オメガバース~運命が導く愛~

マツユキ

文字の大きさ
上 下
10 / 14
第一章 運命の出会い

10

しおりを挟む
通話を終えた後、

「幹弥、あいつらはどうなった?」

低く冷たい声音で、晃は言った

そんな、晃に幹弥も冷たい淡々とした声で答える

「玲さんを襲っていた男は、既に捕らえています。組長自ら、されますか?」

「いや、お前に任せる。俺がしたいのは山々だが、」

「早く玲さんに会いたいですもんね?」

ムッとした表情で、幹弥を見る

「―――何が言いたい?」

そんな晃に、先程までの淡々とした声音で話していた幹弥が、穏やかな声で言った

「いえ。組長が嬉しそうで、私も嬉しいんですよ」

「ッチ」

晃の対応に、クスクスと笑う幹弥。晃に対して、こんな気安い態度がとれるのは、幹弥だけだ。それは、晃が幹弥を信頼していると言う証だ

組の者達は、皆一様に晃を慕っている者達ばかりだった。晃に対し、絶対の忠誠を誓い、あだなそうと考える者は皆無だ。裏の世界で、こんな事はまずない。だが、海藤組に至っては例外だった

故に、組員になるためには、難関を幾つもクリアしなければ、まず入ることすら叶わない

極悪非道、冷酷無慈悲と言われている晃だが、裏切りや卑怯な事を嫌い、極道であっても真っ当な事を好む、少し変わり者でもあった

裏の世界だけではなく、表の世界で立ち上げた企業も、真っ当な企業だ。そこに、裏世界のしがらみは一切持ち込んではいない。表の世界での成功は、裏に生きる者だから、得た物ではないと言う事だ

そんな晃を、裏でも表でも支えてきたのは、幹弥だった。幼い頃より晃の側近として、ずっと共に歩んできた幹弥だからこそ、晃は信頼を置いているのだ

そして、幹弥が言った事が図星だった為に、何も言い返せず

「組長、私は心配していたんです。海藤組には何故かアルファが多くいますが、その殆どに番がいます。私にもいますしね。アルファで、番のいない者は、二十代前半の、若い衆ばかり。三十代でいないのは、組長だけでした。別に、番がいないからどうこうなる訳ではないですが、組長の番に対しての思いは、知っているつもりです。だから、心配だったのですよ。でも、こうして玲さんと出会い、唯一の番を得る事が出来た」

玲の名前が出るだけで、優しげな顔をする晃

「ささ、早く仕事を済ませて、帰らないと。玲さんを待たせてしまいます」

「あぁ。そうだな」

そう言って、晃は迅速に書類の処理を始めた。全ては玲と過ごす時間の為だけに

暫く経って、仕事が終わりそそくさと帰って行った晃。帰る間際の晃は、玲の事を考えているのか、穏やかで嬉しそうな顔をしていた

「さて、私も仕事を終わらせるとしましょう」

真っ当なことが第一とは言え、極道である。極道には極道の、真っ当な事があるのだ

組の敷地内にある、建物へと入って行く幹弥。奥へ進むにつれて、男たちのうめき声が大きくなっていく

「幹弥さん。ご苦労様です」

「えぇ。彼等はどうですか?」

「根性の無い奴らですよ。あっさり吐きました」

「そうですか。偶然とは言え、舐められたものです」

「絞めますか?」

「いえ、バラせと言われています。ほら、回収出来なかったでしょ?」

「あぁ、成る程。分かりました、手配します」

「頼みました」

幹弥に一礼し、部屋から出て行く優秀な部下を見送り、幹弥は男たちの側へ歩いて行く。玲を襲った事だけで、捕らえていたのだが、偶然にも男たちが別の組の組員だったことが分かった。あの辺り一帯は、海藤組の縄張りだ。それを知ら無い筈はない

男たちは、海藤組の縄張りで、違法な取引を行っていた事も分かっている。分かった以上、落とし前はつけてもらわなければならない

幹弥の顔を見て、顔を真っ青にする男たち。曲がりなりにも、極道である。言葉の意味が分からない事はない。これから、自分たちがどうなるのか、それが分かった故の反応だ

「海藤組に手を出せば、どうなるのか。その身を持って知りなさい」

冷たく淡々とした声音で言う幹弥に、男たちは叫ぶでもなく、ただ涙を流すばかりだった
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

さむいよ、さみしいよ、

moka
BL
僕は誰にも愛されない、、、 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 人を信じることをやめた奏が学園で色々な人と出会い信じること、愛を知る物語です。

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

ヤクザと捨て子

幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子 ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。 ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

学園と夜の街での鬼ごっこ――標的は白の皇帝――

天海みつき
BL
 族の総長と副総長の恋の話。  アルビノの主人公――聖月はかつて黒いキャップを被って目元を隠しつつ、夜の街を駆け喧嘩に明け暮れ、いつしか"皇帝"と呼ばれるように。しかし、ある日突然、姿を晦ました。  その後、街では聖月は死んだという噂が蔓延していた。しかし、彼の族――Nukesは実際に遺体を見ていないと、その捜索を止めていなかった。 「どうしようかなぁ。……そぉだ。俺を見つけて御覧。そしたら捕まってあげる。これはゲームだよ。俺と君たちとの、ね」  学園と夜の街を巻き込んだ、追いかけっこが始まった。  族、学園、などと言っていますが全く知識がないため完全に想像です。何でも許せる方のみご覧下さい。  何とか完結までこぎつけました……!番外編を投稿完了しました。楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...