僕とあの子と一ヶ月

黒沢ハコ

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気になり始めた二週目

大切に

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あれから数日。
僕はなかなか、実行できないでいた。
レイは、
僕がいなくなると僕を探すようになった。
なぜだかわからない。
寝ているときにそっと離れると、
起き出してしまう。
まるで、本で読んだ赤ちゃんのようだ。
僕は、対策を練った。
いっそのこと、
レイと一緒にいけばいいと思ったが、
それはいけない気がした。
なにか、大きなものがある気がした。
僕はまず、レイを外で思いっきり遊ばせて、
お腹一杯ご飯を食べさせた。
そしたら、
疲労と満腹で眠くなるだろうと思ったら、
案の定、一緒に遊んだ僕も眠くなった。
ならばと、
真夜中にこっそり起きてみたのだが、
すぐにレイに見つかってしまった。
レイに待つようにいっても、
かくれんぼをしても、
すぐに見つかってしまいお手上げ。
「はぁ~......」
僕は、ため息をつくしかなかった。
そんな僕の隣では、レイが眠っている。
小さな吐息をたてて、ほんの少し、
微笑んでいる気がした。
どんな夢を見ているのだろう。
外で遊んでいる夢か、
たくさん好きなものを食べている夢か。
僕はそっと、レイの頭を撫でる。
ふと、僕は思った。
レイの好きな遊びってなに?
レイの好きな食べ物は?
好きな色、好きな花、好きな動物......
レイは、しゃべれない。
けれども、この一週間、
毎日一緒に過ごしていた。
なのに僕は、レイについてなにも知らない。
レイは、いろんなことをするし、
なんでも食べる。
でも、だからといって一番がないはずはない。
なんだか、無性に悔しくなった。
僕の頭にはもう、この事で一杯だった。
さっきのことなんて忘れてしまっていた。
一ヶ月。
レイと一緒にいられる期間。
それは、遠いようでとても近い、
何とも言えない時間だ。
時間、大切にしよう。
そう思って僕は、眠った。
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