心からの愛してる

マツユキ

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――――竜元

前生徒会室に、移動し忘れた物を取りに行った後の事だった。暫く見る事の無かった、人物が嬉々としてこちらにやって来るのが見える

「…チッ…」

思わず舌打ちが出てしまう

自分でも、人に対して心から嫌悪した事が無かったが故に、今自分に纏わりつく人物に対しての自分の態度に、一番驚いているのは、竜元自身だった

だが、申し訳ないとか、そう言った感情は一切ない。結良に危害を加えているから、というのも勿論あるが、目の前の人物、光はそれ以前の問題だったからだ

自分は好かれて当たり前、皆自分を愛するべきだ。そんな考えが根底にあるのだ。自分で努力など、勿論する事は無い。何か不都合があれば人のせい。竜元にとっては、人間のクズ、そう言っても過言では無かった

「竜!こんな所に居たんだな!」

相変わらず、大きな声で叫ぶように話す

「竜!なんで、生徒会室に誰も来ないんだ!?」

竜元の返事を聞く気が無いのか、一人で話続ける光

「なぁ!聞いているのか!?」

そう言って、光は竜元の腕を強く掴み、自分の方へ引っ張った。その力は、竜元にとっては、強く掴まれている、と認識できる程度でしかないが、この力で、結良の事も。そう考えるだけで、腹の底からドロドロとしたものが、湧いてくるのを感じた

「―――離せ」

低い声で、ただ一言

「竜!そうか…竜も俺に会えなくて、拗ねてるんだな!」

嬉しそうにそう言い放つ光

その目は、凝り固まった自分本位な考えからくる、欲望で染まっている

「…聞こえなかったか?離せ、と言っている」

「竜!会いたかったのは分かるけど、俺にそんな事言ったらダメなんだぞ!」

そう言って竜元の腕を抱き込むようにする光

「俺達は、結ばれる運命なんだぞ?それなのに、竜はいつも、あの地味な出来こそないの、結良ばかり構って。俺にやきもちやいて欲しかったのは分かるけど、もう構ったりするのはダメなんだぞ?竜は俺の物なんだから」

「…」

ボコボコにしてやりたい衝動を、何とか抑え込む竜元。そんな竜元の葛藤など、われ関せずで、話し続ける光

「このまま、竜があいつを構ってばかりだったら、俺何するか分からなかったんだぞ!竜は俺のなのに、あいつ地味なくせに、色目何か使いやがって!身の程知らずも良い所だぞ!」

竜元が何も言わない事を良い事に、結良の悪口が止まらない光に、ブチィっと音が聞こえた気がする

その音と共に、体が勝手に動いていた。光の胸ぐらをつかみ、壁に叩きつけた竜元は、光の耳元でささやいた

「それ以上口を開くな、クズが。お前は、俺が見てきた人間の中で、最高のクズ野郎だよ。結良がお前に劣っているだと?何を勘違いしているのか分からんが、お前は結良の足元にも及ばない。顔も、人間性もな。お前が、纏わりついてくる度に、俺がどれほど耐えていたか分かるか?お前が触れるたびに、お前の声を聴くたびに、嫌悪でどうにかなりそうだ。もう二度と俺の前に現れるな。勿論、結良の前にもな」

そう言うと、竜元は無表情のまま去っていった

一部始終を結良が見ていた事に、気づかないまま

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