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『始まりの街』
4.鍛冶
しおりを挟む俺はワフットを倒した後も、何匹かモンスターを狩っていた。
《隠蔽》からの《体術》&《短剣》のアーツコンボで殆どのモンスターは普通に屠ることが出来た。特に〈スラッシュ〉と《視覚強化》の合わせがかなり強力でクリティカルが連発した。
お陰でそこそこスキルレベルも上がったので、一度テイルと合流することにした。
テイルと合流すると、戦果を聞いてくるので素直に何匹倒したかを話すと「なんでクソスキルでそんなに稼げてんだ!?俺まだヘッドドッグ3体だけだぜ!?」と言っていた。さすがに遅くねえか…?
俺は「《隠蔽》からの急所を狙った〈スラッシュ〉のコンボで…」と言い返したら「そんな何回も上手く急所にあてられるはずがない」と言われてしまった。
いや、当てられるんだって…《視覚強化》と《体術》補正のお陰で狙いやすくなってんだよ…何の補正かは知らんけど補正が掛かってるんだから…
そんなことを言い返そうとしたがそうするとまたなんか言われそうなので、何も言わなかった。アイツは「論破した」みたいなどや顔していてクソうざかった。
俺とテイルはそのまま始まりの街に帰ることにした。段々と西の草原にもプレイヤーが増えてきたしな。
*************************
「んじゃまた今度な!ノア」
「ああ、そっちも頑張れよ。テイル」
俺とテイルは始まりの街に入ったら簡単な挨拶だけしてすぐに別れた。あいつはβ版の奴らとなぜか仲がいいので一緒にPTを組むそうだ。
「一緒に来ないか?」と誘われたが俺は自由なプレイをしたいと思っているので素直に断った。テイルはやっぱりと言ったような顔をしていた。
その日はそのまま宿屋に行ってログアウトした。
プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
《短剣》Lv9(↑3UP)《体術》Lv9(↑4UP)《闇魔法》Lv8(↑3UP)
《盗賊》Lv10(↑3UP)《隠蔽》Lv11(↑5UP)《視覚強化》Lv8(↑6UP)
《鍛冶》Lv1《調薬》Lv1
スキルポイント:2
*************************
その次の日、俺は会社から帰ると、コンビニで買ってきた弁当を食べ、風呂に入って、いつでも寝れる服装になって俺はVR機器を頭に装着した。
「んじゃ、行きますか」
そんなことを言いながらボタンを押し、仰向けになって『プライム・ワールド・オンライン』の中に意識を落としていった。
今日は《鍛冶》スキルのLv上げも兼ねて、鍛冶をやってみたいと思う。残念ながら鉱石などはないので一から武器を作ることはできない。なので今持っている短剣を昨日のドロップ品を使って強化する形になるが…
ちなみにだが初期短剣の性能をもう一度確認するとこんな感じだ。
【始まりの短剣】
始まりを告げる短剣。能力値は非常に低く、すぐに買い替えるべき。
初心者にはお似合いの武器シリーズ。
【性能評価】攻撃+5
【特殊効果】「耐久度∞」
【耐久度】∞/∞
「耐久度∞」という特殊効果がついているがこれはこういうゲームにありがちなモノだ。いきなり武器が壊れて武器なしになっちゃったら詰む可能性だって出てくるもんな。
今回はこれをどこまで強くすることが出来るかだ。今回は鍛冶に慣れるためにやるだけだから失敗しても大丈夫。お金は減るがどこかで短剣を買えばいい話だ。
あと、この初期武器は〈強化合成〉というアーツによる強化が一回しかできないらしい。普通の武器は最大五回までできるらしく、一回の最大アイテム合成数は3つだそうだ。
ちなみに強化の種類は、今説明したばかりの、アーツを使いアイテムを取り込んで、性能を上げる『内部強化』と、外観にアイテムをつけるなどの工夫を施す『外部強化』の二つがある。
初期武器はどちらも一回で、普通の武器は先程言ったように『内部強化』が5回、『外部強化』は初期武器と同じく1回しかできない。これは暗記モノである。
そのため初期装備は一回勝負になる。まあ、どうせすぐに変えるし、失敗しても構わないんだがな。
ちなみに言ってなかったがこの世界のお金の単位は『セルト』。初期資産は2000セルだ。昨日、ログアウトするために宿屋で20セルトだけ払ったため今は1980セルトだ。最初の街と言う事もあり、料金設定は安めになっているらしい。
