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「では、ステータスの鑑定をさせて頂きます。こちらの窪みに、血を一滴垂らしていただけますか?」
そう言ってニスカさんは、小さな針を渡してきた。受け取った針で、指先をプスリと刺すと、プックリと血が出て来る。血が出ている指を、『鑑定石』の真ん中にある小さな窪みに置いた
すると、『鑑定石』が淡く光り、ニスカさんのデスクの前に置かれた、A4サイズのボードも淡く光っている。どうやら、鑑定したステータスの情報が、そのボードに表示される仕組みになっているみたいだ
「ありがとうございます。では、確認していきますね―――え?」
ボードの画面を見たニスカさんが、固まった
「…ニスカさん?」
「…少しお待ちいただけますか?」
「え?あ、はい…」
真剣な顔をしたニスカさんは、そう言って受付のカウンター奥にある部屋に入って行った
急にどうしたのだろうか。私のステータスは、確かに自分でも高い方だとは思っているけど。ニスカさんの、あの表情を思い出すと、不安ばかりが募って行く
どの位、待っていただろうか。暫くすると、ニスカさんが戻ってきた
「申し訳ありません。少しお話をお聞きしたいので、ご移動をお願いしても良いですか?」
そう言ったニスカさんに、無言で頷いた
案内されるまま、先程ニスカさんが入っていた部屋に通される。広い室内の正面には、大きく立派なデスクが設置され、その前には高級そうなソファーセットが配置されている
そして部屋の主であろう男性が、ソファーに座っていた
屈強な体格に、近寄りがたい印象を受ける強面の顔。まさに百戦錬磨の戦士。そんな言葉が彼には良く似合う
「こちらに」
ニスカさんが、男性の正面にあるソファーに案内してくれる。少ししり込みはしたが、大人しく座った
「…俺は、ギルドマスターのグラハムだ。面倒くさい事は嫌いだ。単刀直入に聞く、お前は異界者か?」
「え?」
異界者って何の事?グラハムさんが言っている事が分からなくて、返答が出来ない
「…異界者とは、この世界とは別の世界から来た者の事を言う。それで、お前は異界者か?」
「あ、そう言う意味ですか。なら私は異界者であっています。でも、それが何か問題になりますか?」
この世界には、私以外にも召喚されて来た人達がいるはず。だって、召喚された時、周りに居た人達は、慣れている様に思えたから
「…問題だよ。本来、異界者は召喚され、こちらの世界に渡るか、時空の狭間に落ちてしまい、こちらに流れ着くかのどちらかだ。後者は非常に珍しく、まず持って生きて流れ着く事はない。となれば、前者の可能性だ」
「…?」
「『異界者の召喚』、この召喚の儀式には、各国との間に数多くの取り決めがあり、それは例え一国の王だとしても、破る事は出来ない。それを踏まえて聞こう。召喚されたのはいつだ?」
「え、数日?程前です」
「……、ん?何故はっきりとした日数が分からないんだ?」
「あー…それは、色々と事情がありまして…」
ハハッと笑って、誤魔化そうとしたが、無駄だったみたいだ
「話せ」
低い声で、そう言われてしまえば、私には黙っておくと言う選択肢はない。怖いんだから仕方ない
私は召喚されて、今現在に至るまでの話をした。あ、サディルナーバ様の事は、あえて言う必要はないと思って言っていない
グラハムの顔が、話しが進む程、険しくなっていく
「――――で、今に至ります。この国を早く出て行きたいし、帰る方法も探したい。だから、冒険者に…」
「酷な事を言うが、異界者が元の世界に帰る事は出来ない。帰さない、ではなく方法が無いんだ。そもそも、異界者を召喚する儀式も、召喚魔法の使える者が、数十人単位で必要だ。つまり、それだけ必要とする魔力が多く、召喚魔法が扱える者事態が、少ない。もし、方法が分かったとしても、元の世界の自分が居た国、自分が召喚された時に戻す事は、不可能に近い。と言うよりも、不可能だ。残念だが」
何となく、分かっていた。もう戻れないんだろうな、って。でも、可能性が少しでもあるなら、諦めたくないのだ
そう言ってニスカさんは、小さな針を渡してきた。受け取った針で、指先をプスリと刺すと、プックリと血が出て来る。血が出ている指を、『鑑定石』の真ん中にある小さな窪みに置いた
すると、『鑑定石』が淡く光り、ニスカさんのデスクの前に置かれた、A4サイズのボードも淡く光っている。どうやら、鑑定したステータスの情報が、そのボードに表示される仕組みになっているみたいだ
「ありがとうございます。では、確認していきますね―――え?」
ボードの画面を見たニスカさんが、固まった
「…ニスカさん?」
「…少しお待ちいただけますか?」
「え?あ、はい…」
真剣な顔をしたニスカさんは、そう言って受付のカウンター奥にある部屋に入って行った
急にどうしたのだろうか。私のステータスは、確かに自分でも高い方だとは思っているけど。ニスカさんの、あの表情を思い出すと、不安ばかりが募って行く
どの位、待っていただろうか。暫くすると、ニスカさんが戻ってきた
「申し訳ありません。少しお話をお聞きしたいので、ご移動をお願いしても良いですか?」
そう言ったニスカさんに、無言で頷いた
案内されるまま、先程ニスカさんが入っていた部屋に通される。広い室内の正面には、大きく立派なデスクが設置され、その前には高級そうなソファーセットが配置されている
そして部屋の主であろう男性が、ソファーに座っていた
屈強な体格に、近寄りがたい印象を受ける強面の顔。まさに百戦錬磨の戦士。そんな言葉が彼には良く似合う
「こちらに」
ニスカさんが、男性の正面にあるソファーに案内してくれる。少ししり込みはしたが、大人しく座った
「…俺は、ギルドマスターのグラハムだ。面倒くさい事は嫌いだ。単刀直入に聞く、お前は異界者か?」
「え?」
異界者って何の事?グラハムさんが言っている事が分からなくて、返答が出来ない
「…異界者とは、この世界とは別の世界から来た者の事を言う。それで、お前は異界者か?」
「あ、そう言う意味ですか。なら私は異界者であっています。でも、それが何か問題になりますか?」
この世界には、私以外にも召喚されて来た人達がいるはず。だって、召喚された時、周りに居た人達は、慣れている様に思えたから
「…問題だよ。本来、異界者は召喚され、こちらの世界に渡るか、時空の狭間に落ちてしまい、こちらに流れ着くかのどちらかだ。後者は非常に珍しく、まず持って生きて流れ着く事はない。となれば、前者の可能性だ」
「…?」
「『異界者の召喚』、この召喚の儀式には、各国との間に数多くの取り決めがあり、それは例え一国の王だとしても、破る事は出来ない。それを踏まえて聞こう。召喚されたのはいつだ?」
「え、数日?程前です」
「……、ん?何故はっきりとした日数が分からないんだ?」
「あー…それは、色々と事情がありまして…」
ハハッと笑って、誤魔化そうとしたが、無駄だったみたいだ
「話せ」
低い声で、そう言われてしまえば、私には黙っておくと言う選択肢はない。怖いんだから仕方ない
私は召喚されて、今現在に至るまでの話をした。あ、サディルナーバ様の事は、あえて言う必要はないと思って言っていない
グラハムの顔が、話しが進む程、険しくなっていく
「――――で、今に至ります。この国を早く出て行きたいし、帰る方法も探したい。だから、冒険者に…」
「酷な事を言うが、異界者が元の世界に帰る事は出来ない。帰さない、ではなく方法が無いんだ。そもそも、異界者を召喚する儀式も、召喚魔法の使える者が、数十人単位で必要だ。つまり、それだけ必要とする魔力が多く、召喚魔法が扱える者事態が、少ない。もし、方法が分かったとしても、元の世界の自分が居た国、自分が召喚された時に戻す事は、不可能に近い。と言うよりも、不可能だ。残念だが」
何となく、分かっていた。もう戻れないんだろうな、って。でも、可能性が少しでもあるなら、諦めたくないのだ
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