33 / 36
第五章 精霊
第三十二話
しおりを挟む
王宮に戻ったシェリ達は、保護した精霊をアティアスが作り出した、木と草花で出来た卵のような寝床に横たえた
寝床に精霊が入ると、木が精霊を包み込むように入り口を塞いでいく。まさに巨大な卵だった
「この中で精霊の傷を癒す。何時までかかるのかは、精霊しだいだ」
「うん…早く目を覚まして…」
シェリは木に触れ、願う
『時期に目覚める』
「ヴァル…」
『精霊に肉体はない。精神体の者が傷を癒す際は、肉体のある者達よりも多くの時を有するのだ。傷が深ければ尚更、な』
「うん…」
『だが、此処には愛し子がいるであろう?』
ヴァルの言葉にバッ顔をあげる
「僕…?」
『そうだ。精霊の愛し子には、精霊を癒す事が出来る。シェリ、そなたは特に』
「僕に…癒す力が…」
シェリは自分に癒す事が出来ると知って、哀しかった気持ちが少しずつ消えていくのが分かった
ヴァルを見つめる
「どうすればいいの?」
シェリの言葉に、ヴァルは優しく目を細めた
『ただ、願えばよい』
シェリは頷くと、精霊が眠る卵を抱き締める様にした
目を閉じてひたすら願う
(精霊の傷をいやして…早く元気になって…)
シェリが願い始めた瞬間、それは始まった
卵の素となる木々や草花が、暖かくも眩く。そして何より優しい光に包まれていく
そして木々や草花は消え、眠る精霊が現れる
「お願い…」
シェリが呟いた瞬間だった。力なく浮かんでいた精霊を、まるで母が赤子を抱くようにしてそれは現れた
『なん…だと…!』
ヴァルは驚愕に目を見開いた
「まさか…」
アティアスも同様であった
それは慈愛に満ちた優しい目でシェリを見ていた
そして抱いている精霊の額にキスを落とす。精霊は繭の様なものになると、それはシェリの側まで行きシェリを抱きしめ精霊と同じようにキスを落とした
そしてヴァルとアティアスを見つめ
『この子を宜しく頼みます。穢れを受け、穢れを知らず。悪意を受け、悪に染まらない。希有であり、同時に危うくもある。どうか守って…』
そう言って、光に包まれて消えていった
『これは…』
「…王達に伝えるべきですね」
今だに放心しているヴァルとアティアスだったが、今しがた目にしたことはとてもじゃないが、無かった事になど出来ない事だった
『あの方が関与している事は神々はご存知なのか…?』
ヴァルの言葉に、アティアスは背中に嫌な汗が伝う感覚を覚える
「お、恐ろしい事を言わないで下さい。ご存知であるに決まっていますよ!」
『う、うむ。要らぬ事を言ってしまったな。知らぬはずはないさ!』
「そうです!」
ヴァルとアティアスは互いに顔を引きつらせながら笑った
寝床に精霊が入ると、木が精霊を包み込むように入り口を塞いでいく。まさに巨大な卵だった
「この中で精霊の傷を癒す。何時までかかるのかは、精霊しだいだ」
「うん…早く目を覚まして…」
シェリは木に触れ、願う
『時期に目覚める』
「ヴァル…」
『精霊に肉体はない。精神体の者が傷を癒す際は、肉体のある者達よりも多くの時を有するのだ。傷が深ければ尚更、な』
「うん…」
『だが、此処には愛し子がいるであろう?』
ヴァルの言葉にバッ顔をあげる
「僕…?」
『そうだ。精霊の愛し子には、精霊を癒す事が出来る。シェリ、そなたは特に』
「僕に…癒す力が…」
シェリは自分に癒す事が出来ると知って、哀しかった気持ちが少しずつ消えていくのが分かった
ヴァルを見つめる
「どうすればいいの?」
シェリの言葉に、ヴァルは優しく目を細めた
『ただ、願えばよい』
シェリは頷くと、精霊が眠る卵を抱き締める様にした
目を閉じてひたすら願う
(精霊の傷をいやして…早く元気になって…)
シェリが願い始めた瞬間、それは始まった
卵の素となる木々や草花が、暖かくも眩く。そして何より優しい光に包まれていく
そして木々や草花は消え、眠る精霊が現れる
「お願い…」
シェリが呟いた瞬間だった。力なく浮かんでいた精霊を、まるで母が赤子を抱くようにしてそれは現れた
『なん…だと…!』
ヴァルは驚愕に目を見開いた
「まさか…」
アティアスも同様であった
それは慈愛に満ちた優しい目でシェリを見ていた
そして抱いている精霊の額にキスを落とす。精霊は繭の様なものになると、それはシェリの側まで行きシェリを抱きしめ精霊と同じようにキスを落とした
そしてヴァルとアティアスを見つめ
『この子を宜しく頼みます。穢れを受け、穢れを知らず。悪意を受け、悪に染まらない。希有であり、同時に危うくもある。どうか守って…』
そう言って、光に包まれて消えていった
『これは…』
「…王達に伝えるべきですね」
今だに放心しているヴァルとアティアスだったが、今しがた目にしたことはとてもじゃないが、無かった事になど出来ない事だった
『あの方が関与している事は神々はご存知なのか…?』
ヴァルの言葉に、アティアスは背中に嫌な汗が伝う感覚を覚える
「お、恐ろしい事を言わないで下さい。ご存知であるに決まっていますよ!」
『う、うむ。要らぬ事を言ってしまったな。知らぬはずはないさ!』
「そうです!」
ヴァルとアティアスは互いに顔を引きつらせながら笑った
21
あなたにおすすめの小説
心が折れた日に神の声を聞く
木嶋うめ香
ファンタジー
ある日目を覚ましたアンカーは、自分が何度も何度も自分に生まれ変わり、父と義母と義妹に虐げられ冤罪で処刑された人生を送っていたと気が付く。
どうして何度も生まれ変わっているの、もう繰り返したくない、生まれ変わりたくなんてない。
何度生まれ変わりを繰り返しても、苦しい人生を送った末に処刑される。
絶望のあまり、アンカーは自ら命を断とうとした瞬間、神の声を聞く。
没ネタ供養、第二弾の短編です。
神に逆らった人間が生きていける訳ないだろう?大地も空気も神の意のままだぞ?<聖女は神の愛し子>
ラララキヲ
ファンタジー
フライアルド聖国は『聖女に護られた国』だ。『神が自分の愛し子の為に作った』のがこの国がある大地(島)である為に、聖女は王族よりも大切に扱われてきた。
それに不満を持ったのが当然『王侯貴族』だった。
彼らは遂に神に盾突き「人の尊厳を守る為に!」と神の信者たちを追い出そうとした。去らねば罪人として捕まえると言って。
そしてフライアルド聖国の歴史は動く。
『神の作り出した世界』で馬鹿な人間は現実を知る……
神「プンスコ(`3´)」
!!注!! この話に出てくる“神”は実態の無い超常的な存在です。万能神、創造神の部類です。刃物で刺したら死ぬ様な“自称神”ではありません。人間が神を名乗ってる様な謎の宗教の話ではありませんし、そんな口先だけの神(笑)を容認するものでもありませんので誤解無きよう宜しくお願いします。!!注!!
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるかも。
◇ちょっと【恋愛】もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
ざまぁされるための努力とかしたくない
こうやさい
ファンタジー
ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。
けどなんか環境違いすぎるんだけど?
例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。
作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。
ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。
恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。
中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。
……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
義妹がピンク色の髪をしています
ゆーぞー
ファンタジー
彼女を見て思い出した。私には前世の記憶がある。そしてピンク色の髪の少女が妹としてやって来た。ヤバい、うちは男爵。でも貧乏だから王族も通うような学校には行けないよね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる