精霊の愛し子~真実の愛~

マツユキ

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第五章 精霊

第三十二話

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王宮に戻ったシェリ達は、保護した精霊をアティアスが作り出した、木と草花で出来た卵のような寝床に横たえた

寝床に精霊が入ると、木が精霊を包み込むように入り口を塞いでいく。まさに巨大な卵だった

「この中で精霊の傷を癒す。何時までかかるのかは、精霊しだいだ」

「うん…早く目を覚まして…」

シェリは木に触れ、願う

『時期に目覚める』

「ヴァル…」

『精霊に肉体はない。精神体の者が傷を癒す際は、肉体のある者達よりも多くの時を有するのだ。傷が深ければ尚更、な』

「うん…」

『だが、此処には愛し子がいるであろう?』

ヴァルの言葉にバッ顔をあげる

「僕…?」

『そうだ。精霊の愛し子には、精霊を癒す事が出来る。シェリ、そなたは

「僕に…癒す力が…」

シェリは自分に癒す事が出来ると知って、哀しかった気持ちが少しずつ消えていくのが分かった

ヴァルを見つめる

「どうすればいいの?」

シェリの言葉に、ヴァルは優しく目を細めた

『ただ、願えばよい』

シェリは頷くと、精霊が眠る卵を抱き締める様にした

目を閉じてひたすら願う

(精霊の傷をいやして…早く元気になって…)

シェリが願い始めた瞬間、それは始まった

卵の素となる木々や草花が、暖かくも眩く。そして何より優しい光に包まれていく

そして木々や草花は消え、眠る精霊が現れる

「お願い…」

シェリが呟いた瞬間だった。力なく浮かんでいた精霊を、まるで母が赤子を抱くようにしては現れた

『なん…だと…!』

ヴァルは驚愕に目を見開いた

「まさか…」

アティアスも同様であった

それは慈愛に満ちた優しい目でシェリを見ていた

そして抱いている精霊の額にキスを落とす。精霊は繭の様なものになると、それはシェリの側まで行きシェリを抱きしめ精霊と同じようにキスを落とした

そしてヴァルとアティアスを見つめ

『この子を宜しく頼みます。穢れを受け、穢れを知らず。悪意を受け、悪に染まらない。希有であり、同時に危うくもある。どうか守って…』

そう言って、光に包まれて消えていった

『これは…』

「…王達に伝えるべきですね」

今だに放心しているヴァルとアティアスだったが、今しがた目にしたことはとてもじゃないが、無かった事になど出来ない事だった

『あの方が関与している事は神々はご存知なのか…?』

ヴァルの言葉に、アティアスは背中に嫌な汗が伝う感覚を覚える

「お、恐ろしい事を言わないで下さい。ご存知であるに決まっていますよ!」

『う、うむ。要らぬ事を言ってしまったな。知らぬはずはないさ!』

「そうです!」

ヴァルとアティアスは互いに顔を引きつらせながら笑った
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