俺は生産作業場、詳しく説明すれば『料理場』『調薬場』『錬金場』などなどの生産に適した場所が密集する建物に向かう。もちろん鍛冶がしやすいスペースもあり、今回俺は『鍛冶場』を使う。
別にどこでも生産はできるのだが、β組の話だとほんの僅かにその生産作業場で生産行動を行うとクオリティが上がるらしい。そのため俺もそこを活用する事にする。
俺は中に入り、『鍛冶場』のスペースに移動する。鍛冶場を使用するために使用料金の50セルを感情豊かなNPCに払い、鍛冶スペースに入る。
そして大量にある鍛冶作業スペースの中から開いている一つを選び、そこで鍛冶を始める。といってもやり方がよく分からないので隣のプレイヤーの作業を許可をもらって少し見学した。
その後、自分も挑戦する。
まず【始まりの短剣】を取り出し、炉の中に入れ、熱する。この作業も初めてだと中々にきつい。十分に熱せられたら、先程NPCから買っておいた【初心者《鍛冶》ハンマー】で熱くなった短剣を叩きはじめる。
この【初心者《鍛冶》ハンマー】を買った時も思ったのだが、このゲームのNPC達は本当に感情豊かだ。話しかければ普通に会話が成り立つし、プレイヤーからアイテムだって買っていた。
とんでもなく高い知能を持っていることが分かる。よく笑い、よく泣き、よく食べる。人間が操作していると言っても、信じてしまいそうなほどに感情が豊かなのだ。
そんなこと思いながら、カン!カン!カン!と思い切りハンマーを振り下ろしていく。別に形を変えるつもりは全くないので、原形が残っている状態で叩くのをやめ、アイテムを取り出す。
取り出したアイテムは【ヘッドドッグの牙】。これを熱波を発する金属に取り付けていく。
一部は性能自体を上げるために鍛冶アーツの〈強化合成〉を使い、取り込ませる。また、一方は熱した状態の刃に斬る時にあまり邪魔にならない様に取り付ける。最初が『内部強化』、次が『外部強化』である。
そのあと、しっかりつけた牙がポロっと取れない様に強く叩いていく。この牙を取り付けた理由は追加効果狙いだ。出来れば持続ダメージ系の追加ダメージ効果が現れてほしいところだ。
その後、また何度も熱してはハンマーで叩いて形を整えるのを繰り返した。
そして最後の一振りを全力で振る。カンッ!といい音が作業場に鳴り響く。その音を聞いた瞬間、M法大丈夫だろうと確信した。
完成である。俺は恐る恐る、その新しくなった武器の性能を確認する。
【始まりの短牙剣+1】
始まりを告げる短剣にモンスターの牙を取り込ませ攻撃性能を上げ、表面にもつけることにより更なるダメージを叩きこむことが可能となった短剣。初心者シリーズのためこれ以上は強化出来ません。
【性能評価】攻撃+7
【特殊効果】「耐久度∞」「『裂傷』付与(発生確率中)」
【耐久度】∞/∞
「……よしッ!」
小さくガッツポーズをした。
牙などが所々についているため、少々異常な形になってしまったが十分だろう。初めてにしてはいい出来だと自分的には思う。俺は満足感に浸りながら作業スペースを出た。
後ろからは少し笑い声が聞こえていた。多分短剣を俺が持っているからだろう。気にしない。気にしない。ああいう陰湿なのを相手にしてたらキリがない。割り切っていかなくては。
今気づいたのだが、満腹度がかなり減っている。補充しなくては空腹ペナルティを受けてしまう。このゲームは色んなところで現実的だなぁ…
俺はペナルティを回避するために、そこら辺で売っていた焼き鳥を数本買って食べながら、フィールドへと向かっていった。
プレイヤー:ノア
【スキル一覧】
《短剣》Lv9《体術》Lv9《闇魔法》Lv8《盗賊》Lv10《隠蔽》Lv11
《視覚強化》Lv8《鍛冶》Lv9(↑8UP)《調薬》Lv1
スキルポイント:2
*************************
《テイム》
一定確率で野生モンスターを使役することが出来る。しかし成功確率は高くなく、失敗することが多い。格上のモンスターへのテイム行為は大体失敗する。中々に扱いが難しく、このスキル以外の武器系スキルを持っていると、少し成功確率が下がる。使いこなせれば強いが使いこなせるものはあまり多くない。
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