49 / 49
キャロルの新な人生
4 end
しおりを挟む
月日は穏やかに流れていき、気付けば35歳になっていた
「…ふふ」
キャロルは、昔を懐かしむ様に穏やかに笑った
いつだったか、セシルに言われた事がある
『お姉様、結婚はされないのですか?もし、されない理由があの時の事なら、』
心配そうな、でも悲しそうにセシルは言った
『…ありがとう、セシル。でも、違うの』
『え?』
『これは私自身の問題。正直に言うとね、好意を抱いた人はいたの。でもね、関係が深くなるにつれて、クリフの…あの時のクリフが忘れられないの。だから、先に進めなくなる』
『…お姉様』
『…怖くて堪らなくなる。愛が深くなれば、またあの時を繰り返しそうで』
『でも、』
『私は、クリフを愛した事は無かった。だけど、クリフは本気で私を愛してくれていた。それはね、あの時も痛いほど伝わってた。私は、その気持ちを利用していたのよ。その結果、クリフの命を奪う事になってしまった。だからね、償いにはならないけれど、私の生涯はクリフの為にって決めたの。だから心配しなくて良いのよ?』
『…でも、それではお姉様が…』
セシルは納得していない様子を見せたが、キャロルは無理やり話題を変え、話は終わった
そして、キャロルが30歳になった頃、体調不良が続き体が思うように動かせず、床につく事が多くなって行った
医者に行くよう、ニーナに何度も言われたが、大丈夫だと言って行かずに1年が経った頃、痺れを切らしたニーナが医者を連れて、キャロルの元を訪れた
結果は重い病を患っていると言う事と、治療法が無い事。そして、後1年生きられるか解らない事
その言葉を聞いたときは、キャロルよりもニーナの方が泣いていて、何だか冷静に受け止める事が出来た事
『セシルには黙っていて』
キャロルがそう言うと、ニーナは顔を真っ赤にして怒っていたが、最後は承諾してくれた
余命宣告されてから、4年が経った。そして、何処からセシルに病の事が伝わり、キャロルの元へ駆けつけたセシルは、ニーナと同じ様に泣いて怒っていた
セシルは屋敷で看病を、と言ったがキャロルはそれを断る
それならば自分も此処に住んで、と言いかけたセシルの言葉を遮り、キャロルは言った
『私は、本当に幸せ者ね』
キャロルの言葉に、セシルは何も言えず、唯々涙を流す
35歳になった今、キャロルは床の中で穏やかに微笑む
そして思う事は、本当に幸せだったと言う事
他人から見れば、何処が幸せなんだと言われるかも知れない
だけど、キャロルにとってみれば、短い間だったが幸せだったのだ
本当の自分で、自分らしく、誇りを持って生きる事が出来たのだから
「…ふっ…お姉様っ…」
感覚の無い手を強く握り、涙で顔を濡らすセシルを見た
「…なか、ないで…わら、て…」
キャロルの途切れ途切れに紡がれる、か細い声にセシルは必死に笑顔を作る
「…ふふ…あり、がと、う…」
セシルは強く、強く手を握りしめた
「…もう、すぐ…く、りふ、に……あや……ま、て…」
穏やかに微笑み、何処か安堵した様な表情で言ったキャロルは、ゆっくりと瞼を閉じる
キャロルは、静かに息を引き取った
「…お姉様っ…!」
「「「…キャロルっ!」」」
部屋には、ただ泣き声だけが響いていた
ーーーー
泣かないで、笑って
貴女には笑顔がとても似合うのだから
ありがとう、私の大切なたった1人の『妹』でいてくれて
あぁ、神様
沢山の『幸せ』をありがとうごうざいました
私は、本当に幸せでした
ーーーー
私の大切な人達へ
来世が本当に有るのなら、また再び出会えることを願っています
本当に、ありがとう
「…ふふ」
キャロルは、昔を懐かしむ様に穏やかに笑った
いつだったか、セシルに言われた事がある
『お姉様、結婚はされないのですか?もし、されない理由があの時の事なら、』
心配そうな、でも悲しそうにセシルは言った
『…ありがとう、セシル。でも、違うの』
『え?』
『これは私自身の問題。正直に言うとね、好意を抱いた人はいたの。でもね、関係が深くなるにつれて、クリフの…あの時のクリフが忘れられないの。だから、先に進めなくなる』
『…お姉様』
『…怖くて堪らなくなる。愛が深くなれば、またあの時を繰り返しそうで』
『でも、』
『私は、クリフを愛した事は無かった。だけど、クリフは本気で私を愛してくれていた。それはね、あの時も痛いほど伝わってた。私は、その気持ちを利用していたのよ。その結果、クリフの命を奪う事になってしまった。だからね、償いにはならないけれど、私の生涯はクリフの為にって決めたの。だから心配しなくて良いのよ?』
『…でも、それではお姉様が…』
セシルは納得していない様子を見せたが、キャロルは無理やり話題を変え、話は終わった
そして、キャロルが30歳になった頃、体調不良が続き体が思うように動かせず、床につく事が多くなって行った
医者に行くよう、ニーナに何度も言われたが、大丈夫だと言って行かずに1年が経った頃、痺れを切らしたニーナが医者を連れて、キャロルの元を訪れた
結果は重い病を患っていると言う事と、治療法が無い事。そして、後1年生きられるか解らない事
その言葉を聞いたときは、キャロルよりもニーナの方が泣いていて、何だか冷静に受け止める事が出来た事
『セシルには黙っていて』
キャロルがそう言うと、ニーナは顔を真っ赤にして怒っていたが、最後は承諾してくれた
余命宣告されてから、4年が経った。そして、何処からセシルに病の事が伝わり、キャロルの元へ駆けつけたセシルは、ニーナと同じ様に泣いて怒っていた
セシルは屋敷で看病を、と言ったがキャロルはそれを断る
それならば自分も此処に住んで、と言いかけたセシルの言葉を遮り、キャロルは言った
『私は、本当に幸せ者ね』
キャロルの言葉に、セシルは何も言えず、唯々涙を流す
35歳になった今、キャロルは床の中で穏やかに微笑む
そして思う事は、本当に幸せだったと言う事
他人から見れば、何処が幸せなんだと言われるかも知れない
だけど、キャロルにとってみれば、短い間だったが幸せだったのだ
本当の自分で、自分らしく、誇りを持って生きる事が出来たのだから
「…ふっ…お姉様っ…」
感覚の無い手を強く握り、涙で顔を濡らすセシルを見た
「…なか、ないで…わら、て…」
キャロルの途切れ途切れに紡がれる、か細い声にセシルは必死に笑顔を作る
「…ふふ…あり、がと、う…」
セシルは強く、強く手を握りしめた
「…もう、すぐ…く、りふ、に……あや……ま、て…」
穏やかに微笑み、何処か安堵した様な表情で言ったキャロルは、ゆっくりと瞼を閉じる
キャロルは、静かに息を引き取った
「…お姉様っ…!」
「「「…キャロルっ!」」」
部屋には、ただ泣き声だけが響いていた
ーーーー
泣かないで、笑って
貴女には笑顔がとても似合うのだから
ありがとう、私の大切なたった1人の『妹』でいてくれて
あぁ、神様
沢山の『幸せ』をありがとうごうざいました
私は、本当に幸せでした
ーーーー
私の大切な人達へ
来世が本当に有るのなら、また再び出会えることを願っています
本当に、ありがとう
178
お気に入りに追加
3,545
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(129件)
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛しい人、妹が好きなら私は身を引きます。
王冠
恋愛
幼馴染のリュダールと八年前に婚約したティアラ。
友達の延長線だと思っていたけど、それは恋に変化した。
仲睦まじく過ごし、未来を描いて日々幸せに暮らしていた矢先、リュダールと妹のアリーシャの密会現場を発見してしまい…。
書きながらなので、亀更新です。
どうにか完結に持って行きたい。
ゆるふわ設定につき、我慢がならない場合はそっとページをお閉じ下さい。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛してました、たぶん
たろ
恋愛
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
「愛してる」
「わたしも貴方を愛しているわ」
・・・・・
「もう少し我慢してくれ。シャノンとは別れるつもりだ」
「いつまで待っていればいいの?」
二人は、人影の少ない庭園のベンチで抱き合いながら、激しいキスをしていた。
木陰から隠れて覗いていたのは男の妻であるシャノン。
抱き合っていた女性アイリスは、シャノンの幼馴染で幼少期からお互いの家を行き来するぐらい仲の良い親友だった。
夫のラウルとシャノンは、政略結婚ではあったが、穏やかに新婚生活を過ごしていたつもりだった。
そんな二人が夜会の最中に、人気の少ない庭園で抱き合っていたのだ。
大切な二人を失って邸を出て行くことにしたシャノンはみんなに支えられてなんとか頑張って生きていく予定。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです
古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。
皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。
他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。
救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。
セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。
だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。
「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」
今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】気付けばいつも傍に貴方がいる
kana
恋愛
ベルティアーナ・ウォール公爵令嬢はレフタルド王国のラシード第一王子の婚約者候補だった。
いつも令嬢を隣に侍らす王子から『声も聞きたくない、顔も見たくない』と拒絶されるが、これ幸いと大喜びで婚約者候補を辞退した。
実はこれは二回目人生だ。
回帰前のベルティアーナは第一王子の婚約者で、大人しく控えめ。常に貼り付けた笑みを浮かべて人の言いなりだった。
彼女は王太子になった第一王子の妃になってからも、弟のウィルダー以外の誰からも気にかけてもらえることなく公務と執務をするだけの都合のいいお飾りの妃だった。
そして白い結婚のまま約一年後に自ら命を絶った。
その理由と原因を知った人物が自分の命と引き換えにやり直しを望んだ結果、ベルティアーナの置かれていた環境が変わりることで彼女の性格までいい意味で変わることに⋯⋯
そんな彼女は家族全員で海を隔てた他国に移住する。
※ 投稿する前に確認していますが誤字脱字の多い作者ですがよろしくお願いいたします。
※ 設定ゆるゆるです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】旦那様は、妻の私よりも平民の愛人を大事にしたいようです
よどら文鳥
恋愛
貴族のことを全く理解していない旦那様は、愛人を紹介してきました。
どうやら愛人を第二夫人に招き入れたいそうです。
ですが、この国では一夫多妻制があるとはいえ、それは十分に養っていける環境下にある上、貴族同士でしか認められません。
旦那様は貴族とはいえ現状無職ですし、愛人は平民のようです。
現状を整理すると、旦那様と愛人は不倫行為をしているというわけです。
貴族の人間が不倫行為などすれば、この国での処罰は極刑の可能性もあります。
それすら理解せずに堂々と……。
仕方がありません。
旦那様の気持ちはすでに愛人の方に夢中ですし、その願い叶えられるように私も協力致しましょう。
ただし、平和的に叶えられるかは別です。
政略結婚なので、周りのことも考えると離婚は簡単にできません。ならばこれくらいの抵抗は……させていただきますよ?
ですが、周囲からの協力がありまして、離婚に持っていくこともできそうですね。
折角ですので離婚する前に、愛人と旦那様が私たちの作戦に追い詰められているところもじっくりとこの目で見ておこうかと思います。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
素敵なお話をありがとうございます👏✨✨
最終話でクリフがクリスになってますよ!?
最後まで報われない男…
修正しました!まさかのクリス連発に笑
報告して頂いてありがとうございます!
完結お疲れ様でした
改心したキャロルは悔いのない人生をおくれたのでしょうか…病気にかかっても治療を受けなかったのは贖罪だったのでしょうか…
作者さまキャロルの物語ありがとうございます!ある意味、救われました
今度は生まれ変わった(幸せな)人生を読んでみたいです