れるようにベッドに横たわる。
「大丈夫か?」
彼女は、コクコクとうなずき、
ポカリをちょっとだけのむ。
もう、食べるのはよした方がいいかもしれない。
「......ね」
「ん?」
「ごめんね」
彼女は、独り言のように言った。
何をだろうか?
看病をしてもらっていること?
吐いたものを片付けてもらったこと?
俺には、よくわかりない。
「大丈夫」
俺はそういって、彼女の頭を撫でる。
「ごめんね......」
それでも、彼女は謝った。
「こんな、汚いもの見せちゃって......
嫌いになった、でしょ?」
彼女のほうをみる。
涙で一杯だ。
「そんなとこないよ」
俺は、彼女の枕元に座った。
「俺、前に友達にお前の好きなとこ
どこだって言われたとき何て答えたか
知ってるだろう?」
彼女は、うなずく。
友達が面白がって、
こっそり録音したのを聞かせたんだ。
「全部、って......」
そう、全部。
笑ってるとこも怒ってるとこも、
弱気なところもちょっとめんどくさいところも、
みんな、どうしようもなく愛しい。
「全部って、こういうこともだろ?」
彼女は、キョトンとした。
「お前が何度吐こうが、
俺が何度だって掃除してやる。
どんだけきたなかろうが、俺は平気だ。
俺は、お前の全部が好きだ。
全部って、そういうこともだろ?」
彼女は、とても驚いた顔をして、
フニャリと笑った。
「ありがとう」
そのまま、寝てしまった。
それからしばらくして、熱が下がって、
すっかり食欲も戻ってきた。
やっぱり、元気一杯な方が、彼女らしい。
「ねぇ」
彼女が、クイッと服の袖を引っ張る。
「ありがとう、私も好きだよ」
あぁ、やっぱり好きだ。
最近、ボーッとしていたり、
くしゃみをよくしていたが、
まさか風邪だったとは......
インフルじゃなかっただけ幸運だ。
「大丈夫か?」
「ん......」
モゾモゾと布団が動き、彼女が顔を出す。
熱が高く、食べたものは食べ分だけ
戻してしまうらしい。
弟は部活で、お母さんは仕事。
俺は、そんなお母さんに彼女のことを
まかせられた。
信頼されていて、とても嬉しい。
「りんごすったやつ、食べる?」
青白い顔の彼女は、うんともすんともいわない。
なるべくためてもらわないと、
治るものも治らないなぁ。
「ほら、たべて?」
リンゴを刺して彼女の口許に運ぶと、
パクリとかぶりついた。
モソモソと口を動かして、飲み込む。
それをひときれ分繰り返し、
彼女は口を閉じた。
そのまま、寝てしまった。
俺の時よりつらそうだ......
そっと、頭を撫でる。
少しだけ汗ばんでいた。
俺は、下からタオルと飲み物を取りに行くために
部屋を出る。
タオル数枚と、水分が多目の果物をいくつか切って、
また、彼女の部屋に向かう。
「ヒュ......」
ドア越しから、苦しそうな声が聞こえた。
驚きと戸惑いで、
ドアの前に立ち尽くしてしまったが、
俺は慌ててドアを開ける。
「大丈夫か?!」
俺は素早く、彼女に近寄った。
彼女は、すぐ近くのバケツの中に、
さっき食べたものを吐き出していた。
あまり食べなかったから、ほぼ胃液だが、
吐き気が収まらないのか、とても苦しそうだ。
俺は、彼女の髪を結んで、
そっと背中をさすった。
どれくらいたっただろう。
彼女は疲れきっていた。
すっかり吐き気は収まり、
倒れるようにベッドに横たわる。
「大丈夫か?」
彼女は、コクコクとうなずき、
ポカリをちょっとだけのむ。
もう、食べるのはよした方がいいかもしれない。
「......ね」
「ん?」
「ごめんね」
彼女は、独り言のように言った。
何をだろうか?
看病をしてもらっていること?
吐いたものを片付けてもらったこと?
俺には、よくわかりない。
「大丈夫」
俺はそういって、彼女の頭を撫でる。
「ごめんね......」
それでも、彼女は謝った。
「こんな、汚いもの見せちゃって......
嫌いになった、でしょ?」
彼女のほうをみる。
涙で一杯だ。
「そんなとこないよ」
俺は、彼女の枕元に座った。
「俺、前に友達にお前の好きなとこ
どこだって言われたとき何て答えたか
知ってるだろう?」
彼女は、うなずく。
友達が面白がって、
こっそり録音したのを聞かせたんだ。
「全部、って......」
そう、全部。
笑ってるとこも怒ってるとこも、
弱気なところもちょっとめんどくさいところも、
みんな、どうしようもなく愛しい。
「全部って、こういうこともだろ?」
彼女は、キョトンとした。
「お前が何度吐こうが、
俺が何度だって掃除してやる。
どんだけきたなかろうが、俺は平気だ。
俺は、お前の全部が好きだ。
全部って、そういうこともだろ?」
彼女は、とても驚いた顔をして、
フニャリと笑った。
「ありがとう」
そのまま、寝てしまった。
それからしばらくして、熱が下がって、
すっかり食欲も戻ってきた。
やっぱり、元気一杯な方が、彼女らしい。
「ねぇ」
彼女が、クイッと服の袖を引っ張る。
「ありがとう、私も好きだよ」
あぁ、やっぱり好きだ。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
ずぶ濡れで帰ったら彼氏が浮気してました
宵闇 月
恋愛
突然の雨にずぶ濡れになって帰ったら彼氏が知らない女の子とお風呂に入ってました。
ーーそれではお幸せに。
以前書いていたお話です。
投稿するか悩んでそのままにしていたお話ですが、折角書いたのでやはり投稿しようかと…
十話完結で既に書き終えてます。
拝啓、私を追い出した皆様 いかがお過ごしですか?私はとても幸せです。
香木あかり
恋愛
拝啓、懐かしのお父様、お母様、妹のアニー
私を追い出してから、一年が経ちましたね。いかがお過ごしでしょうか。私は元気です。
治癒の能力を持つローザは、家業に全く役に立たないという理由で家族に疎まれていた。妹アニーの占いで、ローザを追い出せば家業が上手くいくという結果が出たため、家族に家から追い出されてしまう。
隣国で暮らし始めたローザは、実家の商売敵であるフランツの病気を治癒し、それがきっかけで結婚する。フランツに溺愛されながら幸せに暮らすローザは、実家にある手紙を送るのだった。
※複数サイトにて掲載中です
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……
希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。
幼馴染に婚約者を奪われたのだ。
レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。
「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」
「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」
誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。
けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。
レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。
心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。
強く気高く冷酷に。
裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。
☆完結しました。ありがとうございました!☆
(ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在))
(ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9))
(ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在))
(ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))
今、夫と私の浮気相手の二人に侵されている
ヘロディア
恋愛
浮気がバレた主人公。
夫の提案で、主人公、夫、浮気相手の三人で面会することとなる。
そこで主人公は男同士の自分の取り合いを目の当たりにし、最後に男たちが選んだのは、先に主人公を絶頂に導いたものの勝ち、という道だった。
主人公は絶望的な状況で喘ぎ始め…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる