13 / 40
『始まりの街』
12.貴方に運命を感じる
しおりを挟む
とりあえず、町でやる事が無くなってしまったのでフィールドへと向かう事にした。俺がまだ行っていないのは東の草原と北の洞窟である。
東の草原は未だに初心者の絶好の狩場として賑わってるし、今日の朝方に弱い癖にスキルのレベル上げに最適なモンスターが東の草原で発見されたらしいから、それも相まってかなり人が多いそうだ。…まあ、テイル情報なんだけどね。
北の洞窟に到着した。一応、始まりの街周辺では最難関の場所である。色々厄介な敵がいるそうだ。
というか『忘れ去られた採掘場』と違って全く整備されていないんだな。まあ、洞窟だから当たり前か。
そんな中身が全くない感想を脳内で述べながら、北の洞窟へと足を踏み入れた。
洞窟内は松明が所々に差し込んであり、明るかった。松明の炎は本当に熱いのかと思い、少し触れてみようとして手をかざそうとしたら、何か障壁みたいなモノが突然展開しだして松明を囲い込んだ。
「あ~、なるほど。盗難防止か」
良く出来ている、そう思った。確かに、ランプなどのアイテムが買えない人は原始的ながらも松明と言う光源を奪取する人も存在するだろう。まあ、ここら辺は仕方ないな。
「まっ、進みますか」
とりあえず、進むことにした。
地面は非常にゴツゴツとしており、歩きづらい。しっかりと下に気を付けながら歩いて行かなくては危ないだろう。
……しばらく歩いていると、ズル…ズル…と何かが這いずる音がした。とりあえずは〈気配察知〉を発動させつつ、その音がする方へと静かに歩みを進めていく。
「――――発見」
音の正体は、モンスターの大きなカタツムリだった。調べると、ロックマイマイと言う名前のモンスターらしい。背中に背負っている殻の部分が、岩になっている。
「さて、始まりの街最難関…『北の洞窟』、行ってみようか―――」
小さくそんなことを呟きながら、《隠蔽》を発動し走り出す。たった5秒間の短い隠蔽効果だが、もう慣れた。まずは、あの重そうな岩石殻を活かそう。
世界はまだ自分の存在を認知しないでくれている。その間に近づくことがキーとなるのはいつも通り。そこからが問題だ。
ありがたい事に洞窟は狭い。そのため、壁を蹴りながら一瞬で近づくことが可能だった。だが上手く成功させるのは《視覚強化》の補助が必須だったが。
「〈回し蹴り〉ィ!!」
岩壁を蹴ったままの勢いでそのまま《体術》初期アーツの〈回し蹴り〉を発動する。かなりの量の反射ダメージが来たが、〈回し蹴り〉はロックマイマイの岩石殻に直撃し、そのまま大きく横転させることに成功した。
ロックマイマイは岩石殻の重量のせいで起き上がれずにいる。ここまで来たらもう、まな板の上の鯉同然だ。俺は横転して何もできずにいるロックマイマイの岩石殻に容赦なく【夕闇のアシッドダガー】を突き刺す。
そのまま、出来る事なら抉ってHPを全損させようと思っていたのだが突然謎の現象が発生した。
ブシャァァァ!!
「ふぉぅ!?」
突然、ダガーの刀身から液体が飛び出したのだ。その液体はロックマイマイの岩石殻にびちゃりと掛かり、そのまま殻をジュワァァァァ!と溶かし始めたのだ。どういう事だ、と思考を巡らせているとやっとこさ理解が追い付いた。
アレである。
このダガーの【特殊効果】の「酸発生」だ。どうやらあのビッグフロッガーの強酸性をそのまま受け継いでいる酸らしく、かなり強力なモノである。
ロックマイマイは少し呻きながらも岩石殻についた酸でダメージを受け続けている。どうやら岩石殻もダメージが入る判定になっているようで有難い。
俺は岩石殻に突き刺さっているダガーを抜き、本体……と言うべきだろうか。
ロックマイマイのぐにょぐにょしている身体の方へとグサリと突き刺した。ロックマイマイは小さな鳴き声を上げ、光の粒子となって消滅した。
ドロップ品は【ロックマイマイの岩石欠片】だった。岩石欠片って…これ何に使うんだよ…。
まあ、いいや。とりあえず進もう。俺は自分のスキルを弄りながら奥へと進みだした。
* * * * * * * * * * * * *
ちょっと新しいスキルを獲得してみた。
《立体機動》というスキルだ。獲得に必要なスキルポイントが8でかなり迷いながらの決断だったが、先程の戦いで敵に素早く近づくには機動力がもっと欲しいと感じたのだ。
このスキルがしっかりと機能するスキルだったらいいんだが……、
と思っていたのだがそんな心配はいらなかった―――――――。
「ハハッ!すげぇや!!」
ヒュン、トン!ヒュン!
しばらくは狭い洞窟で、慣れるために壁キック空中移動を試してみていた。
最初は全くうまくいかなくて、何十回も、何百回も空中から落下した。その度狙っていたかのように、ロックマイマイやガンハンド、スモールゴーレムなどのモンスターが出てきた。まあ、どうにか倒してまた練習を再開したけど。
大体《立体機動》のスキルレベルが10くらいになった頃だろうか?
突如として使い心地が劇変したのだ。今までは、ジャンプして壁を蹴っても次の壁へとたどり着くことが出来ず、落下するだけだった。しかし、10レベルくらいからはどうにか届くようになったのだ。
やっと使い物になってきた。そう感じた。まあ、空中移動以外にも様々な事が可能となっており、その他諸々の行動にも+補正もかかっているのだが。
「よし!行こうかな」
使い物になったスキルを使うのを楽しみにしながら、奥へと進む。
俺が《立体機動》の練習をしている間に何人かプレイヤー達が通り過ぎていったが、皆俺の事を変な目で見ていた。まあ、わざわざこんなところでスキル練習する方がおかしいか。
もう、練習している間にかなりのモンスターと戦ったため、ココの最初に出現するモンスターの対策は大体分かった。ロックマイマイは転がして、ガンハンドは闇魔法で、スモールゴーレムは背後からの〈かかと落とし〉。
《体術》アーツはここのモンスターとは相性はあまり良くないのだが、如何せん攻撃手段が少ない序盤はごり押していくしかないだろう。今度、《調薬》で爆発物でも作ってみようか。
…と、しばらく歩いていると人だかりが出来ているのを発見した。まあ、人だかりと言っても8人ほどだ。何だろうと思い、人だかりの一人の鞭を持っているプレイヤーに聞いてみることにした。
「なあ、なんかあったのか?」
鞭持ちのプレイヤーはこちらを振り向き、すぐに答えた。
「ああ、とうとうボスゲートが発見されたんだ。今そのデカいゲートを掘り出してるんだ」
その後も色々と教えてくれた。まあ、まとめるとこういう事だ。
一人の生産プレイヤーがとあるアイテムを求めてこの洞窟に入ったそうだ。どうにかそのアイテムをゲットした生産プレイヤーはもう少し奥へと進むことにした。奥へ進んでいる途中で生産プレイヤーはとあることを思い付いた。
「ココだって洞窟だ。鉱石の一つや二つあるんじゃないか?」
最近、『南の森林』で発見された採掘場は鍛冶職人たちでぎゅうぎゅう詰め。そんな中で採掘をするのは至難の業だ。そんな中、思い付いた一つの名案。生産プレイヤーは早速、ツルハシを装備し適当に壁を壊し始めた。
しかし、全く壊れない。当たり前である。この洞窟にも一応採掘エリアというモノは存在するが、そのエリア以外は破壊不可となっている。しかしそれを知らない生産職プレイヤーは、「きっと今掘っている壁が固すぎるんだ」と思い、適当に壁をガンガンと叩き始めた。
移動しては壁にツルハシを当て、移動しては壁にツルハシを当てる。それを何回も繰り返した。何回目だろうか?そろそろ諦めようと思いながらも、ツルハシを岩壁に当てた瞬間、ボゴッ!と岩が崩れたのだ。
生産職プレイヤーは喜び、そこの岩壁をどんどん崩し始めた……。
そうして、今に至る……と言う事らしい。
なぜ、今掘っているのがボスゲートと言う事が分かっているかと言うと、ココにβ組がいたからである。β組のPTがここを通りかけた時に壁を掘っているプレイヤーを見かけ、その発掘物の一部がボスゲートの一部分と似通っていたらしい。
「なんでこんな分かりにくいところに…下手したらずっと発見できなかったかもしれないぞ…」
「βの時は西の草原の山岳付近にあったのにな…」
βプレイヤーが呟いている。
俺も一応《採掘》スキルを持っているので、手伝おうと思ったがその前に―――、
ガラガラガラガラガラガラ――――――!
「よし!壊れたぞー!」
壁をずっと黙々と壊し続けていた生産職プレイヤーが言った。その途端、辺りの空気が変わる。そんな空気の中、βプレイヤーが言葉を紡ぐ。
「ありがとう、モブル君。一応βプレイヤーとして情報はすべて話しておこう」
βプレイヤーPTのリーダーみたいな人が採掘をしてくれいていたプレイヤーにお礼を言って、こちらにそう言ってきた。まあ、無料で情報を提供してくれるなら有難い。金とかとらないだけ良心的だ。
「ボスゲート。名の通り、通るとボスがいる部屋へと誘われる門だ。ゲートのすぐ横にあるルーレットは分かるか?」
俺とそれ以外のプレイヤー達がβプレイヤーの指さした方向を見る。そこにはゲートと独立している台の様なモノの上にルーレットが乗っているのを確認できる。
「それは”ボスルーレット”。それぞれ様々な文字が書いてあるだろ?そのルーレットを回さなくちゃゲートには入れないんだ。まあ、”例外”あるが…。」
”例外”という言葉が気になったがとりあえず、ルーレットの文字を見る。クルクルと回るタイプのルーレットにはそれぞれ色枠で別れており、≪ボス1.5倍強化≫≪ボス2倍強化≫≪ドロップ率UP≫等、色々書いてある。
その中で、色枠がとても小さく当たる確率が低いのが二つある。≪PT全員1.5倍強化≫と≪自分1.5倍強化≫である。
「見て分かる通り、ボスルーレットはギャンブルだが当たれば勝率はグンと上がる。PTだったら一人が回せば良い」
皆、なるほどと頷いている。さて、ボスゲートに入るかどうか…迷うな…
「あ、そうそう。ゲートの上にランプがあるけどこれは『緑』に光ってたら余裕で戦っている。『黄色』に光ってたら少し戦況は悪い。『赤』はピンチ。光が消えると全滅を示しているよ」
外からも戦況が分かる仕様になっているのか。
そんなことを考えていると先程まで親切に説明していたβプレイヤーが再度口を開く。
「さて、こんなに説明したんだし最初に入っていいか?初回討伐ボーナス欲しいし」
あ~……そういう事ね。今まで見ず知らずの俺たちに何でこんなに親切に説明してくれるんだろうと思っていたが、その初回討伐ボーナスが欲しいと、そういう訳だったんだな。
まあ、一応かなり有力な情報を教えてくれたんだし、仕方ないな。そんな事を思っていると、話を聞いていたもう一つPTの一人が文句を言い出した。
「おい!それは酷いぞ!そういう条件は最初に言っとけよ!」
まあ、そうなるよな。
結局、その文句を言ったプレイヤーはPTの連中から「まあ、まあ」となだめられ、しばらくして諦めたようだった。一応諦めが良くて助かったのかな。
βプレイヤーの後ろにいる数人の仲間は皆、文句を言ったプレイヤーに「ゴメン…!」と言ったようなポーズを取っている。
「じゃあ、すまないな」
βプレイヤーがそう言いながらルーレットを回す。
そして止まったのは≪ボス攻撃力のみ1.3倍強化≫だった。βプレイヤーは「チッ…」と舌打ちをしながら、PTを連れて入ろうとしていく……が最後にまた此方を向いて口を開いた――、
「一つ言い忘れた。βの時のここのボスは――――――蛙だ」
「また、蛙かよーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
俺の叫びが洞窟内に響き渡った。
プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
《短剣》Lv22(↑4UP)《体術》Lv24(↑6UP)《闇魔法》Lv19(↑4UP)
《盗賊》Lv22(↑6UP)《隠蔽》Lv29(↑7UP)《視覚強化》Lv25(↑7UP)
《立体機動》Lv12(↑11UP)(New)《鍛冶》Lv23《調薬》Lv12《採掘》Lv10
スキルポイント:14
【二つ名】
終焉スキラー
*************************
《立体機動》
立体的な動きが可能となる。《四足機動》似て非なるモノ。空中行動への+補正や走行への+補正が大きくかかり、かなり自由自在な動きに期待が持てる。このスキルはパッシブだが、一つだけアーツを覚える。
※ノアはもうそのアーツを覚えていますがまだ知りません。
東の草原は未だに初心者の絶好の狩場として賑わってるし、今日の朝方に弱い癖にスキルのレベル上げに最適なモンスターが東の草原で発見されたらしいから、それも相まってかなり人が多いそうだ。…まあ、テイル情報なんだけどね。
北の洞窟に到着した。一応、始まりの街周辺では最難関の場所である。色々厄介な敵がいるそうだ。
というか『忘れ去られた採掘場』と違って全く整備されていないんだな。まあ、洞窟だから当たり前か。
そんな中身が全くない感想を脳内で述べながら、北の洞窟へと足を踏み入れた。
洞窟内は松明が所々に差し込んであり、明るかった。松明の炎は本当に熱いのかと思い、少し触れてみようとして手をかざそうとしたら、何か障壁みたいなモノが突然展開しだして松明を囲い込んだ。
「あ~、なるほど。盗難防止か」
良く出来ている、そう思った。確かに、ランプなどのアイテムが買えない人は原始的ながらも松明と言う光源を奪取する人も存在するだろう。まあ、ここら辺は仕方ないな。
「まっ、進みますか」
とりあえず、進むことにした。
地面は非常にゴツゴツとしており、歩きづらい。しっかりと下に気を付けながら歩いて行かなくては危ないだろう。
……しばらく歩いていると、ズル…ズル…と何かが這いずる音がした。とりあえずは〈気配察知〉を発動させつつ、その音がする方へと静かに歩みを進めていく。
「――――発見」
音の正体は、モンスターの大きなカタツムリだった。調べると、ロックマイマイと言う名前のモンスターらしい。背中に背負っている殻の部分が、岩になっている。
「さて、始まりの街最難関…『北の洞窟』、行ってみようか―――」
小さくそんなことを呟きながら、《隠蔽》を発動し走り出す。たった5秒間の短い隠蔽効果だが、もう慣れた。まずは、あの重そうな岩石殻を活かそう。
世界はまだ自分の存在を認知しないでくれている。その間に近づくことがキーとなるのはいつも通り。そこからが問題だ。
ありがたい事に洞窟は狭い。そのため、壁を蹴りながら一瞬で近づくことが可能だった。だが上手く成功させるのは《視覚強化》の補助が必須だったが。
「〈回し蹴り〉ィ!!」
岩壁を蹴ったままの勢いでそのまま《体術》初期アーツの〈回し蹴り〉を発動する。かなりの量の反射ダメージが来たが、〈回し蹴り〉はロックマイマイの岩石殻に直撃し、そのまま大きく横転させることに成功した。
ロックマイマイは岩石殻の重量のせいで起き上がれずにいる。ここまで来たらもう、まな板の上の鯉同然だ。俺は横転して何もできずにいるロックマイマイの岩石殻に容赦なく【夕闇のアシッドダガー】を突き刺す。
そのまま、出来る事なら抉ってHPを全損させようと思っていたのだが突然謎の現象が発生した。
ブシャァァァ!!
「ふぉぅ!?」
突然、ダガーの刀身から液体が飛び出したのだ。その液体はロックマイマイの岩石殻にびちゃりと掛かり、そのまま殻をジュワァァァァ!と溶かし始めたのだ。どういう事だ、と思考を巡らせているとやっとこさ理解が追い付いた。
アレである。
このダガーの【特殊効果】の「酸発生」だ。どうやらあのビッグフロッガーの強酸性をそのまま受け継いでいる酸らしく、かなり強力なモノである。
ロックマイマイは少し呻きながらも岩石殻についた酸でダメージを受け続けている。どうやら岩石殻もダメージが入る判定になっているようで有難い。
俺は岩石殻に突き刺さっているダガーを抜き、本体……と言うべきだろうか。
ロックマイマイのぐにょぐにょしている身体の方へとグサリと突き刺した。ロックマイマイは小さな鳴き声を上げ、光の粒子となって消滅した。
ドロップ品は【ロックマイマイの岩石欠片】だった。岩石欠片って…これ何に使うんだよ…。
まあ、いいや。とりあえず進もう。俺は自分のスキルを弄りながら奥へと進みだした。
* * * * * * * * * * * * *
ちょっと新しいスキルを獲得してみた。
《立体機動》というスキルだ。獲得に必要なスキルポイントが8でかなり迷いながらの決断だったが、先程の戦いで敵に素早く近づくには機動力がもっと欲しいと感じたのだ。
このスキルがしっかりと機能するスキルだったらいいんだが……、
と思っていたのだがそんな心配はいらなかった―――――――。
「ハハッ!すげぇや!!」
ヒュン、トン!ヒュン!
しばらくは狭い洞窟で、慣れるために壁キック空中移動を試してみていた。
最初は全くうまくいかなくて、何十回も、何百回も空中から落下した。その度狙っていたかのように、ロックマイマイやガンハンド、スモールゴーレムなどのモンスターが出てきた。まあ、どうにか倒してまた練習を再開したけど。
大体《立体機動》のスキルレベルが10くらいになった頃だろうか?
突如として使い心地が劇変したのだ。今までは、ジャンプして壁を蹴っても次の壁へとたどり着くことが出来ず、落下するだけだった。しかし、10レベルくらいからはどうにか届くようになったのだ。
やっと使い物になってきた。そう感じた。まあ、空中移動以外にも様々な事が可能となっており、その他諸々の行動にも+補正もかかっているのだが。
「よし!行こうかな」
使い物になったスキルを使うのを楽しみにしながら、奥へと進む。
俺が《立体機動》の練習をしている間に何人かプレイヤー達が通り過ぎていったが、皆俺の事を変な目で見ていた。まあ、わざわざこんなところでスキル練習する方がおかしいか。
もう、練習している間にかなりのモンスターと戦ったため、ココの最初に出現するモンスターの対策は大体分かった。ロックマイマイは転がして、ガンハンドは闇魔法で、スモールゴーレムは背後からの〈かかと落とし〉。
《体術》アーツはここのモンスターとは相性はあまり良くないのだが、如何せん攻撃手段が少ない序盤はごり押していくしかないだろう。今度、《調薬》で爆発物でも作ってみようか。
…と、しばらく歩いていると人だかりが出来ているのを発見した。まあ、人だかりと言っても8人ほどだ。何だろうと思い、人だかりの一人の鞭を持っているプレイヤーに聞いてみることにした。
「なあ、なんかあったのか?」
鞭持ちのプレイヤーはこちらを振り向き、すぐに答えた。
「ああ、とうとうボスゲートが発見されたんだ。今そのデカいゲートを掘り出してるんだ」
その後も色々と教えてくれた。まあ、まとめるとこういう事だ。
一人の生産プレイヤーがとあるアイテムを求めてこの洞窟に入ったそうだ。どうにかそのアイテムをゲットした生産プレイヤーはもう少し奥へと進むことにした。奥へ進んでいる途中で生産プレイヤーはとあることを思い付いた。
「ココだって洞窟だ。鉱石の一つや二つあるんじゃないか?」
最近、『南の森林』で発見された採掘場は鍛冶職人たちでぎゅうぎゅう詰め。そんな中で採掘をするのは至難の業だ。そんな中、思い付いた一つの名案。生産プレイヤーは早速、ツルハシを装備し適当に壁を壊し始めた。
しかし、全く壊れない。当たり前である。この洞窟にも一応採掘エリアというモノは存在するが、そのエリア以外は破壊不可となっている。しかしそれを知らない生産職プレイヤーは、「きっと今掘っている壁が固すぎるんだ」と思い、適当に壁をガンガンと叩き始めた。
移動しては壁にツルハシを当て、移動しては壁にツルハシを当てる。それを何回も繰り返した。何回目だろうか?そろそろ諦めようと思いながらも、ツルハシを岩壁に当てた瞬間、ボゴッ!と岩が崩れたのだ。
生産職プレイヤーは喜び、そこの岩壁をどんどん崩し始めた……。
そうして、今に至る……と言う事らしい。
なぜ、今掘っているのがボスゲートと言う事が分かっているかと言うと、ココにβ組がいたからである。β組のPTがここを通りかけた時に壁を掘っているプレイヤーを見かけ、その発掘物の一部がボスゲートの一部分と似通っていたらしい。
「なんでこんな分かりにくいところに…下手したらずっと発見できなかったかもしれないぞ…」
「βの時は西の草原の山岳付近にあったのにな…」
βプレイヤーが呟いている。
俺も一応《採掘》スキルを持っているので、手伝おうと思ったがその前に―――、
ガラガラガラガラガラガラ――――――!
「よし!壊れたぞー!」
壁をずっと黙々と壊し続けていた生産職プレイヤーが言った。その途端、辺りの空気が変わる。そんな空気の中、βプレイヤーが言葉を紡ぐ。
「ありがとう、モブル君。一応βプレイヤーとして情報はすべて話しておこう」
βプレイヤーPTのリーダーみたいな人が採掘をしてくれいていたプレイヤーにお礼を言って、こちらにそう言ってきた。まあ、無料で情報を提供してくれるなら有難い。金とかとらないだけ良心的だ。
「ボスゲート。名の通り、通るとボスがいる部屋へと誘われる門だ。ゲートのすぐ横にあるルーレットは分かるか?」
俺とそれ以外のプレイヤー達がβプレイヤーの指さした方向を見る。そこにはゲートと独立している台の様なモノの上にルーレットが乗っているのを確認できる。
「それは”ボスルーレット”。それぞれ様々な文字が書いてあるだろ?そのルーレットを回さなくちゃゲートには入れないんだ。まあ、”例外”あるが…。」
”例外”という言葉が気になったがとりあえず、ルーレットの文字を見る。クルクルと回るタイプのルーレットにはそれぞれ色枠で別れており、≪ボス1.5倍強化≫≪ボス2倍強化≫≪ドロップ率UP≫等、色々書いてある。
その中で、色枠がとても小さく当たる確率が低いのが二つある。≪PT全員1.5倍強化≫と≪自分1.5倍強化≫である。
「見て分かる通り、ボスルーレットはギャンブルだが当たれば勝率はグンと上がる。PTだったら一人が回せば良い」
皆、なるほどと頷いている。さて、ボスゲートに入るかどうか…迷うな…
「あ、そうそう。ゲートの上にランプがあるけどこれは『緑』に光ってたら余裕で戦っている。『黄色』に光ってたら少し戦況は悪い。『赤』はピンチ。光が消えると全滅を示しているよ」
外からも戦況が分かる仕様になっているのか。
そんなことを考えていると先程まで親切に説明していたβプレイヤーが再度口を開く。
「さて、こんなに説明したんだし最初に入っていいか?初回討伐ボーナス欲しいし」
あ~……そういう事ね。今まで見ず知らずの俺たちに何でこんなに親切に説明してくれるんだろうと思っていたが、その初回討伐ボーナスが欲しいと、そういう訳だったんだな。
まあ、一応かなり有力な情報を教えてくれたんだし、仕方ないな。そんな事を思っていると、話を聞いていたもう一つPTの一人が文句を言い出した。
「おい!それは酷いぞ!そういう条件は最初に言っとけよ!」
まあ、そうなるよな。
結局、その文句を言ったプレイヤーはPTの連中から「まあ、まあ」となだめられ、しばらくして諦めたようだった。一応諦めが良くて助かったのかな。
βプレイヤーの後ろにいる数人の仲間は皆、文句を言ったプレイヤーに「ゴメン…!」と言ったようなポーズを取っている。
「じゃあ、すまないな」
βプレイヤーがそう言いながらルーレットを回す。
そして止まったのは≪ボス攻撃力のみ1.3倍強化≫だった。βプレイヤーは「チッ…」と舌打ちをしながら、PTを連れて入ろうとしていく……が最後にまた此方を向いて口を開いた――、
「一つ言い忘れた。βの時のここのボスは――――――蛙だ」
「また、蛙かよーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」
俺の叫びが洞窟内に響き渡った。
プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
《短剣》Lv22(↑4UP)《体術》Lv24(↑6UP)《闇魔法》Lv19(↑4UP)
《盗賊》Lv22(↑6UP)《隠蔽》Lv29(↑7UP)《視覚強化》Lv25(↑7UP)
《立体機動》Lv12(↑11UP)(New)《鍛冶》Lv23《調薬》Lv12《採掘》Lv10
スキルポイント:14
【二つ名】
終焉スキラー
*************************
《立体機動》
立体的な動きが可能となる。《四足機動》似て非なるモノ。空中行動への+補正や走行への+補正が大きくかかり、かなり自由自在な動きに期待が持てる。このスキルはパッシブだが、一つだけアーツを覚える。
※ノアはもうそのアーツを覚えていますがまだ知りません。
0
お気に入りに追加
1,072
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
『王家の面汚し』と呼ばれ帝国へ売られた王女ですが、普通に歓迎されました……
Ryo-k
ファンタジー
王宮で開かれた側妃主催のパーティーで婚約破棄を告げられたのは、アシュリー・クローネ第一王女。
優秀と言われているラビニア・クローネ第二王女と常に比較され続け、彼女は貴族たちからは『王家の面汚し』と呼ばれ疎まれていた。
そんな彼女は、帝国との交易の条件として、帝国に送られることになる。
しかしこの時は誰も予想していなかった。
この出来事が、王国の滅亡へのカウントダウンの始まりであることを……
アシュリーが帝国で、秘められていた才能を開花するのを……
※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています。
シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。
宿命の御手
日向 白猫
SF
カフェ&バー「Fingers」で働くアーヌラーリウスはある日、不思議な夢を見る。セピア色の海を漂い、そしてそのまま浮き上がる、という妙な夢――。しかし、目覚めるといつも通りの彼の日常が待っていて、漫然とそれに埋もれていく。夢の意味も分からぬまま。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる