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第二章 コンプレックスと無条件の愛

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投稿時間を12時から17時に変更しました。もしかしたら、また変更するかもしれませんが、宜しくお願いします


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朝目覚めると、晃は既にいなかった。サイドテーブルに、綺麗な字で「ゆっくり休め」と書いてあるメモが置かれていた

「晃さん…」

晃の心遣いに、じんわりと胸が暖かくなる。こんな晃の細やかな気遣いは、一度や二度じゃない。玲が不安に感じている事を、まるで分かっているかのように、少しでも安心できるように、些細な事にも気を使ってくれていると、玲は感じていた

同時に、そんな晃に何も返せていない事で、玲は罪悪感ともいえる焦りが増すばかりだった

まずは自分の出来る目の前の事を。そう決めて、やってはいるものの、中々進めている様に思えないからだ。これでいいんだろうか。これで十分だろうか

そんな不安が、玲の中に積もっていく

何もせず、ボーっとしていると、良くない考えばかりが脳裏をよぎる物だと思い、ふと時計に目をやると、既に時刻は10時を過ぎていた

「やばい!俺、寝すぎだろ!」

慌ててベットから降り、身支度を整え家の掃除を開始した。もはや慣れたもので、玲の手際はすこぶる良くなっていた

楽しみながら、少し鼻唄交じりに家事をしていると、突然チャイムが鳴った

「ん?田中さんかな?」

来客など、この家に来てからは初めての事だった

この家に来るのは、幹弥くらいしかおらず、その他の人に会った事が無い。しかし、そんな幹弥もこんな時間帯に来る事は無いので、玲は少し不審に思いながらも出る事に

「はーい」

そう言って、玄関を開けると、そこには豊満な体つきをした、美人な女性が立っていた。女性は玲を一目見るなり、すぐに興味を無くしたのか、そっけない口調で言った

「あら、晃はいないの?」

「…晃さんですか?仕事に行ってて、いないです」

「そう…所で、」

上から下まで、まるで品定めをするかのような、女性の無遠慮な視線を不快に思いつつ、用件は何か聞こうと口を開きかけた時、女性のスマホがなった。暫く通話をした女性は、通話を終え

「晃にまた来ると、伝えて頂戴」

そうれだけ言うと、玲の返事も聞かずに去って行く。女性の姿が見えなくなるまで、唖然としてい玲は

「伝えてって言われても…」

名前すら言わずに去って行った女性に、今更聞く事も出来ず。とりあえず、特徴だけでも伝えるか、と考える

途中だった家事を再開しながら、先程の女性の事を考えた

高慢な態度の女性。明らかに玲を見下したその視線。いったい晃とはどういう関係なのか。何故、「晃」と親しげに呼んでいるのか

考えれば考える程、嫌な気持ちが心を埋め尽くしていく

あの女性が、晃の隣に立っている姿を想像するだけで、嫌悪感が増していく

あんなに楽しくやっていた家事も、楽しくなくなり、女性が来た事を晃に伝えなければならない事を考えるだけで、自然と眉間に皺が寄ってしまっていた

「…ふぅ…」

家事が一段落し、ソファに座って目を瞑る。何度も何度も、女性の事を考えない様にしようとするが、上手くいかない

「晃さん、早く帰ってこないかな…」

早く晃に会って、こんな嫌な気持ちを捨て去りたい

そう思っていた玲のスマホが鳴った。受信していた晃からのメールを読むと、今日は汝に帰れるか分からないから、先に休んでいろ、とあった

「――――…今日は、嫌な事ばかりだ」

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